キリノの章 03 ☆☆☆ 白帝城(執務室)
……パチッ★
んっ? 王子? どうされたのです? 急に黙り込んじゃって……。チョコドーナツ不味かったですか? 街では一番人気なんですけど、ちょっとビターな感じのチョコレート味、王子には早かったかな~。うーん。私の食べ掛けですけどエンゼルドーナツと交換しましょうか? こちらの中にはあま~いホイップクリームがた~っぷりと入っていてですね…
蓮華か…。今日は何曜日だ…。
へっ? 水曜ですよ。いったいどうされたんです? あっ、今朝のメルルさまの鳳凰宮入り式典で疲れましたか? 王子興奮されっぱなしでしたもんね。いやー女である私でも興奮しましたよ、メルルさま、すっごくお綺麗でしたもん……。青いツインテールが風にたなびいてサラサラと舞って、それがアクセントになって純白のドレスを引き立てて……。ハァ……。今思い出しても溜め息が出ます…。祝福に詰め掛けた300万の国民も惚けた様子でメルルさまマジ天使って……。王子? 本当に大丈夫ですか? 凄く疲れた顔をしてますよ? お昼寝しますか?
195回……。キリノが捕縛される前日の午後3時…。ここまで戻れば……良かろう……。
王子…?
魔道王国エロス、国王代理アベルの名において、お庭番衆筆頭蓮華に勅命を下す。鳳凰宮性約監査部に所属する者を一人残らず斬り捨てよ。連中が保管する書簡や資料も全て燃やし尽くせ。エロス家への背信者どもを皆殺しにしろ。この世から消し去れ。
ハッ!
…監査官のグラドという男に気を付けよ。彼奴の結界はお前の突撃でも貫けぬであろう。正面からは決して戦うな。戦う前に勝て。
ハッ! シュタッ!
……あぁ、頭が割れるように痛い…。少し横になるか……。いや…まだ…駄目だ……。まだ余には…。
くくくっ。勅命が出るとは一体何の騒ぎでしょうか。おや? おやおや? 魔王子アベルともあろうお人が、なんと無様な。魔力が尽き掛けておりますぞ。腹でも壊しましたか? お二人だけで食べるドーナツは美味しゅうございましょうが、嫉妬という名の毒が入っておったやも知れませんな。
お前か…。直ぐに蓮華の後を追ってくれ。メルル付きの式典衛兵として鳳凰宮の深遠に出張っておる佐助は蓮華を助けに行くことが出来ぬ。お前が代わりに彼女を助けてやって欲しい。
くくくっ。私は王子を護衛する使命を受けておりますゆえ。このような状態の王子を置いて蓮華のフォローになど…。
余はここでお前が戦うさまをこの100インチのブラビアで大人しく見ていよう。行って来い。蓮華が危機一髪の所をお前が華麗に助ける様子はちゃんとHD録画しておいてやるから。暗黒公爵サキエルの暗黒バトルを久々にみせてくれ。
くくくっ。そこまで言われるのなら…。人間相手に私が戦っても勝負にはならぬでしょうが、一方的虐殺であっても王子がご覧になってお楽しみ頂けるように、舞いましょう暗黒の舞踏を! サキエルの舞を! くくくっ。では、わたくしステージに参ります。王子、とくとご覧あれ! シュタッ!
……すまぬサキエル、TVはTVカメラで撮影しないと画面には映らないのだ。蓮華の邪魔にならんようにな……。さて…キリノ…いや、姉上のおられるセクト地方ゼブンとやらへ行かねば…。今日中に着けば良いが…。おい誰か…! 誰かおらぬか! 馬を持て! 余は遠出に出るぞっ!
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