まどかの章 08 ☆☆☆ ヒルトンホテル(王族専用貴賓室)
……とは言ったものの。一人でホットケーキを食べるというのは、こうも侘しいものであるとは…。あれ程に美味しかった筈であるのに…。ムシャムシャ…。ううっ。まるで粘土を食べているようじゃ。誰かおれば…。ハァ…。あのとき性奴を買えておれば…。そういえばマミはどうしておるであろう。もう誰かに買われてしまったのであろうか…。
コンコン。
んっ? 誰じゃ? まさか蓮華が心配になって戻って来たのではあるまいな…。てくてく…。ドアをガチャ。
くくくっ。お久しぶり…
バタン!!
くくくっ。王子、貴方の忠実なしもべ、サキエルにございますよ? くくくっ。お部屋に入れて下さいませ。コンコン。
ううっ…。嫌なものを見たのじゃ。気分が悪くなったから、昼寝の続きをするのじゃ。
コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。コンコン。
うるさいのじゃ…。ガチャ。
くくくっ。流石は王子、いきなりの放置プレイとは。
そちは今日、重要な用があると休みを取っておったのではないのか?
くくくっ。お昼までに済みましてございますよ。
折角取った休みなのだ。用が済んだのなら残りの半日、何処かで羽を伸ばしておればよかろうに。
くくくっ。王子にお土産を買って参りましたので一刻も早くお届けしようと。
土産か…。それは嬉しいのう…。
くくくっ。反応が薄うございますぞ。
そちの土産はいつも特価105ゴールドの値札が貼られたプレステ1の糞ゲーと相場が決まっておるからな。
くくくっ。お気に召しませぬか? 厳選しているつもりなのですが。
厳選した結果がどうしていつもプレステ1のゲームになるのだ。いくら激安だからといって10年以上昔のゲームはなかろう。
くくくっ。安いからプレステ1のゲームを買っている訳ではございませんぞ。面白いから買っているだけにございます。プレステ1には神ゲーが数多くございますので…。
そちは面白いのかも知れぬが、余は面白くないのだ。例えばこの前のアローン・イン・ザ・ダーク2、アレはなんじゃ。ゲームオーバーになる度に岸壁から主人公の死体がゴミの如く夜の海へと投げ捨てられるのじゃぞ? ゲーム内容がシュール過ぎるわ。余の年を考えよ。
くくくっ。アローン・イン・ザ・ダーク2は世界中で大ヒットした人気ホラーゲームの続編にございますが…。はてさて、では一体どのようなゲームがよろしいのでございましょうか。くくくっ。王子の好きなゲーム、具体的にいくつか挙げてはくれませぬか。今後の参考と致しますので…。
余の好きなゲーム? うむっ…。そうじゃのう…。ロールプレイングゲームでは幻想水滸伝2かの。3Dポリゴンを使わず、丁寧に昔ながらのドット絵で描かれたキャラが可愛らしいのじゃ。戦闘もサクサクで、ファミコン時代の古きよきファイナルファンタジーを正統進化させたようなゲームであった。いや主人公は喋らぬからドラクエの進化系かのう。どちらにせよ制作者のこのゲームに掛ける並々ならぬ情熱、愛情が伝わって来るのだ。どのキャラも立っておったし。最高じゃ。
くくくっ。特にヒロインのナナミ様は可愛いですからな。
うむっ。主人公の少年の血の繋がらない姉であるな。まだ幼いというのにシッカリ者で弟想いの良い姉である。ゲームをしておると、弟を守ってあげたいというナナミの一生懸命な想いが伝わって、だからこちらも姉を守りたいという気持ちが起きてだな。ゲームに引き込まれるのである。
くくくっ。なるほど。他にはどのような…。
