(英エコノミスト誌 2014年7月26日号)
中流家庭の親たちは、子供にもっと自由を与えるべきだ。
1693年に哲学者のジョン・ロックは、子供に「健康に良くない果物」を過度に与えるべきではないと警告した。それから3世紀が経った今も、子育てに関する間違った考えが蔓延している。多くの親は、絶えず見守っていないと我が子は死んでしまうと心配する。
米国では、法律も同じように偏執的だ。この7月、サウスカロライナ州でデブラ・ハレルさんが9歳の娘を監視なしで公園で遊ばせた罪で拘束された。携帯電話を持たされており、何も被害がなかった娘は、一時的に社会福祉当局に保護された。
先進国の子育ての苦悩
ハレルさんに対する厳しい処罰は、先進国の子育てに関する苦悩を反映している。大半の客観的な尺度で測ると、現代の親たちは前の世代よりもはるかに真面目だ。洗濯機や調理済み食品といった人手を省く機器や商品が登場したおかげで、1965年以降、米国の平均的なカップルは週8時間の労働から解放されたが、それより若干多い時間が子育てに吸い上げられた。
今の父親は、自分の父親よりもずっと子供に手をかけ、ワーキングマザーは1960年代の主婦よりも長い時間を育児に費やしている。こうした状況は双方にとって都合がいい。子供には愛情と刺激が必要だし、親にしても、子供に本を読んだり庭でボール遊びをしたりする方が皿洗いよりずっと充実感がある。
こうした図式には、階級に関わる2つの欠点が存在する。1つは下層階級に当てはまる。たとえ貧しい親が前より多くの時間を子供と一緒に過ごしたとしても、金持ちの親よりは時間が短い。また、貧しい親は特に大切な幼少期に子供をしっかり養うのに苦労する。
米国はこの点で立ち遅れている。米政府は学齢期の子供にはふんだんにカネをかけるが、生まれてから2~3歳までの幼児への支援は他の先進国よりずっと少ない。かつて本誌(英エコノミスト)が指摘したように、もし米国が幼児を抱える貧しい世帯にもっと援助を行えば、大きな利益をもたらすはずだ。
証明するのがそう簡単ではない2つ目の欠点は、所得水準の高い上層階級で起きていることで、それ以外の点では理性的な本誌の読者にも当てはまるかもしれない。高学歴で金持ちの親は、やり過ぎてしまう傾向があるのだ。
1950年代より今の方がずっと安全なのに・・・
安全もその1つだ。彼らは、常に見ていないと我が子は首の骨を折ったり、床に落ちたカップケーキを食べたりするかもしれないと心配する。
行き過ぎた習い事も、もう1つの兆候だ。彼らは、子供を中国語教室やバイオリンのレッスン、フェンシングの練習などに週6回送っていかなければ、理想の大学に入れないのではないかと不安がる。パロアルトやチェルシーの道路は、子供に習い事の梯子をさせる送り迎えのワンボックスカーで渋滞している。