では、「東大卒医師が教える科学的株投資術」で紹介したPiotroskiのF-scoreはどうでしょうか?F-scoreとは、Piotroskiが2000年に発表した、ROA、ROAの変化率、営業キャッシュフロー、アクルーアル、売上高総利益率の変化、総資産回転率の変化、長期負債平均総資産率の変化、流動比率の変化などを組み合わせた指標です。
では、「東大卒医師が教える科学的株投資術」で紹介したPiotroskiのF-scoreはどうでしょうか?F-scoreとは、Piotroskiが2000年に発表した、ROA、ROAの変化率、営業キャッシュフロー、アクルーアル、売上高総利益率の変化、総資産回転率の変化、長期負債平均総資産率の変化、流動比率の変化などを組み合わせた指標です。
しかし、アナリストやファンドマネージャーを徹底的にコケにしているのは、少し頂けないです。マルキール教授はわかっているとは思うのですが、ファンドマネージャーの実力は偶然以上にあることは科学的な検証で実証されています。しかし、あまりに微々たるものなので、これを個人投資家が利用できるかと言うと、難しいと思います。
ならば、オプション取引をしようではありませんか?ファンダメンタル分析で自信のある銘柄が見つかれば、「LEAPS callの買い」、堅実にキャッシュをコツコツと稼ごうと思えば、「CSP & CCW」です。現時点では、この結論に揺るぎはありません。
「超・株式投資」とは、 株式投資がいかに不利なゲームかであるかを説明し、それを「超える」戦略(つまり、オプション)を紹介するものです。
本にも書きましたが、個人投資家の間で人気があり、学者を馬鹿にしていたグリーンブラットのMagic formulaは、バックテスト・マジックであることはほぼ確実です。
バックテスト・マジックとは、過去のデータからたまたま成績が良かったファクターの組み合わせを見つけて、それが将来も有効であると他人を信じさせることです。自分もそれを本当に信じているとしたら、罪は軽いですが、自分の馬鹿の証明です。
また、かつて他人のデータ捏造を激しく批判していたハウゲン自身の70ファクター・モデルのパフォーマンスも捏造されていることは間違いがありません。この世界では、捏造が日常茶飯時に行われているようです。
結局、
- 優れたファンドマネージャーはほとんどいない
- 機械的投資法は、バックテスト・マジックに過ぎない
- 小型株効果、バリュー株効果の有効性
- カバード・コール(CCW)および現金確保プット売り(CSP)の有効性
例えば,2008年の時点で,Lipperで過去10年間のパフォーマンスで「小型バリュー」の部門で最優秀ファンドに認定されたSchneider Small Cap Value (SCMVX)の当時のリターンは下記の通りです。IWN(小型バリュー株ETF)と比べても圧倒的にいいリターンです(だから最優秀に選ばれました)。さすが、プロです。
しかし、その後のリターンは下記の通りです。
ほとんどの投資信託はこれと同じような結果になります。コイン投げ大会では、誰かが必ず1位になります。しかしそのチャンピオンが次の大会でもチャンピオンになる確率は他の参加者と同じです。
「投資の勉強」は全く必要がないということです。勉強するとしたら、オプションを含めた「投資の原理」を知ることです。「投資の勉強」が必要だと言っているのは、それで自分たちが儲かる証券会社や業界の人たちと、たまたま儲かった一部の個人投資家だけです。今度出る私の本でそのことは書いたつもりです。
FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)は、米国(法)人による海外の金融機関を利用した租税回避を阻止するため、米国街の金融機関(FFI)に、顧客口座の米国(法)人への該非確認や該当した場合、米国内国歳入庁(IRS)への報告義務を課す米国税法ですが、「所得に対する租税に関する二重課税の阻止及び脱税のためのアメリカ合衆国政府と日本国政府との間の条約」により、すべての本邦内金融機関がFATCAを遵守することが求められ、遵守しない場合、懲罰的な課税が課せられます。残高5万ドル以下の低額口座は免除、100万ドル以上の高額口座は所定の追加書類の徴収などが必要になります。
