キリノの章 05 ☆☆☆ セクト地方ゼブン(裏山)
ハァハァ…。もう走れない…。爆発も収まったし、ちょっと休もうよ~。
もう少しで家に戻れる、頑張れ……。あぁ…不味い…人が倒れている…。
大変じゃん!
行くと思った…。おい、キリノ、危ないって…。
だって! あぁ…。酷い怪我…。
水…。水を……。
お水ないよぅ…。キョウスケ、持ってない?
そいつの腰に水筒がぶら下がってる。だが、この傷じゃもう助からない。貴族同士の戦いってのは、お互いの名誉を掛けて、死も覚悟の上でやり合うんだ。俺ら庶民が出る幕じゃない。先を急ぐぞ…って、お嬢……。
お水です。飲めますか?
ゴホッ…。ゴホッ…。
駄目だ…この人、お水を飲んでくれない…。こうなったら……ごくごく……。ぶちゅ~~~っ。
コクコク……。ゴホッ…。コクコク……。
やれやれ、ヤクザの親分の娘がこんなに甘いんじゃ、高山組の先が思いやられるね。
う、煩いっ! ごくごく……。ぶちゅ~~~っ。
コクコク……。ゴホッ…。ゴホッ…。
……おいオッサン、何か言い残すことはあるか?
これ……を…鳳…に…届……けて……。クララ…すまない…父さんは……もう帰れそう……にない……。
んっ? メモリーカード? これを何処の誰に届けるんだ? クソッ! お嬢、こいつに水を掛けろ……お嬢? おいっ! キリノ! しっかりしろ、泣いてる場合じゃない。顔に水を掛けてやれ。意識が途切れそうだ。
もうお水ないよ…。涙 ヒクッ…ヒクッ…。
……あ、あなたの名はキリノなのか……そうか…あなたが……。なら、これはもう…いらんっ…。
熱っ! な、なんだよ……あぁっ…メモリーカードが溶けちまった…。
……キリノ様…すみません……。
えっ!? あっ…。く、口移しなんて、そ、そんなの気にすることないよ。わたし全然気にしてないし(////
……我々が間違っていました……法ばかり…気を取られ……人を見ていなかった。キリノ様…この崖の下に……貴女様の…… グハッ! ……ガクッ。
うぅぅ…。死んじゃったよぅ…。涙 ヒクッ…ヒクッ…。崖の下っていってたけど…もしかして仲間の人がいるのかな…。
さぁな…。
キョウスケ、怒ってる?
あぁ、俺のいうことを聞かないで危ないことばかり…。他人の命の前に、先ず自分の命を大切にしないと、命がいくつあっても足りない。本当は怖がりの癖に、他人のことになると何でいつもそんな無茶ばかりするんだ。お嬢が死んだり、酷い目に合ったら、俺はオヤッサンにどう……
キョウスケ、ほら、あそこに誰か倒れてる! 子供だよっ! 死んでる…のかな…。
お前はっ! 俺の話を全然聞かないよなっ! ハァハァ……。いや、少し動いた…。生きてるようだ。子供か…。仕方ないな…。俺、ちょっと降りてみるよ…。
わ、わたしも、降りる…。よいしょ。よいしょ。うんしょ。うんしょ。……ふうっ。……どう? 大丈夫そう? キョウスケ? どうしたの? そんなに顔を赤くして……。
キリノ……コイツ……人間だよな?
えっ? 何を言ってるの……。 !? わっ! ちょっ! な、なにこの子……。凄く綺麗……。こんな人いるんだ……。お人形さんみたい……。私と同じ金色の髪……。アッ。
う…うんっ……。な、なんだお前達! んっ!? さ、触るな…無礼者め…余を誰と心得るかっ!
わっ! わっ! 喋った! 声も綺麗…。妙に上から目線だけど…。アンタ誰?
ふははははっ。聞いて驚け! 余はな……。余は……。誰であろう……。
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