メルルの章 04 ☆☆☆ 白帝城(ハーレム候補控え室)
ううんっ…。んっ? ここ何処? はぅぅ…ふわふわのベッドだ…。オロオロ…。キョロキョロ…。広い部屋…。天井も高いし…絵が描いてある…。天使かな…? あっちにはシャンデリア…。初めてみた…キラキラして綺麗…。
くくくっ。あまり上を向いておられるとおクビが疲れてしまいますよ?
キャッ!!
くくくっ。やっとお目覚めになられましたか、メルル姫。10時間もお眠り続けられましたので、わたくし心配致しました。くくくっ。このまま永遠に目覚められぬのかと…。
ひ、ひめ…? って、アンタ…。サキエル…。
くくくっ。はい、先程は失礼致しました。わたくしサキエルにございます…。サララ砂漠の小さな国で公爵などしておりましたが、今はアベル王子のお世話役をさせて貰っております…。
おまえたち村を襲ってシスターを…。
くくくっ。メルル姫、貴女さまのように可憐な乙女がそのような怖いお顔をしてはいけません。心を穏やかにニッコリとお微笑みなされるように、いまお紅茶をお持ち致します。スイーツはなにがよろしいですかな。ドーナツはお好きですか?
シスターはどうなったの!
くくくっ。彼女はお亡くなりになられました。雷剣のイカズチを受けて真っ黒こげにございます。くくくっ。
酷い…酷いよぅ…。うぅ…っ…。
くくくっ。王子に剣を向けたのです。本来なら拷問の上、筆舌に尽くしがたい程に残虐な方法で殺されてしかるべきでございましょう。しかしアベル王子はお優しい方でございますので…。くくくっ。メルル姫が羨ましゅうございます。あのような偉大な魔法使い…。神の如き方の妃となられるのですから。
あたし村に帰る!
くくくっ。メルル姫の村はもうございません。メルル姫の家もございません。帰る場所など何処にもございませぬ。
メルルは家に帰るもん! にゃん太があたしの帰りを待ってるんだもん!
くくくっ。わたくしはにゃん太というお方を存じませんが、残念ながらお亡くなりになられている筈です。くくくっ。わたくしが村人全員を天国へお送り致しましたので間違いございません。
ううぅ…。なんてことを…。お前らは悪魔だ…。うぅ…っ…。ヒクッ…ヒクッ…。
くくくっ。お諦め下さい。メルルさまの思い人はもうこの世におられません。
生きてるもん…。
くくくっ。メルルさまの心の中に…で、ございますかな? くくくっ。メルルさまはロマンティストにございますなぁ…。
にゃん太は人じゃない…猫だもん! だから生きてるんだもん!
くくくっ。ほほう…。にゃん太殿は猫にございましたか…。わたくし猫は殺めておりませんので、それなら僅かながら希望がございます。
ヒクッ…ヒクッ…。
くくくっ。しかしアベル王子は村を消し去る際にメギドの火を使ったと仰っておられましたからなぁ…。
メギドの火…?
くくくっ。はい。究極攻撃魔法のひとつにございまして…。火が火を生み増殖し、10km半径が紅蓮の炎に包まれ、その燃え上がる炎は成層圏にまで達するといいます。くくくっ。にゃん太がこの魔法に耐えられたなら、猫を超えた猫、スーパーニャンコの誕生でございますぞ。
あんた達…絶対に許さない…。
くくくっ。メルルさまはひどい勘違いをされておられる…。我々はメルルさまに恨まれるようなことをした覚えはございません。寧ろ感謝して貰いたいくらいで…。
ふざけないで!
くくくっ。ではきちんと順を追ってご説明致しましょうか。先ずシスターなるあの女、善人ではございません。人攫いの総元締めにございます。方々から幼い子らを攫っては魔法で記憶を操作して育て、年頃になれば売春宿へ女郎として売り渡す大悪党。王子とわたくしは貴女さまをこの城にお出迎えするついでにゴミ掃除をしたまでのこと…。
うそっ!!