具体的なタイムラインは、2014年に氏名、住所、米国納税者番号(TIN)、口座番号、実質的米国保有者氏名(法人)、口座残高(価値)、米国源泉FDAP所得支払額、2015年にそれらに加え、歴年中の口座への支払い総額(利息、配当など)、2016年にはさらに、売却・償還額、2017年にはさらに米国源泉の利子、配当金を含む資産の売却額、償還額が報告されます。
相互主義に基づき米国の金融機関もこれを遵守することが求められ、IB証券もこれに従うと述べています。日本の当局が米国金融機関に同等のことをすぐに要求するかどうかは知りませんが、要求されれば報告されます。特に100万ドル以上の高額口座の方はご注意を。
今の考えと違うところは割愛し、中身の順番を少し変えました。それ以外は手を加えていません。
KDP( Kindle ダイレクト・パブリッシング)は非常に簡単にできます。原稿さえあれば、20分ぐらいでできます。便利な時代になったものです。
エビデンスに基づく株式投資(EBI)のすすめ (Kindle版)
よろしくお願いします。
米国の個人投資家(セミ・プロ?)が意見を述べるサイトとして、Seeking alpha は有名です。レベルは、我が国の同様のサイトに比べて、はるかに高いです。市場に「非効率的」な部分があるとしたら、やはり小型株でしょう。しかし、小型株に投資するとしたら、それなりの専門的な知識が必要です。私にその知識があるとすれば、ヘルスケア・バイオ関係だけです。バイオ関係の会社はほとんど赤字ですから、PERなどの単純な指標で判断することはできません。
BioToday、MEDICINE BLOGというサイトでは、開発中の医薬品の効果、副作用などについての論文や学会発表を、一部だけですが、見ることができます。それらの医薬品を開発している会社の大部分は、聞いたこともない小さな会社です。一般の方が論文を入手するには、それだけで1本30ドルぐらいかかります。本格的に、ファンダメンタル分析をする場合は、これらの論文を入手して読む必要があるでしょう。この作業は、ふつうの「週末投資家」には、時間的に、能力的、あるいは金銭的にも、とてもできません。もちろん、これらを全部読んだとしても、ファンダメンタル分析ができるというわけではありません。必要条件であり、十分条件ではありません。
トランスレーショナルリサーチの展開により、新規抗体医薬品・分子標的治療薬が次から次へと上市されて、今や、実にfruitfulな時代を迎えようとしています。 それで、ファンダメンタル分析をする能力も、時間もない「週末投資家」の私は、主に、ETFのIBBに投資しています。これはNasdaqに上場している、バイオ企業(およびジェネリック会社)に広く分散されていて、週末投資家が投資するのには、とてもいいと思います。どのバイオ企業がブレイクするかわからないから全部買うということです。「分散は無知と知れ」と言う人がいますが、そういうことを言う人こそ、無知か、馬鹿です。
「まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」も、少し読みにくいですが、いい本です。
株式投資と数学は切っても切れない関係ですが、興味のある方には、「天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話」がお勧めです。タイトルが似ていますが、凡庸な数学者が自らの恥ずかしい経験談を述べただけの「天才数学者、株にハマる 数字オンチのための投資の考え方」と間違えないようにしてください。カスタマーレビューを読めば、カスタマーの質がいかに低く、そのレビューはあまり当てにならないかがわかります。
最後に、Vanguardのボーグルが書いた、「波瀾の時代の幸福論 マネー、ビジネス、人生の『足る』を知る」を読んで、心を洗ってください。これも絶版なので、「Enough: True Measures of Money, Business, and Life 」のkindle版がいいと思います。カスタマーの評価は、nが少ないときは、とくに当てにならないので、こちらを見てください。
