・人が動くとき、すべてを脳が指令して、
　それを神経が伝えて筋肉を動かしているわけではない。
　なんとなく、そんなしくみでできているみたいに、
　思いこまされているかもしれないけれど、
　脳はちっとも万能じゃないし、
　脳のおよばない仕事はいくらでもある。

　自律神経系の活動だけでも、たくさんあって、
　いちいち脳からの指令を受けなくても
　心臓も動いているし、胃腸も活動しているし、
　ひとつひとつの内臓は、誰がなんと言ったからじゃなく、
　もくもくとじぶんの仕事をこなしている。
　
　さらに言えば、たとえば野球の選手たちが、
　打席に立って、投手の150キロの球を打つのに、
　脳への問い合わせだの、脳からの指令だのが
　どれくらいの働きをしているのかと思えば、
　そういうもんじゃないだろうなと想像する。
　たぶん、それじゃ間に合わないんじゃないのかな。
　サッカーのフィールドで、とっさに判断しながら
　プレイしている選手たちについても、
　脳がどれくらいの役割をしているのかと思う。
　
　脳がものすごく重要だということは言ってもいいけど、
　脳が万能みたいに思うのは、ちがうよねー。
　身体をじょうずに使うことだとか、
　手先が生み出していくような仕事だとか、
　くり返しの要素が多い仕事だとかについては、
　脳が関与している要素が相対的に少ないと思うんですよ。
　で、そういうことって、なんか、
　ちょっと下に見られてるっていう気がするんだよね。
　ここらへんのことを、ちゃんと整理することが、
　これからの時代の働き方やら、幸福について考えるとき、
　とても重要になってくると、ぼくは思っている。

　これ、比喩的に応用してみることもしたくなる。
　脳のことを、企業や組織の「本部」だと思って、
　身体の各部分を「現場」だというふうに考えるとかね。
　あきらかに「現場」のほうに「知性」が溜まってるんだ。
　そしてそれは、お客にはわかってるんだよね。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
脳も本部もなきゃ困る。でも、なきゃ困る程度が基本かも？