市教委幹部、繰り返された悲劇に衝撃「何をすれば良かったのか正直わからない」…佐世保高1女子殺害事件
長崎県佐世保市で同級生(15)の殺害容疑で高校1年の少女(16)が逮捕された事件で、市の教育関係者に動揺が広がっている。佐世保市では、2004年の小6女児による同級生殺害事件が起きて以降、各小中学校で、生徒に命の大切さを認識させる取り組みを続けてきた。そんな中で再び起きた事件に、市教育委員会幹部は「一体何をすれば良かったのか。正直分からない」と悲痛な声を上げた。一方、少女は「ネコを解剖するうちに、人間で試したくなった」と供述していることが30日、分かった。
市教育委員会の幹部は「自分たちは『過去』を教訓にして、やれることを精いっぱいやってきたつもりだった。本当に悔しい」と力なくため息をついた。「いったい何をすれば正解だったのか…今でも分からない」
「過去」とは、04年6月に起こった事件のことだ。小学6年生の女子児童が、同級生をカッターナイフで殺害した。
佐世保市では、この事件翌年から、6月を「いのちを見つめる強調月間」に制定。市管轄の全小中学校で、命の大切さを教える授業などを義務づけてきた。
毎年6月1日には、各校長が全校生徒に「命の尊さ」をテーマに講話。さらに、一般市民も入れる「学校公開日」を設け、保護者同伴で「命に関わる題材」をテーマにした道徳授業を開いている。今回の加害者の少女も、授業を受けていたという。
また、少女が小学6年だった2010年に同級生2人の給食に計5回、異物を混入した騒動を起こした際も、市教委はすぐさまカウンセラーを派遣。少女と被害児童や親に、計10回以上に及ぶカウンセリングを行い、問題行動は収まったという。市教委によると、その後も、少女が進学した中学校にはカウンセリングの概要も伝えた。
市教育委幹部は「今回の事件を起こした少女も、小学校の中学年(3、4年)まではクラスのリーダー的存在だった」と話す。「そこからなぜ小学6年の騒動に至ったのか、根本的な原因については特定できていない」ともいう。少女はさらに、その4年後、市が尊さを伝えてきたはずの「命」を奪った。なぜ、事件が起きたのか。市内が悲痛な雰囲気に包まれる中、教委では近く検討会を開き、教育体制を見直す予定だ。(樋口 智城)