キリノの章 14 ★☆☆ ゼブン中等学校・武道館
オハヨー! キリノ。
おはよう。アヤセ。
よかった…。今日はちょっと元気そうで。ここ数日、キリノ塞ぎ込んでたから…。
う、うん。心配掛けてゴメン。いつまでもクヨクヨしてらんないし。そろそろ、ね。
何があったかはまだ教えてくれないの? 心配だなぁ…。まさかキリノに限って男に振られたって訳じゃないだろうし。
……(////
振られたんだ…(////
ちょ、ちょっと親しくなったイトコみたいなガキが帰っちゃっただけだよ(////
そっか…。そうよね。キリノって真面目だからボーイフレンドが出来たからって直ぐにキスとかする訳ないし、友達が帰ったってまたいつか会えるよ、そんなに落ち込まなくても…
……(////
キ、キスしてたんだ…(////
キスっていっても殆ど挨拶みたいなのを、ちょっと、そのっ、軽くやっただけだから…(////
そ、そうなんだ。ゴメン。キリノの心の傷をえぐるようなこと言っちゃって…。うん。裸で抱き合ったって訳じゃないんだから。気持ちを切り替えて行こうよ。大丈夫、キリノなら…
……(////
だ、だ、抱き合ったんだ…。ガタガタ…ブルブル…。ご、ごめんなさい…。ガタガタ…ブルブル…。も、もうこれ以上言うの止めるね。ガタガタ…ブルブル…(////
ここで終わんないでよっ! もう無いわよっ! お風呂に一緒に入って、キスし合って、からだを拭かれて、失神して、ベッドで裸になって、抱き合ったってところで終わりなのっ! それ以上のことなんて、一、切、な、い、のっ!(////
…………そ、そうなんだ(////
…………うん(////
ガラガラ~。スタスタ。ガラガラ~ピシャ。スタスタスタスタ。皆さん! お早うございますっ!
……あれっ? キリノ…。キリノ…。カズコ先生の様子なんかオカシイよ? 目が血走ってる。
……う、うん。どうしたんだろ…。
突然ですが、今日はHRと一時間目の授業を取りやめてTV鑑賞会を行いますっ! いまこの国で大変なことが起きようとしてます! もう授業なんてどうでもよろしいっ! 女子の皆さんっ! くれぐれも落ち着いて、騒がず、静かに観て下さいっ! では、プチっと!
…………という訳で、さきほど白帝城において無事に授与式が終わり、蓮華さまに剣聖の称号が与えられた訳ですが、サキエル卿、剣聖といえば…。
クククッ。そうでございますねぇ…。剣士の最高位。この称号が与えられるのは実に200年振りのことでございます。
それだけ先の反乱鎮圧の功績が認められたということですか。もともと蓮華さまはルーンで最強と呼び声高い天才くの一忍者でもありますが…。
クククッ。いえいえ。剣聖は功績で与えられる位ではなく、ましてや相対的な強さの偏差値で与えられる位でもございません。絶対基準、武において人を超えし者にのみ与えられる位なのです。
蓮華さまが人を超えた…。ルーン最強ならその時点で既に人を超えているのではないかと、わたしには思えるのですが…。
クククッ。それは人の最強であって、人を超える事とは意味合いが異なります。蓮華が剣聖の位についたのは、単結晶魔法障壁という結界を打ち破ったことに尽きます。
単結晶魔法障壁?
クククッ。魔道具…この域になりますと神具とも呼ばれますが、その超レア・アイテムによって発生する、魔法力学において完全無欠、どうやっても壊れない結界のことです。クククッ。嘘か本当か、伝説の書には、この神具を装備した勇者がルーンの魔王を滅ぼし、人の世が生まれたと記されております。
サキエル卿は蓮華さまがその結界を打ち破る瞬間を目撃されたとか…。
クククッ。反乱部隊となった性約監査部の中にどういう訳かこの神具を装備している者がおりましてな。蓮華は正面から戦うなとの王子からの警告を受けていたにも関わらず、性約監査本部の塔に突入した後は他の者には目もくれず、奴に真正面から突っ込みまして……。あれは人というより、興奮した猪でございますね。
で、見事に打ち破ったと。
クククッ。いえいえ。ぶざまに吹っ飛ばされておりました。しかしあの蓮華とかいう娘は頭が相当パーでございましてな。床に叩きつけられてもニヤニヤしておりましたわ。で、何度も突っ込んで、七撃目だったでしょうか、クククッ。あの娘、とうとう人の域を超え、結界をバラバラにしてしまったのです。
ほぉ…。それは観たかったですな。
クククッ。そういう意見が出ると思いまして、今日、ここでエロス国民の前で、剣聖となった蓮華が演武を行うことに……。
……ねぇ、キリノ?