くくくっ。本当にございます…。催眠魔法発動…。 ……パチッ☆
あ、あれ…? からだが…。バタン…。
くくくっ。北の遊牧民族ハイラルの族長の娘でルーン一番の美少女だと噂される貴女さま、メルル姫さまに会うために我々はハイラルの地へ向かったのですが、既に連れ去られた後だったのでございますよ…。ハイラルという名に覚えはございませんか? 洗脳魔法発動…。 ……パチッ☆
ハイラル……。
くくくっ。はい…。ほぉ~ら、よ~く思い出してごらんなさい……。
そういえば…ハイラル……。どこか懐かしい響き…。
くくくっ。北の大草原にございます…。羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が4匹…。
羊さんが一杯なのだ…。
くくくっ。メルルさま、お父さまやお母さまの顔を思い出せますか?
お父さん、お母さん……。ううっ…。思い出したのだ…。あたしはメルル姫なのだ…。でも、でも…。
んっ…? どうされたのです。どうしてこの安らかな記憶を受け入れないのです。
あなた達はにゃん太を…。にゃん太を…。
くくくっ。そのような猫、本当にいたのでございますか? わたくしが村に入ったとき、ネズミの気配はいくつか感知しましたが、猫の気配など1匹もございませんでしたよ? もしや、にゃん太とは、村に監禁されて心細くなった貴女が作り出した幻覚なのではないですか?
ええっ…。に、にゃん太は、い、いるもん!! きょ、今日だって一緒に朝ごはん食べて、後片付けしてくれるって、そういってあたしを送り出してくれたもん…。にゃん太はあたしの王子さまだもん!!
くくくっ。猫がどうやってごはんの後片付けをするのですか?
ええっ…? そ、それは…。あっ、あれ…? にゃん太は…。にゃん太はミクちゃんが好きって言って、あたしの髪をツインテールにしてくれて、それで、それで、あたしに、いってらっしゃいって…。
くくくっ。メルル姫、お気を確かに…。
ふぇ?
猫は喋りません。
……。ガタガタ…ブルブル…。
くくくっ。猫はにゃーとしか鳴きません…。
にゃん太は、あたしのにゃん太は…。幻…? ガタガタ…ブルブル…。
くくくっ。ショックなのは分かります。不安になられる気持ちも分かります。しかしメルルさま、北の草原には貴女さまのご両親がおられます。お友達も沢山おられます…。幻想から現実へ…。メルルさま、今が目覚めのときでございます。勇気を出して現実をお受け入れ下さいませ…。
現実…?
くくくっ。あなた様はメルル姫。人攫いに記憶を消されて村に幽閉されていた。喋る猫などこの世にいない…それは寂しさが生み出した幻…。これが現実にございます。
あたしは…メルル姫…。
くくくっ。ハイラルの姫君にございます。
にゃん太はいない…。
くくくっ。幻にございます。
あたしはシスターに囚われていた…。
くくくっ。わたくし達がお救いしました。
そっか…。
くくくっ。少し落ち着かれましたかな?
う、うん…。助けてくれて、あ、ありがとうなの、です…。
くくくっ。礼なら王子に言って下さい。貴女様の救出作戦は大変危のうございますので配下の者に任せるべきだと、わたくし何度もそう進言したのでございますが、アベル王子は今直ぐ余自らが助けに行くのだと言い張りまして。
アベル王子…。
くくくっ。アベル王子はメルル姫と結婚をしてハーレムに入って貰いたいと本気で願っておられます。その王子の気持ちを受け入れるかどうかはメルルさまの自由にございますが、どちらにしても真摯に応えて頂きたく思います。
コクン…(////
くくくっ。王子はさきほど戻られて、只今政務室で内政をしております。もう直ぐこちらに参られるでしょう。それまで…そうでございますね…。この部屋の奥にお風呂がございますので、姫は湯浴みでもされて汗や汚れを落とし、疲れをお癒し下さいませ。後でドレスをお持ち致します。
う、うん…(////
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。