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【第509回】 2014年8月1日
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小川 たまか [編集・ライター/プレスラボ取締役]

「妻の家事ハラ」広告はなぜ集中砲火を浴びたのか?
世間が納得できない家事・労働シェアの空論と現実

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「男に甘い目線でつくられている」「典型的な逆差別だ」――。7月中旬、にわかに「家事ハラ」という言葉に世間の批判が集中した。発端は、旭化成ホームズが発表した「夫の約7割が『妻の家事ハラ』を経験!」というリリースと、これに伴うネット上のCMである。騒動は、「家事ハラ」に関する著書を持つ大学教授が、「本来の意味と違う使われ方をしている」と同社へ抗議を行う事態にまで発展した。「家事ハラ」に関する世間の認識を、広告制作側が読み間違えてしまった影響が大きいように思える。騒動の経緯を検証しながら、今の日本における「男女の家事・労働シェア」にはどんな課題があるのかを、考えてみよう。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

甲斐甲斐しい夫に妻がダメ出し
「妻の家事ハラ」広告に批判が噴出

 「家事は男女シェアが大原則。弊社が『家事ハラ』という言葉を使ったことにより、竹信先生の活動にご迷惑をおかけするのは申し訳ないと思っています」

 取材に対して、大手住宅メーカー・旭化成ホームズの広報室はこう語った。

 7月中旬、にわかに「家事ハラ」という言葉が話題となった。発端は、旭化成ホームズが7月14日に発表した「夫の約7割が『妻の家事ハラ」を経験!」というリリースと、それに伴うネット上のCMだ。リリース直後からネット上で、主に女性からの批判が噴出した。

 批判の内容はいくつかあるが、1つは和光大学の竹信三恵子教授が発表した新書『家事労働ハラスメント-生きづらさの根にあるもの』(岩波新書/2013年)の中で問題提起した「家事ハラ」と、旭化成がリリースや動画広告で発表した「家事ハラ」が、ほぼ真逆と言える内容であったこと。本来、自分が提言した「家事ハラ」の解釈が誤って世間に伝わったとして、竹信教授は24日に旭化成ホームズに抗議文を提出している。その後、2回にわたって面談が行われ、旭化成ホームズ側は冒頭のような姿勢を示したという。

 批判を受け、旭化成ホームズでは、車内広告とYouTubeのTrueView広告(動画広告)を、当初の終了予定であった7月末より早めて中止している。同社へは一般視聴者からもメールや電話で数件の抗議があったというが、広告を中止した最も大きな理由の1つは、竹信教授の活動に支障が出ることを懸念したからだという。

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小川たまか [編集・ライター/プレスラボ取締役]

1980年生まれ。立教大学大学院文学研究科卒。大学院在学中からライター活動を開始。 フリーランスとして活動後、2008年から株式会社プレスラボ取締役。「日経トレンディネット」「サイゾー」などで執筆。


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