日本の電子産業の衰退に歯止めがかからない。自動車と並ぶ外貨の稼ぎ頭だった電子産業は、2013年に貿易収支がとうとう赤字になった。同じ2013年の国内生産金額は、約11兆円にまで縮小した。2000年に達成したピークの約26兆円の半分以下である。日本の経済成長を支えてきた電子産業は、なぜ、ここまでの事態に陥ったのか。電子立国の再興に光はあるのか。連載「電子立国は、なぜ凋落したか」では、元・日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が、政策・経済のマクロ動向、産業史、電子技術の変遷などの多面的な視点で、凋落の本当の原因を解き明かしていく。今回と次回は、かつて「家電の王様」と呼ばれながら、昨今は業績不振の「戦犯」との指摘も多いテレビ事業を取り上げる。
日本の電子産業の凋落を一般社会に印象づけたのは、2012年におけるテレビ事業の極度の不振だろう。その前の数年間は薄型テレビがよく売れ、テレビ事業は活況を呈していた。
テレビの内需と生産は、日本では2003年から急増した(図1)。2003年は3大都市圏で地上デジタル放送が始まった年である。「地デジ特需」(地上デジタル放送を見るためのテレビ買い替え需要)が同時に始まった。もちろんテレビ・メーカーは、これを期待していた。国も産業振興策として、テレビの買い替え需要を促進する。
2009年5月15日、ときの麻生内閣は「家電エコポイント事業」を始めた。地上デジタル放送対応のテレビなどを買うとエコポイントが付与され、指定商品が安く購入できるという制度である。地球温暖化防止、経済の活性化、地上デジタル放送対応テレビの普及が目的とされていた。この制度は2011年3月31日まで続き、地デジ特需を後押しする。
テレビの内需と生産は2010年にピークに達し、2011年、2012年には壊滅的に急減する(図1)。地デジ特需の終わりである。アナログ・テレビ放送の電波は、2011年7月24日(東日本大震災を被災した東北3県では2012年3月31日)に止まった。このアナログ停波日程を考えれば、2011年、2012年におけるテレビ内需の激減は「予定通り」だった。この様子を、もう少し詳しく見てみよう。
■アナログ停波後に生産も輸入も減少
図2は2010年以後のテレビの生産・輸出入・内需を、月次で見たものである。内需は2010年末に最大となり、対応して生産も輸入も同年末がピークだ。大勢が2010年末に新しいテレビに買い替えたというわけである。
テレビ、地上デジタル放送、シャープ、パナソニック、東芝、産業
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