キリノの章 26 ☆☆☆ ???
も、もうあきまへん! にげましょ!
王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。
に、にげる言うたかて、ど、ど、ど、どこに逃げるんや!
王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。
ああっ! 殿下や!
なっ! 巨神兵!? 殿下アカン! それ使うたらアカン!
お前、なに言うてんねん! いま使わんでいつ使ういうねん! つーか上官に意見すんなアホ。おい巨神兵、あのキモイ蟲、なぎ払ったれやっ!!
王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。
バシュ!! ……ピカッ!! ドガアアアアアアアアアン!! モクモク…キノコ雲。
すっ、素敵やん! 殿下、アンタはやったら出来る子や思とったでっ!!
クシャナ殿下さいこーや!
ええ乳しとんのぅ、ちょっと揉ましてんかー!
殿下バンジャ~イ!
スカ…。スカ…。
なにやってんねん! ちゃっちゃと次撃たんかい! まだ一杯蟲おるんやで? はよしい! それでもアンタ世界で一番きったないといわれとる一族の末裔かいな。もっとキバリやっ!
バシュ!! ……ピカッ!! ドガアン!! モクモク…キノコ雲。
王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。
次やっ! 次っ!!
スカ…。スカ…。
あぁ…。アカンわ…。早すぎたんや…。腐っとるでアレ…。
次っ!! 次はよ撃たんかいっ!
勘弁してえなぁ、無茶言うたらアカン…。見て分からんか? ワイのからだドロドロなんやで? なんかの病気なんや…。ちょっと休ましてえなぁ…。ちょっとでええんや…。
ええぃ!! 口動かす暇あったらビーム撃てやっ!
うわっ、ドロドロ、ボトボト、肉が落ちて来たわ…キモッ。逃げるで!
待てコラ! 持ち場を離れたらアカンって! うわっ…。
スカ…。スカ…。あぁ、もう弾でぇへんわ…。ワイの命も弾切れや…。口からまだ出るもんいうたら、涎とあんさんへの恨み辛みの言葉くらいでっしゃろか…。もうちょっと、ワイ、褒めて育てて貰いたかったですわ。あんさんそないに偉そうになんでもかんでもやれやれいいますけどな、そないに出来るもんやあらしまへんで。人いうんは…。ワイは人ちゃいまっけど…。やる気にさせやなあきまへん…。ワイ、この仕事もう限界ですわ…。生きることにほとほと疲れ果てましたわ…。バタン…。
王蟲ドドド~~。 王蟲ドドド~。
うわわわわっ、あのダンゴ虫ら、なんや、めちゃ怒っとるんちゃう? 目、真っ赤やで、あぁ怖っ! あれ人殺しの目やわ…。ごめん、ワシも逃げるわ~。
ワイも~。
ウチも~。
ワシも~。
はぁ…。今更走って逃げてもアカンやろ。ワイはもうええわ。好きにさらせや。つーか逃げるんやったら始めから戦車で山に逃げとったらよかったんちゃうん?
いや塹壕掘って身を隠すんはどうや? あいつら狭いとこ入られへんやろ?
そっ、それやがなっ。そうやるべきやったなぁ…。でも、もうアカンわ。時間ないわ…。
アホな上官持つとたまらんな…。
あんま言うたんなよ…。あの巨乳ツンデレもええとこあるんよ? 人前では意地はっとるけどな、可愛いところもあるんよ…。ライター、シュボッ。タバコ、プカー。
ツンデレ? デレなんかあったか? おっ、お前まさか、殿下と…。
……ババさま、巨神兵死んでもうたわ…。
……それでええんよ。あんなんにな、頼って生きてもな、しゃーないねん。
あっ! 姫ねえちゃんが!
ほんまや! あいつまた空飛んどるで…。
高いとこ好きやな…。
今頃何しに来たんや…。
うわっ、王蟲の大群のちょっと手前に降りたわ…。
意味不明や。ちっちゃい王蟲もおるで。
あれちゃう? ムシキングみたいにバトルする気なんとちゃう?
