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横浜最古の倉庫解体へ 「重要文化財級」との評価も

 明治末期に建てられ、生糸貿易を支えた横浜市中区日本大通の旧「日東倉庫日本大通倉庫」が、駐車場整備などのため早ければ8月中に取り壊されることが31日、分かった。関東大震災に耐えた横浜最古の倉庫で、震災復興にも貢献。木材やれんが、鉄筋コンクリートを組み合わせた構造は建築史的に珍しく「重要文化財級」との評価もある。「横浜のルーツが失われる」と憤る声が上がっている。

 所有者の不動産業ケン・コーポレーション(東京都港区)は「解体の予定はあるが、詳細は決まっていない」としている。関係者によると、ホテル開発の構想も浮上しているという。

 同社は昨年8月、総合商社の三井物産が全額出資する物産不動産(同港区)から、倉庫に隣接する旧「三井物産横浜ビル」と合わせ取得していた。同倉庫は国や県、市の文化財指定などは受けておらず、このまま解体される公算が大きい。

 同倉庫は1910(明治43)年に完成。横浜赤レンガ倉庫(1911~13年)よりも古い。翌11年に誕生した同ビルとともに三井物産横浜支店として一体的に使われ、生糸輸出の最前線だった。23年の関東大震災の際は倉庫の中の生糸が被災を免れ、国家財政を助けたともいわれる。

 構造的にも特殊で、柱と屋根が鉄筋コンクリート、壁がれんが、床が木材-と、複数の素材がうまく組み合わされている。建築史に詳しい横浜国大の吉田鋼市名誉教授は「鉄筋コンクリート造を試作的に用いた最初期の建物で、国内にはまず現存例がなく極めて貴重だ」と指摘する。

 市文化財課も「鉄筋や木を組み合わせた構造は貴重だ」と重要性を認識する。一方で、歴史的な景観を企画、調整する役割の市都市デザイン室は「前オーナーも含め、所有者が一貫して文化財の指定を受けることを断ってきた」と、保存のための規制が働かなかった経緯を説明している。

 公益社団法人「横浜歴史資産調査会」の米山淳一事務局長は「横浜の発展の礎となった生糸貿易の遺産が失われてしまう」と危機感を募らせている。

【神奈川新聞】