キリノの章 04 ☆☆☆ セクト地方ゼブン(高山邸・裏山)
あっ! また向こうの山で光った! ゴォオオオオン…………。
キリノ! 窓から離れろ! 撃たれたらどうする! おいキリノ! こらっ言うことを聞けっ!
だってお父さん! 悔しくないの? ウチの裏山で爆弾をあんなに……。あれ絶対、原田組の奴らの嫌がらせだよ……。クッソ~~ッ。やるんならウチに直接撃ち込んでみなさいよっ! この臆病者っ!!
挑発するなキリノ。連中は威嚇しているだけだ。夜の闇に紛れてコソコソと爆弾を爆発させるのが精一杯なのだ。花火大会だと思えばいい。とはいえライフルで狙撃されんとも限らん。もうこっちに来なさい。直ぐに終わる。
だって……ほらまた! あっちにも! ゴォオオオオン……。 ゴォオオオオン……。あ~~~~っ腹立つ…。調子乗ってるんじゃないわよっ! 私ちょっと行ってアイツら捕まえてくる!
ばっ、馬鹿な真似はよせ!
大丈夫。ほらっ、防弾チョッキ着てるし(ゼブン学園中等部のブレザー学生服の上着をチラリと捲くれば下着の代わりにケブラー繊維の防弾チョッキ、下のスカートは校則違反の超ミニでビッチ…かと思いきやチラリチラリと見えるおパンツは意外にも清純派の純白でしたぞっ!)、サブマシンガン持ったし、手榴弾だって、こっちが出て来ると思わないからちょっと威嚇射撃すれば絶対にビビって降参するって、浮き足立った相手の足を刈れば簡単に転ぶってこと。じゃあ、行って来るから♪
あっ! こら! キリノっ! ……あぁ、行ってしまいおったわ。まったく鉄砲玉のような奴だ……。おい、キョウスケ、連れ戻して来い。
ええっ!! おお俺っスか!? こ、こういう時はオヤッサンが身を挺してお嬢を止めて下さいよ……さっきっから情けないったらないね、頭から布団を被って。
てめぇだって被ってるだろうがっ! ツベコベ言ってねーで連れ戻して来い! あぁ…お前の布団は俺が預かっておいてやるからな…。
ハァ~~~~~ッ。やってらんね~。ていうか、お嬢、どこまで行ったんだ? お嬢~。キリノ~。って、庭に居ねぇし。本当に外出たの? 馬鹿なの死ぬの? ゴォオオオオン……。クソッ。行くしかねえか……。
ドゴゴォンンン! キャッ! ゴォンンンン! キャッ! ガタガタ…ブルブル…。
お嬢……大丈夫か…って、大丈夫そうだな。しかし、こんな所まで来てたのかよ…。無理しやがって、本当は人一倍怖がりの癖に…。
はぁ? なに分かったようなこと言っちゃってんの。ガタガタ…ブルブル…。これからハンティングを始めるところだったのに。ガタガタ…ブルブル…。余裕よ余裕。ちょっと靴紐が緩んだから、しゃがんで直してたの。ガタガタ…ブルブル…。
震えて強がっても全然説得力ねーよ。つーか俺はお嬢がオシメしてる頃から知ってんだ。意地張ってもお見通しだ。さぁ、帰るぞ……って、どうした固まって……。さっきの爆発で腰でも抜けたか? あぁ……死体か…。
く、くろこげ、バ、バラバラ……。ガタガタ…ブルブル…。
コンガリと焼けてるな……んっ? 死体の腰にぶら下げてるこの刀、魔剣か…。
魔剣? 何それ? ガタガタ…ブルブル…。
一般には出回らない魔法使い専用の武器でな、刃のオリハルコンに魔力を共振させると高熱が発生して鋼でもバターのように切り裂くことが出来るって優れものなんだが…。もしかして……。クンカクンカ。やっぱりそうだ。コイツの体から火薬の匂いが全くしない。爆弾じゃなく魔法で爆殺されてる。
つ、つまり魔法使い同士が殺し合ってるってこと? ガタガタ…ブルブル…。魔法使いってこの国を魔力で支配してる貴族連中よね? ガタガタ…ブルブル…。学校では王様や貴族は人ではなく神様みたいな存在だって教わったけど、わたしたちと同じように死ぬんだ…。ガタガタ…ブルブル…。でもなんでこんな田舎に…。ガタガタ…ブルブル…。
さぁ、なんでこんなところで戦ってるのかまるで見当もつかないけど、こんな連中の戦いに巻き込まれたら終わりだ。逃げるぞ。その銃は置いていけ。魔法使いに銃は効果ない。全力で走って逃げるんだ。
……う、うん……キョウスケ…ごめん。わたしのせいで…。
……らしくもない…もしもの時は俺がお嬢を逃がすくらいの時間は稼ぐから、俺に構わずオヤッサンの元まで逃げろよ。いいな。
そ、そんな……わたし、キョウスケのこと置いて逃げるなんて出来ないよ! だってわたし、昔からアンタのこと、す、好きだったんだからねっ(//// ……って、誰もいないし! こらっ! キョウスケ、わたしを置いて全力で逃げるんじゃないのっ! 待ちなさ~~い! キョウスケ、待て~~~っ!
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