あんなちっこいのでか?
実は強いとか、たぶん特殊能力があるんや。超音波とか、電撃とか、波乗りとか。
それポケモンやろ?
……どっちでもええやろ? バトルに強いんとちゃうかって言いたかったんや。細かいこと言うなアホ。
アホやて? なに言うてんねん。間違うたんはお前やろ? なぁ? ……ほんまムカつくわ。やるか? お前と俺でムシキングしたろか?
こんなときに喧嘩すんな…。つーか、ムシキングちゃうみたいやで、あのちっこい王蟲の目、見てみ。真っ青や…。あれは戦士の目やない。めっちゃビビッとる。いたいけな子供の目や。オシッコ漏らしとるで。
うわぁ…。ほんまや…。なんか青い液が下にベチョベチョやん…。
いや、もしかしたらあれはオシッコ漏らしとるんと違うて、トルメキア軍を潰そう思て、この暴走を引き起こしたペジテの連中にリンチされて出来た傷から漏れとる体液なんちゃうか? 王蟲の大群を誘導する為に空からあの子供の王蟲を吊るして連れまわしとったんを、姫が見つけて制圧、連中に王蟲の前へ降ろすよう言うて、降りたと。理由は王蟲の暴走の引き金となった王蟲の子供を群れに返す為や。それで暴走が止まるかどうかは分からへんけどな。人間の愚行を姫さまは自分が犠牲になることで贖罪するいう意味合いもあるんかも知れへん。なんでか言うたら子供を群れに返すだけなら自分まで降りる必要がないからや。どやこの推理。
うわっ…。すっ、凄いわ、お前…。たぶんそれ当たりや。よ、よう分かったな…。名探偵コナンも吃驚やで…。
でも相手は人とちゃうで? 蟲やで? そんなんで暴走が止まるか?
贖罪の為に降りたんやのうて、子供が怪我しとって心配やから一緒に降りただけちゃう?
暴走が止まるとして、姫さまは大丈夫なんか? あんなデカイの急には止まれんやろ。
お前ら議論は後や、もうアカン、カウントダウン入ってまうで! 10!
9! 姫 王蟲ドドド~。
8! 姫 王蟲ドドド~。
7! 姫 王蟲ドドド~。
6! 姫 王蟲ドドド~。
5! 姫 王蟲ドドド~。
4! 姫 王蟲ドドド~。
3! 姫 王蟲ドドド~。
2! 姫 王蟲ドドド~。
1! 姫王蟲ドドド~。
王蟲ドドド~~。 ~~~~姫
姫ねえちゃんがっ!!!!
きゃ~~~っ!!!!
おい携帯で撮ったるなや!!!!
姫さま~~~~!!!!
さてさて姫さまはどうなったのでしょうか。くくくっ。皆さま、おはようございます。わたくし暗黒公爵サキエルにございます。
えーっ。今日は鳳凰宮入りの式典が中止になったということで、特別番組として、ナウシカ→ラピュタ→となりの山田くんのジブリアニメ三作連続放送を予定していましたが、ここで番組を急遽中断して臨時ニュースをお伝えします。
くくくっ。ナウシカさまが王蟲に撥ね飛ばされたところで放送を打ち切るとは鬼畜の所業にございますね。あれでは救いが全くございません。
申し訳ありません。この国を揺るがす重大なニュースが入りまして、なんとハーレム候補の座を奪われた筈のキリノさまが…
くくくっ。少しお待ちなさい…。この国の将来を担うお子様方のトラウマになってはいけません。わたくしがこの後の展開を簡単にご説明致しましょう。1分で結構ですので、お時間、頂けますかな?
そうですか、わかりました。では手短にお願いします。
くくくっ。まず王蟲に跳ね飛ばされた少女ですが、死にます。
……ほぅ。
くくくっ。そのあと大勢の蟲達の触手によって、からだを触られまくられ、陵辱されます。
……エ、エロも入ってるんですか。
くくくっ。ババさまがそれをみて号泣。
……あれっ? あのババさま目が見えないっていってませんでしたっけ?