Saxagliptin (Onglyza)は、2009年にFDAが糖尿病薬承認の条件に、アウトカム試験を要求するようになってから初めてFDAに承認された薬です。アウトカム試験とは、実際に心筋梗塞やそれにより死亡を減らせるかどうかを実証する試験です。Zetiaのところでも強調しましたが、薬の目指す所は、データの改善ではなく、アウトカムの改善です。
当然ながら、DPP-4阻害剤はどれもほぼ同じ作用機序なので、差別化が難しいのですが、saxagliptin (Onglyza)は、承認後のアウトカム試験がsitagliptin (Januvia)より進んでいました。先週聞いた、Onglyzaの説明会でもそのことが強調されていました。そして、SAVOR-TIMI-53というPhase 4(販売後)の治験の結果がセールス・ポイントになると期待されていました。しかし、先週、衝撃的な結果が出ました。その治験で、saxagliptin (Onglyza)は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞の複合エンドポイントで、placeboと比較して差を出せませんでした。
9月の European Society of Cardiology (ESC) 2013 Congressで詳細が発表されるので、確認したいと思います。Zetiaの二の舞にならないことを期待しています。
執筆には8か月かかりましたが、編集者とのキャッチ・ボールでした。私一人で書き終えるより、読みやすい本ができたと思っています。
サルでも儲かる相場になりつつあるので、カバード・コールの本の出版は、タイミング的には最適ではありません。こういう時は雨後の筍のように、駄本が次から次へと出版されるので、良書が埋もれてしまう懸念がありますが、よろしくお願いします。
発売になったら、またお知らせします。
(A) PERとリターンとの相関(米国株)
PERは、PER=株価/EPS(1株当たり純利益)で計算します。EPS(1株当たり純利益)として前期実績、今期予想、来期予想を用いた場合、それぞれ実績PER、今期予想PER、来期予想PERと表現します。
上のグラフは、米国市場において、1951年から1996年までの各年において、PERが低い順に銘柄をクラス分けし(1が最も低く、10が最も高い)、1年後のリターンを全銘柄の平均と比較することを45回繰り返すことにより、PERの高低による平均リターン(対全銘柄)を計算したものです。
日本企業では、米国企業と比べて、会計上減価償却費が多く計上されています。減価償却費は損益計算書に計上されるだけで、実際の現金支出は行われていないので、「隠れ利益」とみなすことも出来ます。さらに、発生主義会計に基づいた純利益や営業利益は、利益がいつ発生したか企業の裁量により操作可能ですので、会計操作の影響を受けにくい営業キャッシュフローから計算したPCFRのほうが株価と収益の割合の実態をよりよく反映していると思われます。
論文やレポートによっては、営業キャッシュフローを「純利益+減価償却」で代用している場合があります。この他に、CF(キャッシュフロー)=実績税引後利益+実績減価償却費+(流動資産の変化-現金と現金等価物の変化)-(流動負債の変化-流動負債に含まれる債務の変化-所得税支払額の変化)で計算する場合や、CF=純利益+減価償却費+配当―役員賞与としている場合などがあります。
上のグラフは、米国市場において、1951年から1996年までの各年において、PCFRが低い順に銘柄をクラス分けし(1が最も低く、10が最も高い)、1年後のリターンを全銘柄の平均と比較することを45回繰り返すことにより、PCFRの高低による平均リターン(対全銘柄)を計算したもの。時価総額150百万ドル以上の企業が対象(「What Works on Wall Street」 James P. O'Shaughnessyより改変)。
(C) PERとリターンの年次にわたる相関(米国株)
上のグラフは、ニューヨーク証券取引所とアメリカン証券取引所に上場されているすべての企業をPERで10のグループにランク分けし、1968年から1990年までの株式パフォーマンスを調べ、5年間ポートフォリオを保有するとして分析したもの。PERは、1が最も高く、10が最も低い(Lakonishok、Shleifer、Vishny)。
