日銀の木内委員、「輸出回復に依らない景気シナリオ」提唱
[神戸 31日 ロイター] - 日銀の木内登英審議委員が31日、神戸市内での会見で「輸出の回復を必ずしも前提としない景気回復シナリオはありうる」との見解を示した。
輸出は4月以降、日銀が当初期待したようには回復しておらず低迷が続いている。その要因や先行きについて日銀内で改めて議論が行われる可能性がありそうだ。
輸出は日銀が量的・質的緩和(QQE)を打ち出した昨年4月以降、回復時期が後ずれを続けている。今年も日銀が試算・公表している実質ベース(2010年=100)で2月の99.6をピークに、5月95.5、6月は95.0とほぼ減少傾向にある。
輸出が増えない理由について、日銀はこれまで「東南アジア諸国連合(ASEAN)の回復が若干もたついたことと日系企業の生産拠点の海外移転」、「消費税引き上げに伴う駆け込みの中で、1─3月に国内需要を優先し輸出を後回しにした」(黒田東彦総裁、7月15日会見)などと説明してきた。
木内委員もこの日の講演で 「自動車メーカーを中心に海外生産を拡大する動きが相次いだこと」が「輸出の下押し要因として作用している」と指摘。その上で「4月以降、増税後の輸出余力拡大の効果も予想されていたが、これまでのところ勢いを欠く状況が続いている」と述べ、増えにくくなっている点を強調した。
代わりに木内委員は、内需主導での景気回復は可能と指摘し、輸出が弱い割に大企業・製造業の設備投資が強い点を挙げた。もっとも老朽設備の更新が中心であれば持続性はないため、政府の成長戦略などを受け「国内の潜在成長率に対する期待、内需に対する期待で設備投資が伸びる」姿に期待を示した。
アベノミクスで大幅な円安にも関わらず伸び悩んでいる日本の輸出の状況については、内外政策当局者が大きな関心を寄せている。2月には財務省の山崎達雄国際局長(現財務官)が韓国で「円安が日本の輸出を直接拡大させる状況にはもはやない」と発言し注目を集めた。
7月上旬には米ニューヨーク連銀のエコノミストらが「エネルギー価格の上昇を背景に日本メーカーが海外現地価格を引き下げていないため、円安にもかかわらず輸出が伸びていない」とのリポートをまとめている。 続く...