インド:多言語国家で政権が進めるヒンディー語使用促進
毎日新聞 2014年07月30日 22時24分
【ニューデリー金子淳】5月に発足したヒンズー教至上主義政党・インド人民党政権が、ヒンディー語の使用を促進している。だが、インドは多言語社会で理解できない国民も多いうえ、ヒンディー語はヒンズー教に密接に結びついた言語のため、イスラム教徒や非ヒンディー語話者から反発が上がっている。
ヒンディー語は主に北インドで使用され、憲法で連邦公用語に指定されているが、母語とするのは約12億人の人口の半数以下にすぎない。このため29の州ごとに公用語があり、国会や政府機関では準公用語である英語を共通語として使う例が多い。
だが、地元メディアによると、内務省は5月下旬、政府機関の公的なツイッターなどのソーシャルメディアで、ヒンディー語を積極的に使うよう通達。
モディ首相自身も官僚との会議や外国要人との会談でヒンディー語を用いた。ヒンディー語はヒンズー教の聖典などに使われる古語サンスクリット語を起源とし、宗教色が強い。
モディ首相は強硬なヒンズー教至上主義者で知られており、ヒンディー語の活用はこうした思想を反映している可能性もある。
こうした中、イスラム教徒や南部など非ヒンディー語圏の政治家らは「不平等だ」と反発。ほかの地方言語の促進も求めるなど波紋が広がっている。イスラム教聖職者のナフィズ・アフマド・カシミ師(35)は「インドは単一言語の国ではない。モディ政権はヒンディー語を理解できない人々を無視している」と話した。