(D) PERとリターンとの相関(日本株)
株式のパフォーマンスを調べる場合、ごく一部の銘柄の急騰により平均値(mean)が上方にバイアスがかかることが多く、平均値(mean)より中央値(medain)のほうが「実態」をよく表していることが多いので、両者を併記した。PERとリターンとのみごとな逆相関に注意。
上のグラフは、東証一部に上場されている企業(金融を除く)をPBRで5つのグループにランク分けし、1995年から2002年までの月間パフォーマンスを測定し、年率に換算したもの。PBRは、1が最も低く、5が最も高い(AMSUS)。低PBR(1のクラス)においてさえ、リターンのMedianはマイナスであることに注意。
(F) PER・PBRとリターンとの相関(日本株)
- 各種バリュー系ファクター(PER、PCFR、PBR、EV/EBITDA)は銘柄選択をする上で非常に有効なファクターであリ、これらのファクターの有効性は長期間持続する。
- PER、PCFR、EV/EBITDAは実績値より予想値を用いたほうが、リターンが向上する。
- PERは今期予想、来期予想EPSが簡単に入手できる点で最も使いやすいファクターである。業種内のPERもある程度参考になるが、機械的スクリーニングをした場合の業種の偏りを防ぐという意味が強い。
- PCFRはバリュー系ファクターの中でも最も安定的(銘柄の当たりはずれが少ない)である。
- PBRも有効なファクターであるが、あまり安定的でないので、やや使いにくい。PERなどとの収益のバリューとの組み合わせで有効性が向上する。
- セクター別に見ても、個別銘柄で見ても、成長率の高さは必ずしも高い株価リターンを意味しない。
1. EBIとは何か
「EBI (Evidence-Based Investment)は、信頼できる科学的な根拠に基づいて、銘柄を選択する方法です。具体的には、各種ファクター(PERなど)とリターンとの関係を解析し、それにより得られたEvidence をもとに、銘柄を選択します。
行動ファイナンスの学問が示すように、人間は常に間違えつづけ、訓練や練習で容易に修正できない行動パターンを取ります。その結果、以下に示すようなアノマリーは、過去においても、現在も、そしておそらく将来も、存在しつづけるのです。
これらのアノマリーの理由は、行動ファイナンスにより説明されますが、このHPではごく一部を紹介するに止めます(詳しくは、行動ファイナンスの教科書をご覧ください)。
当然のことながら、「低PER銘柄のリターンはいい」という統計学的事実は、因果関係ではなく、相関関係です。相関関係と因果関係とは異なるものです。一つの論文での結論は、その調査が行われた市場・時期で存在した関連を示すもので、この相関関係が他の市場・時期に広く通用することを保証するものではありません。従って、ある市場・時期だけに特有な相関関係はなるべく排除すべきで、多くの市場・時期において見出される普遍的な相関関係ほど、質の高いEvidenceです。
ある命題が真実である可能性が高いか否かを調べる検証方法にはいろいろありますが、ここで示されているEvidence は過去の長期間にわたるデータを解析した、後ろ向きコホート・スタディ(註)に近い研究デザインで得られたものです。
|
今期予想PER |
PBR |
今期予想PCFR |
配当利回り |
今期予想EV/EBITDA |
有利子負債/今期予想EBITDA |
今期予想ROE |
平均 |
16.7 |
17.2 |
19.9 |
19.4 |
12.8 |
-3.4 |
-5.7 |
標準偏差 |
9.8 |
13.9 |
11.9 |
16.5 |
11.5 |
17.6 |
14.2 |
平均/標準偏差 |
1.70 |
1.24 |
1.68 |
1.18 |
1.13 |
-0.19 |
-0.41 |
各ファクターで東証1部銘柄を5つのグループに分けて、その最上位(割安、財務良好、高ROE)グループと最下位(割高、財務不良、低ROE)グループの月次リターンのスプレッドを年率換算したもの(%)。予想PCFR=時価総額/(今期予想税引後利益+前期減価償却費)。今期予想EV/EBITDA=(時価総額+有利子負債―手元流動性)/(今期予想営業利益+前期減価償却費)。ただし、手元流動性=現金・預金+一時保有有価証券(流動資産に計上されているもの)。今期予想ROE=今期予想税引後利益/前期株主資本。1985―2004年。(三宅一弘、大和総研レポート、2004年9月9日)
