ダイオウグソクムシって、口臭がキツいって知ってた?
Update : 2013.05.05
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グソクムシはスナホリムシ科に属す節足動物で、7対の足を持つダンゴムシのような生き物だ。磯や防波堤で見かけるフナムシはフナムシ科なので同種ではないが、遠縁の親せきと言ったところだ。鎧(よろい)をほうふつさせる風ぼうから「具足(ぐそく)」の名がつけられ、貪欲(どんよく)でおよそ何でも食べるが、主食は海底に落ちてくるヒトデや魚の死骸(しがい)で、バクテリアと同様に生態系の「分解者」の役割を果たす。
日本近海に生息するオオグソクムシは体長10~15cmほどで、水深600m程度のところに生息している。網にかかることもあるが、食用として扱われていないため漁師にとっては望まれざる客として扱われている。
戦隊ヒーローの敵キャラのような顔立ちにふさわしく、鋭利な歯を隠し持つ。フナムシでさえ噛まれると結構痛いので、オオグソクムシならかなりの痛手を負うことになりそうだが、ピンチになるとなぜか口から放つ悪臭液で敵を撃退するという。歯を使わずに口臭で戦うのは平和主義者か腰抜けか。見た目から想像できない戦いっぷりは、ゆるキャラに属すべき存在だ。
大西洋に生息するダイオウグソクムシは、水深2,000mほどのさらに深い海底に生息している。性質はオオグソクムシと変わらないものの(つまり、ピンチになると口から悪臭液を放つ)、体長50cm、重さ1kgと、2倍ほどに巨大なのが特徴だ。
最大記録の76cm/1.7kgはチワワぐらいの大きさだから、ムシと呼ぶにはデカ過ぎる。もし陸上を歩けるなら、リードにつないで散歩に出れば注目度は計り知れない。ただし集まった子供やほかのペットにケガをさせないよう、鋭い歯には厳重な注意が必要だ。
体長20mにも及ぶダイオウイカに代表されるように、深海生物は巨大化する傾向がある。これは乏しい栄養源と過酷な生存競争を勝ち抜くためと考えられているが、正確なメカニズムは不明で、いまでも全貌は解明されていない。鳥羽水族館のダイオウグソクムシも謎だらけで、4年を超える絶食にどうして耐えられるのかも分かっていない。ムシの歩行メカニズムや鳥の翼の形などが機械工学に取り入れられるぐらいだから、ダイオウグソクムシがエサなしでも動き回れる仕組みが解明すれば、超・省エネへの応用が期待できるだろう。
■種馬気取りのオニアンコウ
深海魚の代名詞とも言えるアンコウ。その仲間のオニアンコウは、結婚を機に夫婦が合体し、変わった家庭を築く。
乏しいのはエサや光だけでなく、深海では出会いも少ない。そこでフェロモンを出して伴侶を探す。オニアンコウのカップルはアンバランスで、アンコウらしい風ぼうのメスに対し、オスは10分の1程度の小魚のような風ぼうなのだ。互いに気に入るとつがいとなるのだが、契りの儀式は極めて奇妙で、オスがガブリとかみついてメスの腹を食いちぎる。その後、口から酵素を出してメスと同化し、寄生虫のように余生を過ごすのだ。
一体化したあとのオスは、泳ぐこともエサをとることもできない。そこで代わりにメスが泳ぎ回ってエサを取り、せっせとオスに養分を届ける。なんともかいがいしい光景だ。
対してオスの役割は精子の提供のみ。種馬気取りかはたまたヒモか、双方同意なら口出しはしないが、はたから見ればダメ夫を養う苦労性のメスにしか見えず、ふびんでならない。
アメリカ海兵隊で、合言葉のように使われる言葉「センパー・ファイ(Semper Fi)」。生涯忠誠と訳されるのに対して、オニアンコウは「生涯一体」だから、海兵隊など目じゃない忠誠心だ。がんばれオニアンコウ。産めよ増やせよ。
■まとめ
仲むつまじい夫婦を「オシドリ夫婦」と呼ぶが、生物学的には全くのガセで、オシドリは毎年離婚と再婚を繰り返すドライな鳥だ。
生涯連れ添う様子なら「オニアンコウ夫婦」の方がふさわしい。ただし相手が理解できず、侮辱と受け止められる可能性が高いので、オニアンコウの知名度が上がるまで、ほめ言葉に使うのはやめておこう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
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