東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷などの容疑で告訴・告発され、東京地検が不起訴処分とした東電の勝俣恒久元会長(74)ら事故当時の経営陣3人について、東京第5検察審査会は31日までに、刑事責任を問うべきだとして「起訴相当」と議決した。議決を受けて地検は再捜査に入り、原則3カ月以内に改めて起訴するかどうか判断する。議決は23日付。
再び不起訴となっても、検察審の再審査で改めて「起訴議決」が出れば、検察官役の指定弁護士が強制起訴する。その場合、未曽有の原発事故の刑事責任が法廷で問われることになる。
ほかに起訴相当とされたのは、武藤栄元副社長(64)と武黒一郎元フェロー(68)。小森明生元常務(61)は「不起訴不当」とされた。
検察審は議決理由で「大きな津波が来れば炉心損壊に至る危険性を東電は認識できた。原発事業者として津波や地震が襲来することを想定して対策をとることが必要だった」と指摘した。
その上で「安全に対するリスクが示されても、実際には発生しないだろう、原発は大丈夫だろうという曖昧模糊(もこ)とした雰囲気があったのではないか」とし、「事業者や規制当局の態度は一般常識からずれていると言わざるを得ない」と批判した。
事故を巡っては、福島県の被災者らでつくる「福島原発告訴団」や市民団体が、勝俣元会長や菅直人元首相ら計42人と法人としての東電を、業務上過失致死傷や原子炉等規制法違反などの容疑で告訴・告発した。
東京地検は2013年9月、津波による電源喪失が事故原因と認定する一方、東日本大震災と同規模の地震や津波を「具体的に予測するのは困難」と判断。対策工事をしていても「震災までに完了して事故を防げたかは疑義が残る」として、全員を不起訴処分とした。
これに対し告訴団は13年10月、不服として検察審に審査を申し立てた。審査対象は勝俣元会長ら旧経営陣のうち6人に限定し、容疑も業務上過失致死傷に絞った。
東京電力の話 議決についてはコメントを差し控えるが、要請があれば捜査に真摯に対応する。
中原亮一東京地検次席検事の話 議決内容を十分に検討し、適切に対処したい。
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