(註)後ろ向きコホート・スタディ・・・疫学の研究デザインの一つ。 すでに曝露がおこってしまった後で、研究者が事後的に(後ろ向きに)その状況を調べ、さらにその集団を追跡調査することで、疾病の発生を確認する方法。事故によって高濃度の化学物質や放射線などにさらされた産業労働者の曝露状況を事後的に調べ、その集団のがん発生を追跡調査によって明らかにする場合などに、この研究方法が用いられる。結果の信頼性は、無作為割付臨床試験が最も高く、コホート研究がそれに次ぎ、症例対照研究、地域相関研究、断面研究の信頼性は相対的に低い。
2.バリュー・マーカーの有効性について
- 低PER、低PCFR、低PBRの平均リターンは、いずれもインデックスのリターンを上回る
- PERとPBRは、独立したファクターである
PCFR=株価/1株当たり営業キャッシュ・フロー
PBR=株価/1株当たりの純資産
これらのバリュー系ファクターの有効性については、多数の学術的な研究があり、米国市場、日本市場など多くの国の市場において、何十年にもわたる分析により実証されています。
PERとPBRは独立したファクターなので、片方だけが低い銘柄より、両方とも低い銘柄のほうが、リターンはよくなります。日本株の検証では、以下のことが実証されています。
低PER・低PBR>低PER・高PBR>高PER・低PBR>高PER・高PBR
(PER、PBR別に上位20%および下位20%のクラスについて検証したもの。赤字は平均値、中央値ともにインデックスを上回る。緑字は平均値はインデックスを上回るが、中央値はインデックス以下。青字は平均値、中央値ともにインデックス以下)
バリュー株のリターンの良さはしばしばバリュー株のリスクの高さで説明されますが、バリュー株がグロース株より変動性が大きいという証拠はありません。また、ベータのような市場の動きに対する感応度に関しては、バリュー株がグロース株よりベータが大きいという証拠もありません。下降相場、景気後退期においてもバリュー株はグロース株より株価の下落が少ないことが実証されています。
長期間(ふつう10年以上の期間)ファクターの有効性を調べてみると、グロースのファクター(成長性の指標)が優位な時期もあることがわかります。このグロース期間では、ROE、ROA、売上高成長率などの成長性の指標の有効性が比較的高く、またPER、PCFRなどのフロー系バリューファクターも有効で、これらのファクターはいずれも特に中小型株では顕著です。
一方、バリュー期間では、配当利回りや自己資本率などのストック系バリューファクターが有効になりますが、EV/EBITDAも有効です。PER、PCFRもグロース期間ほどではありませんが、安定的に有効です。
さらに詳しく見ると、PCFRは景気の山に近い局面とその後でやや有効性が低下します。設備投資が多い景気敏感株は、利益と比較してキャッシュフローが多く、低PCFRとなりますが、景気の絶頂では、まさにそのような企業の株価もピークを迎えます。
PBRは従来景気後退期には資産価値(解散価値)に関心が高まるので、従来株価の下支えになると言われてきましたが、1997年の金融不安の時期には、低PBR銘柄も売り込まれました。これは簿価上の資産評価額の信頼性が低かったことが背景にあり、その後金融資産の時価会計の導入や実物資産の減損会計の強制適用などにより資産の帳簿価格の信頼性は高まっているので、今後は、景気後退期に株価の下支えになる、つまり景気後退期にはPBRの有効性が高まるものと期待されます。
経年変化で、ガスコンロの故障、水栓金具の交換、エアコンの入れ替えなど、所有者が手配し、管理しなければいけないことが多くなり、昼間仕事をしている私には、面倒だった。もちろん、お金さえ払えば、不動産屋さんが代行してくれるが、それは馬鹿らしく思えた。また、賃貸人が退室時には、最初のころは、敷金で壁紙などの張替などができ、家主の出費は0で済んだが、やがて慣行が変わり、経年劣化の場合は家主の負担でしなければならなくなり、退室のたびに出費するようになった。
