ロシア:第一次世界大戦開戦100年 愛国主義で復権傾向

毎日新聞 2014年07月30日 19時30分(最終更新 07月30日 21時59分)

ロシアのツァールスコエ・セローにできた第一次世界大戦を記念する博物館。軽機関銃を積んだ装甲自動車が展示されている=2014年7月28日、田中洋之撮影
ロシアのツァールスコエ・セローにできた第一次世界大戦を記念する博物館。軽機関銃を積んだ装甲自動車が展示されている=2014年7月28日、田中洋之撮影

 ロシアで第一次世界大戦の再評価が進んでいる。ソ連時代は、1917年の革命につながる触媒として位置付けられ、ナチスドイツに勝利した第二次大戦と比べ関心は低かった。だが、開戦100年の今年は初の記念博物館が建設されるなど盛り上がりを見せる。背景にはプーチン政権下での愛国主義の高まりがありそうだ。【ツァールスコエ・セロー(ロシア北西部)で田中洋之】

 「第一次大戦で示された英雄的精神を知ってもらうのが目的です」。ロシア皇帝の離宮があったサンクトペテルブルク南郊のツァールスコエ・セロー(ロシア語で皇帝の村)で、博物館や公園を管理する国立機関のイライダ・ボット副代表は、8月4日に開業する博物館の意義を強調した。

 博物館は元々、最後の皇帝ニコライ2世が大戦の戦利品などを展示するため建設を命じ、1917年に完成したが、革命で翌年閉鎖。その建物を修復して利用する。散逸していた資料など約2000点を展示。総費用は約3億5000万ルーブル(約10億円)で、プーチン大統領が全面支援したという。

 ロシアではナポレオンの侵攻を撃退した1812年の戦役を「祖国戦争」、第二次大戦(1939〜45年)を「大祖国戦争」と呼び、記念の行事や施設が多い。一方で第一次大戦は、直後の革命で帝政が崩壊し、ドイツとの単独講和で戦線を離脱した経緯から重視されてこなかった。

 ロシア軍事史協会のミハイル・ミャフコフ副会長は「革命、内戦など激動の時代が続き、第一次大戦の記憶は忘れられた。ソ連時代は帝国主義戦争として否定的な側面が強調された」と指摘する。だが、ソ連崩壊から20年以上が過ぎ、第一次大戦を肯定的に振り返る雰囲気が生まれているようだ。

 独ソ戦勝利を記念するモスクワの「戦勝公園」にも市民から寄せられた寄付金で第一次大戦の記念碑を建立、ロシアが参戦した8月1日に除幕する計画だ。

 ミャフコフ副会長によると、一連のウクライナ危機が、ロシアで第一次大戦への興味を高めているという。「特に帝政ロシア領だったウクライナ南部クリミアの編入は、20世紀初頭と現在のロシアがつながっていることを再認識させた」と話す。

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