……うん?
寝ちゃ駄目だよ…。
…あぁ…うん…。最近さぁ…。夜、眠れなくって…。ふぁ~…。ん? ちょ、ちょっと、アヤセ…。アヤセ…。
うん? どうしたのキリノ?
カズコ先生、物凄い勢いでTVに齧り付いて観てるけど、コレってどういう放送なの?
剣聖になった人がいて、これからその人の演武が始まるって…。
……剣聖? 演武? 先生ってそういうのに興味あったんだ…。ちょっと意外かな…。わたしにはよく分かんないよ…。先生があんな様子じゃ寝てても分かんないよね…。おやすみ…。
あぁ…ちょっとキリノ…キリノったら…。
……TVを御覧の皆様、この会場の熱気が伝わりますでしょうか。10万人収容の王立武道館が満員です! 剣聖位授与式の後にこちらで演武が行われることが急遽決まって、まだ4時間しか経っていないというのに、どこで聞きつけたか、この人、人、人、人……。
クククッ。酷い臭いでございますね。腐った人間の酸っぱい臭いがします。
ゴホンッ…。え、えーっ。もうそろそろ開始時刻なのですが……。あっ! 蓮華さまです!! 弓道衣を纏った蓮華さまが長弓を片手に颯爽と花道からご登場~~~っ!!! うわぁ、カッコイイですね!! 黒髪を後ろで結って凛々しいお姿です!! ……ですがサキエル卿、なぜ弓なのですか? 剣聖なのだから、剣の演武かと思っていた方も多いと思いますが。
クククッ。そうでございますね。本来は剣で、というのが一番よろしいのでしょうが、駄目な理由が二つございまして、まず剣聖となった蓮華の剣筋を公開するのは国防上よろしくないというのが理由の一つ。蓮華の剣技を見ることが出来るのは残念ながら、あの者に切って捨てられる者か、あの者の後進のどちらかのみとなりましょう。もうひとつは演武とは別に重要な理由があってのことでございます。それは何かは、まだ秘密ですが、この会場の熱気をみると、どうやらもう広く知れ渡ってしまっているようでございますねぇ…。
はい。そのもうひとつの理由について、この番組では蓮華さまの演武が始まる寸前、演武の説明と共に発表する段取りになっておりますので、もうしばらくお待ち下さい。さて、蓮華さま、いま武道館中央に設けられた特設舞台へ上がっていきます。
クククッ。なんとかと煙は高いところに行きたがるといいますが…。嬉しそうにまぁ…。
しかし…サキエル卿。
はい。ピーナツ食べますか?
いえ、蓮華さまが弓が得意だとはわたし初耳だったのですが…。
クククッ。わたくしも実際に見たことはございませんが、剣聖は武に通じ、武は弓道にも通じますので。
なるほど…。剣聖とは剣のみにあらず武の境地にあるという訳ですね。その剣聖となられた蓮華さまが、いま特設舞台へ上がられました。スポットライトを浴びてニコニコと微笑みを浮かべて、手を振りながら、弓を掲げながら、舞台中央へとゆっくり歩み寄って行かれ……っと、あぁっ!! ちょっとつまずかれました! いや、かなりつまずかれました。しかし剣聖、ここは瞬時にバランスを建て直し……。あぁ…駄目だ…。コケました。盛大なコケです。顔面を強打かっ!? 大丈夫でしょうか…。剣聖といえぞ、この大舞台でちょっと緊張しているのか……。おぉっ!! 笑顔です。満面の笑顔です。どうやら大丈夫なようです!! 流石は蓮華さま、剣聖さま、まるで動じていません!!!
クククッ。わたくしには鼻血を出しながらの照れ笑いに見えますが、それに手足がロボットのように右左で同時に出ておりますぞ…。クククッ。この演武、本当に大丈夫なのでしょうかねぇ…。
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