結局、不動産を所有することにメリットはないと判断し、売ることにした。ふつうは、仲介で売却するが、私は半年、1年も待つのが嫌だったので、不動産会社に直接2000万円で売却した。18年間所有していたことになる。結果として、この不動産投資が金銭的には失敗だったことは、検証するまでもない。不動産投資したいなら、よほどの暇人で資産家でない限り、REITに投資したほうがいいだろう。
ちなみに、そのマンションは、不動産会社が内装のリフォームをした後、2800万円で売りに出し、2か月ぐらいで売れたようだ。
地価の狂乱的な上昇は止まり、下がり始めていたが、多くの識者はこれは一時的な調整で、しばらくすればまた上昇するだろうと話していた。 ちょうどその頃、ある人から電話がかかってきた。ある製品を作っている中小企業の社長から、私が所有しているマンションを譲ってくれと頼まれているという話だった。私は、相手を本当に信じていいのか、騙されるのではないかという気持ちが少しあったし、私も地価がこれから下がるとは予想していなかったので、この話はあまり乗り気ではなかったが、とにかく一度会いたいということなので、会うことにした。私は、まだ20代の若造だったので、少しでも相手になめられないようにと思い、バイトで行っていた銀行で会うことにした。私のバックには銀行がついているから、私を騙すことはできないということを暗に示したかったのだ。
中小企業の社長は実母を私のマンションに住ませたいということだった。私のマンションを選んだ理由は、母は足が悪いので、火事など万が一の時にも階段で降りることができる2階の部屋を探していたとのことだった。相手は9000万円の金額を提示してきた。6800万円で買ったので、税金やローンの利息など諸経費を考えても、損はしない金額だった。今、マンションを借りている人との契約更新まで4ヶ月あった。社長は、その間の家賃を全部肩代わりするので、契約は更改しないと、借主を説得してほしいいうことだった。家賃の滞納が続いていたので、ちょうどいい契機かもしれないとも思った。 そこで、その話を借主にしたところ、意外にもその提案には乗らなかった。借主は、今後家賃はきちんと払うので契約は更新したいと言った。借主がそういう以上、契約を更新しないことは困難だと、当時の私は思った。弁護士に相談すれば、スムーズに引き渡せたかもしれなかったが、私は東大に戻っていて(東大のすぐそばの賃貸マンションに住んでいた)、忙しかったので、この件であまりもめたくなかった。
私は、現状維持を選んだ。売るのをやめて、今住んでいる人との契約を更新することにした。ただし、家賃の支払いが1ヶ月も遅れている状態が続いていたので、賃貸契約を公正証書で行うことを条件にした。相手は、その条件を了承したので、彼と私で公証人役場に行って、公正証書を作った。その時借主にはじめて会ったのだが、40代の、外見はふつうのサラリーマンという感じの人だった。公正証書で賃貸契約を更改したにもかかわらず、家賃の滞納はまったく改善されなかった。1ヶ月家賃の支払いが遅れて、電話をしても、相変わらずの対応だったので、私は次の手段に出た。
まず、配達証明・内容証明郵便を送り、家賃支払いの催促をしたという証拠を作った。それでも、家賃は支払われなかったので、公証役場に電話をして、強制執行をすることにした。借主(私が貸しているマンションとは別の所に住んでいた)の家に執行官は行き、家財道具を差し押さえた。すぐに借主の奥さんから電話がかかってきた。「主人が会社を作って、マンションを借りていることはまったく知らなかった。しかも、そのマンションには愛人を囲っていたこともはじめて知った。それで主人と離婚をした。差し押さえられた家財道具は、私のものなので、差し押さえはやめてほしい」と懇願された。私は、「離婚した証拠を見せてくれれば、差し押さえは解除する」と言った。やがて離婚したことを示す戸籍謄本が送られてきた。偽装離婚の可能性も考えたが、これ以上深入りしたくなかったので、私は差し押さえを解除した。私が貸していたマンションに行くと、もぬけの殻だった。敷金2か月分があったので、金銭的な被害は最小限で済んだ。
続きはまた次回。