くくくっ。少女は死姦の屈辱に耐え切れず、黄泉の国から蘇り…。
……蘇ってもあの怪我では…。
くくくっ。ゾンビとなって立ち上がって王蟲の触手をグシャグシャと踏みつけます。
……なるほどゾンビと来ましたか。
くくくっ。触手は敏感な感覚器官。つまり弱点だったのでしょうな。蟲達は堪ったものではありません。おずおずと腐海に退散し、世界は救われたのです。
簡潔明瞭なご解説ありがとうございました。どうしてもあの続きが観たいという方はツタヤでレンタルDVDでも借りて下さい。そこまでして観たくはないが……という方もご安心下さい。来年も、再来年も、その次の年も、何度でもこの映画は夏にこのチャンネルで放送しますので。
くくくっ。では、そろそろ…。
はい。臨時ニュースです。本日9:28。王都全域に戒厳令が布かれ、そして9:31。今から5分ほど前、王都の縦の動脈、白帝城と鳳凰宮を結ぶ幅200m長さ40kmの国道1号線において激しい戦闘が発生しました。これはライブ映像です。爆煙で分かり難いですが、おびただしい数の閃光が発生しているのが分かると思います。これは国軍の90式重戦車の発砲によるものです。主砲から劣化ウラン弾が発射される際に発生する閃光です。
くくくっ。国道1号線は昨夜から鳳凰宮北5kmの地点で国軍第一師団に属する90式戦車50両が横一列に並んで封鎖しておりました。戦車の3km後ろにはMLRSと呼ばれる多弾頭地対地ミサイル車両が20台。そしてさらにその後ろ、鳳凰宮周辺には300門の火砲の陣地が出来上がっております。いま彼等が戦っている相手はハーレム候補のキリノさまにございます。
サキエル卿、何故このような事態となったのか説明して頂く前に、確認しておきたいのですが、キリノさまはまだハーレム候補さまなのですか?
くくくっ。そうでございますが、なにか。
キリノさまはハーレム候補の資格を失ったと鳳凰宮からFAXで連絡があったもので。
くくくっ。精約にはハーレム候補は王子が決めると明確に定められております。王子はキリノさまをハーレム候補として受け入れ、キリノさまは王子のハーレム候補となることに同意しました。この意志はどちらも覆っておりません。よってキリノさまはハーレム候補です。
しかしハーレム候補と認められるには鳳凰宮評議会の議決が必要です。それが否決されたと。
くくくっ。そのような決まりは精約のどこにも書かれておりません。慣習として続いていただけのことでございます。慣習も場合によっては慣習法として法の力を持つこともあるのでございましょうが、最高法規である精約を覆すことは出来ません。鳳凰宮評議会の議決はあくまでも参考意見。王子が受け入れなければ何の効果もございません。キリノさまをハーレム候補と認めぬ議決など絶対に受け入れぬ、王子は今朝、白帝城の玉座でそう仰りました。くくくっ。とはいえ鳳凰宮も王子の考えを受け入れるつもりは微塵もないようですがねぇ…。
なるほど…。で、王子と鳳凰宮との間で骨肉の争いが始まったと…。つまり国を二分する内乱が始まった訳ですか。
くくくっ。ご安心下さい。いま戦っておられるのはキリノさまお一人のみにございます。どのようなことがあっても王子が動くことはありません。この戦闘は内乱ではございません。キリノさまの鳳凰宮入りの式典が始まっただけのことにございます。いつもと少し趣向が異なっている様にも見えますが、王子のハーレム候補としてキリノさまが相応しいかどうか、それをこの式典を乗り越えることでキリノさまご自身が確信出来たならば、見ている我々も同じように確信出来るのかも知れません。見守りましょう。くくくっ。しかし、まぁ、あのようにドレスの裾を短く切られてヒラヒラと…。動き易くはあるのでしょうが、見えておりますな。くくくっ。おパンツもドレスと同じく純白にございますか…。今日は昼から雨となりましょう。それまでに決着が付けばよろしいのですが。
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