アドベンチャーゲームではガンパレードマーチかの。プレステ1の性能限界を超えたグラは今の時代でも通用する程に綺麗であるし、なにより人類が奇妙な生物に追い込まれ絶滅寸前という独特な雰囲気がゲームに漂っておるのが秀逸じゃ。そしてそんな絶望的設定であるのにゲームの中の世界は現在の我々の世界と殆ど同じでとても現実的で、でも所々に戦争を感じさせるところもあって、ゲームをしておると酷く不安な気持ちにさせられるのだ。ゲームのシステム面も素晴らしい。自由度、完成度、共に高いレベルにある。学校や街を歩き回り、キャラと会話を重ね好感度を上げることで男女誰とでもラブラブな関係になれるのだ。ギャルゲーやBLゲーとしても楽しむことが出来るぞ。どのキャラも個性があって魅力的だから楽しいのじゃ。
くくくっ。特にヒロインの舞様は可愛いですからな。
うむっ。芝村という謎集団に属しておる娘で、口調も独特で始めは何を言っておるのか分からんところがあるが、好感度が上がってラブラブになると凄くデレてくるのじゃ。それなのにとても恥ずかしがり屋で素直になりきれず、ツンツンしておるところも残っておるからの。いつまでも初々しく可愛い奴で、だからこの者、主人公が乗る複座式ロボの後席パイロットでもあるのだが、彼女と共に戦い、そして守りたいという気持ちが起きてだな、ゲームに引き込まれるのである。
くくくっ。なるほど、つまりヒロインが可愛いゲームを買ってくればよろしいのでございますね。しかしそれならアローン・イン・ザ・ダーク2にも主人公の幼い娘がおりましたが、あの子はお気に召さなかったのでございましょうか。
そういえば悪霊に憑かれた蝋人形のような娘がおったな…。気に入るかどうか以前の問題じゃ。怖いわ。あれならまだ襲って来る魔物の方が愛嬌があるのじゃ。
くくくっ。海外のゲームクリエーターとの感覚のギャップが問題なのでございましょうな。生まれ育った環境が違うのですから、当然といえば当然のことなのかも知れません。
そちと余の感覚のギャップもかなり問題があるがな。
くくくっ。王子。
なんじゃ?
くくくっ。エーべルージュというゲーム、ご存知ですかな?
エーべルージュ!? ど、どうしたのじゃ。暴投ばかりのお前がいきなり精密にコントロールされた内角低めのツーシームを投げ込んで来るとは…。う、うむ…。エーべルージュ、勿論、知っておるが…。
くくくっ。プレイされたことは、ございますかな?
あ、あぁ…。昔やったことがあるぞ。かなり古いゲームであるが、結構面白いのだ。懐かしいのう。先ずオープニングに流れる曲が心地よいのだ。声優も上手いし、絵もプレステ1のギャルゲーにありがちな前時代的アニメ絵でなく、シッカリと描けたアニメ絵なので古臭く感じないのじゃ。…ただなぁ、ゲーム内で出来ることが限られていて、ゲームの進行が基本単調なのと、魔法学校の初等部二年と高等部三年の計五年を過ごすという一度やったらお腹一杯になる程に長い期間プレイするのが、ちょっと残念なところであるな。イベントも全キャラ共通なものばかりなので攻略キャラを変えて再プレイする気になれんのじゃ。とはいえ、余がプレイしたのはもう随分と昔のこと。今ならやれるような気がするのじゃ。そう…。今なら世界の謎を解き明かして真のエンディングを迎えられるやも知れぬ…。
くくくっ。それはようございました。ではお土産を…。巾着袋ごそごそ…。
なんと今回のお土産はエーべルージュであったか! それならそうと始めに言ってくれればよいのに。ふはははっ。よしサキエルよ、一緒にこの難攻不落のゲームを攻略しようぞ!
くくくっ。では、コレを。
ありがとうサキエル…。礼を言うぞ。どれどれ…。ほう…。アローン・イン・ザ・ダーク…3DO版か…。もはやプレステのゲームですらないのだな…。
くくくっ。世界の松下電器産業、パナソニックが20年程前に販売したゲーム機、3DOのゲームソフトにございます。プレステにはアローン・イン・ザ・ダーク2はございますが、残念ながらアローン・イン・ザ・ダーク1はございませんので。
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