このブログを読んでいる人たちの中には、不動産投資にも関心がある方がいると思うので、私の不動産投資に関する考えを書こう。
結論を先に言えば、金融資産が数億円程度のサラリーマンには、不動産投資をまったく勧めない。理由は、私のたった1回の経験からだ。不動産は資産規模が、株式と違って大きいので、失敗は許されない。
自分に人的価値があれば、自分のためにも、社会のためにも、不動産投資などせず、まっとうな仕事をしよう。あるいは、金融資産が十億円以下の投資家の場合、オプション取引のほうがはるかにいいと断言できる。
私は最初から不動産投資をしようと思っていたのではない。東大を卒業した頃は、世の中はバブルの頂点に向かって突き進んでいた頃だ。もちろん、当時はいつ頂点が来るか知る由もなかったし、そもそも頂点があるとは、誰も思っていなかった。マスコミや評論家、証券会社のリサーチなどでも、地価はこの先も上がり続けるという論調ばかりで、「これはバブルだ。近いうちに弾ける」と言っていた人も、探せばいたと思うが、当時は「これからも地価は上がり続ける」という論調にかき消されていた。
経済や投資についての知識がまったくなかった私は、「今、マンションを買わなければ、この先、永遠に買えなくなってしまう」と愚かにも思った。仕事は、当分の間、東大でするつもりだった。大学での仕事が終わるのはだいたい午前0時過ぎなので、東大から電車で1時間20分の所にある自宅から通うのは難しい。それで、私は東大の近くに分譲マンションを探した。賃貸という考えもあったが、マンションの値段が毎年どんどん上がっている現状では、資産として、今マンションを買ったほうがいいだろうという、漠然とした「投資勘」があったということだろう。結果として、それは間違いだった。
東大のすぐ近くは地価がとても高くて手が出なかったが、東大から車で北または東に10分も走れば、地価は半値ぐらいになる。私は、そこにある新築マンションを買った。その付近は、狂乱地価で町工場などが取り壊され、他にも新しいマンションが建ちつつあった。私が買ったマンションは、準工業地域にあったことと、一部転借権が付いていたため近隣の相場より2割ぐらい安く思えたので、私は6800万円で買った。70平米の2LDKだ。当時、私はアルバイトで週2回、ある銀行に行っていたが、その銀行が好条件で(店頭金利よりは低金利で)、ほぼ全額を貸してくれた。
私はそこに住み、そこから東大に通った。しかし、その数年後に、医局の人事で、都内の東大系列の病院に勤務することになった。その病院での勤務は比較的楽で、重症患者がいない限り、午後7時か8時には、仕事が終わった。もともとの私の自宅は、その病院から1時間ちょっとのところにあったので、そこから十分に通勤できる。私はマンションのローンを抱えていたので、買ったマンションを人に貸して、ローン返済の足しにしようと思った。
地元の不動産屋さんに賃貸の仲介を依頼したら、すぐに借り手が見つかった。○○というゴルフ会員権を売買している、いかにもバブル全盛期らしい社員2人の会社が「寮」として借りてくれた。賃料は、管理費などを除いて、月24万円だ。これが相場だったが、表面利回りは3.5%に過ぎない。購入に要した諸費用やローンの金利を考慮に入れれば、実質利回りはこれより大分低い。もちろん、ローンの返済に大いに助けにはなったが。
やがて、バブルが弾けた・・・。続きは、次回。
私の昔のホームページにも書いたことですが、最初に出した「シーゲル博士の株式長期投資のすすめ」では、S&P500などに連動したETF(または投資信託)を薦めていました。しかし、次に出した「株式投資の未来」では「高配当戦略」を薦めています。それはいいとして、この本には、いくつかの気になる記述があります。
第一は、株式投資では禁句の「たら、れば」を連発している点です。例えば、「ブリストル・マイヤーズ・スクイブとシェリング・プラウの株価は、2003年末現在、3~4年前のピークに比べて4分の3近く下落している。主要薬の特許切れが相次いだからだ。株価を維持していれば、この2社はフィリップ・モリスにつぐ第2位と第3位になっていたはずだ」(「赤本」のp45)、「1957年から1960年前半にIBMが飛びぬけた成績を残していなければ、(ハイテクセクターの株価リターンは)平均を下回っていただろう」(同p62)など、随所にこのような記述が見られます。第二に、第5部の「高齢化をめぐる危機と世界経済の力学のシフト」に見られるように、あまりに大胆に未来を予測しています。
