アメリカのヘッジファンドの多くが購読している地政学サイト、ストラトフォアは「ひょっとするとウクライナで形勢が悪くなっているロシアが、軍事作戦でアッと驚く巻き返しを図るかも」という意見を述べています。

ウクライナ情勢に関して、ここ数日の間にEUが米国に同調するかたちで経済制裁の強化を発表し、ウクライナ政府軍は東ウクライナの親ロシア分離主義者をドネツクとルハンスクという二つの都市に追い詰め、しかもその二つの都市の間の兵站の分断を狙う動きに出ており、さらにアメリカ政府はロシアが直接、東ウクライナの親ロシア分離主義者を軍事的に支援していることを強く非難するなど、プーチン大統領は守勢に回っています

ストラトフォアのジョージ・フリードマンは「ウクライナはロシアにとって重要な緩衝地帯の役割を果たしていたが、年初来の一連の展開でロシアはその足掛かりをほぼ失った」と主張しています。また経済制裁がじわじわ効いてきて、特に脆弱なロシアの銀行セクターは窮地に立たされているとしています。

ロシア国内でもプーチン大統領の今回の立ち回りに対して批判が聞かれるようになっており、プーチン大統領は「次の一手」をじっくりと考える必要が出てきました。

フリードマンの考えでは「プーチンは劣勢になっているというイメージを払しょくする必要があり、そのためには西側の経済制裁に対抗するロシアからの経済的な制裁という方法ではなく、軍事力による示威行為が必要になる。特にいま親ロシア分離主義者たちがウクライナ政府軍に包囲されているドネツクで、強烈な反撃を展開する必要がある」のだそうです。

一方、ウクライナならびに西側諸国の立場からすると、いまロシアがちょっとバランスを崩しているうちに、この歴史的なチャンスをモノにしたいという気持ちがあるとフリードマンは解説しています。

ロシアの市民はウクライナを重要な緩衝地帯だと感じており、プーチン大統領にはウクライナを失わないよう、もっと頑張ってほしいと願っています。

プーチンが権力の座についてはや14年が過ぎようとしているわけであり、いかに人気があるとはいえ、余り不首尾が目立つようだと「次」を考え始める可能性も排除できません。

その場合、プーチンの次にロシアのリーダーになる人間が、プーチンよりハト派である可能性は低いというのがフリードマンの考え方です。