全体としては、この本は他の人が書いた本に比べると、はるかにいい本なので、上記の点は残念です。
ところで、WisdomTreeは Jeremy J. Siegel がアドバイザーとなって設立された運用会社ですが、2006年に彼の「高配当戦略」に基づくETFを販売しました。米国では彼がテレビ・コマーシャルにも出ていて、販売に力を入れているようです。同社は規模(大型・中型・小型)や地域などで分けられた多くのETFを作っていますが、その中のひとつにWisdomTree Dividend Top 100 Fund(DTN)がありました。
2007年6月時点での金融(Financial)株の割合が30%を越えていてリーマン・ショックの時に、金融株のリターンがあまりに悪くなったので、このETFから金融株を除外して、WisdomTree Dividend ex-Financials Fund と名前を変えたのには、驚きました。銘柄選択基準もかなり変わり、全く違うETFになってしましたが、なぜかTickerはそのままです。途中からルールを変えることは、ふつうの感覚だとご法度ですが、ETFの世界では、そうでもないらしいです。
もう一つの、高(好)配当ETFに、iShares Dow Jones Select Dividend Index (DVY)があります。これは、日本の証券会社でも買うことが出来ます。これは、Dow Jones U.S. Indexを構成する銘柄から、当年の配当利回りが過去5年間の配当利回りの平均と同じか上回ること、payout ratioが60%以下であること、3ヶ月の最小平均取引高が1日200,000株以上である基準を満たす最も高配当な株式100銘柄で作成されています。2007年7月の時点で、金融(Financial)株の割合は27%でしたが、現在は10%になっています(未確認ですが、銘柄選択基準は変わっていないと思います)。
この両者とも、ここ2年のリターンを見ればわかるように、リーマン・ショックがなければ、もっとよいパフォーマンスををあげられた可能性が高いだけに、残念です。おっと、私も「たら、れば」を使ってしまいました。
まあ、寿命が200年ぐらいあれば、これらを含めてインデックス投資もいいと思いますが、数年のスパンで見た場合は、必ずしも高いリターンは望めないように思われます。
これで、抗凝固系は、JNJのXarelto(rivaroxaban)、ベーリンガー(非上場)のPradaxa(dabigatran)、と役者がそろった。一方、第一三共のLixiana(edoxaban)は、Afの患者が対象のRCTの結果は来年にずれ込むようだ。
さて、Pradaxa(dabigatran)は、治験(RE-LY)では、日本人患者も数多く組みいられたため、日本でも、米国に遅れること僅か数ヶ月で、承認された。欧米より承認が5年から10年遅れることが珍しくない日本で、これは画期的なことだった。しかし、その後、製造販売者(日本ベーリンガーインゲルハイム)によると、2011年3月14日から8月11日で、5人の死亡例を含め、81人の重篤な出血性の副作用例が報告されている(発売以降の推定使用患者数:6万4000人)とのことだ。それで、(おそらく厚労省の指導を受けて)添付文書に「警告」欄を設け、投与中は出血や貧血などの徴候を十分に観察することや、腎臓を介して排泄されるため、適宜、腎機能検査を行うことなどを注意喚起した。
変なことを言う人は、どこの世界にも必ずいる。この件に関しても、「ドラッグ・ラグは、欧米で多くの患者に使用されて、有害事象が明らかになってから日本に入ることので、むしろ好ましいことだ」と言う専門家がいる。確かに、中には、その後の検討で、全体として、有害事象>便益となる薬があるかもしれない。しかし、そのような例は、きわめて稀だ。薬には副作用や合併症はつき物だ。しかし、それ以上に薬の恩恵を受ける患者がいることを忘れてはいけない。稀な例をことさら取り上げて、全体の利益を考えない発言をする人には、疑問を呈さざるを得ない。