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AniFav スペシャルの一覧へ戻る 更新日:2014年07月31日 19時47分

「普通」ではアニメの仕事はできない――『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』著者・舛本和也(『キルラキル』アニメーションPD)インタビュー(1/3)

聞き手・構成:前田久(前Q)

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 痛快なエンターテインメント快作『キルラキル』を生み出したアニメスタジオ・TRIGGER(トリガー)。そのスタッフはいずれも、作品さながらに「熱い」人である。このたび、星海社新書から『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』を刊行した舛本和也も、やはり「熱い」人である。

 本書に込められた熱い想いを、あらためて本人の口から語ってもらった。アニメ好き、アニメを仕事にしている悩める若者たち、はたまた、「ものづくり」に携わるすべての人に捧げる「熱言」をぜひ楽しんでほしい。

舛本和也(ますもと・かずや)プロフィール

株式会社TRIGGER取締役。『リトルウィッチアカデミア』制作統括、『キルラキル』アニメーションプロデューサー。福岡工業大学卒業後、代々木アニメーション学院福岡校に入学。2000年よりアニメーション制作会社で制作進行を務める。2006年にガイナックス入社、『天元突破グレンラガン』『Panty & Stocking with Garterbelt』などの作品を手がけたのち、2011年に今石洋之、大塚雅彦らと株式会社トリガーを立ち上げ、現在に至る。

 Twitter:@kenji2413

■『アニメを仕事に!』ができるまで

――『アニメを仕事に!』はアニメーションの「制作進行」という役職のノウハウをまとめた、これまでに類書のない本ですよね。本書の中にも書かれてはいるのですが、こうした本をお書きになろうと思ったきっかけをあらためてうかがってもよろしいでしょうか?

舛本:僕はアニメとも芸術とも関係のない普通の大学を卒業した後に、専門学校に入って、そこからアニメ業界に入ったんです。もともとはアニメーター志望だったんですが、在学中にいろいろ勉強させていただく中で、アニメに関わるにもいろいろな職種があることを知りまして、最終的には制作進行という形で就職させていただいたんです。
舛本和也さん けれども就職したときには、制作進行が何をする仕事かよくわからなかったんですね。
 当時はもうインターネットが普及してましたから、調べれば多少はわかるんですよ。「アニメの制作現場でいろんなマネジメントをする」とか「予算を管理する」とか。でも、実質何をする仕事かというのはまったくわからなかった。現場での教育も、「先輩を見て習え、技を盗め」という状態で。

――それは大変ですね。

舛本:それはそれでいろんな意味で楽しかったし、今思えばありがたかったんですけどね。ともあれ、そういう状況だったのは僕だけではなくて、制作進行をやっている人間は大体そうなんですよね。今も昔も。
 僕は制作進行として6年仕事をして、そのあと制作デスク――雑誌づくりでいうと編集長にあたるような感じの役職――になって、今では(アニメーション)プロデューサーという形でのお仕事をやらせていただくようになったんですけど、そうしてキャリアを重ねていくあいだにも、ずっと制作進行の仕事内容を書いた本がないのは気にかかってました。
 アニメーターの作画術をまとめた本はたくさんあるし、アニメの映像の作り方について書かれた本はたくさんある。アニメのメイキングを扱った映像もたくさんある。でも制作進行のことがわかる資料ってひとつもなくて、ネットの記事も増えなかった。ずっと「なんでだろう?」と思ってたんですよね。これだけいろんな人がかかわって、50年以上もテレビアニメが作られ続けてきたというのに、すごく重要な役職であるにもかかわらず、制作進行のノウハウをテキスト化した人がいないというのは、すごく不思議だったんですよ。
 どういうジャンルであっても、マネジメントの本って出てますよね?

――書店のビジネス書のコーナーには、いろんな業種を題材にしたマネジメントの本が並んでますね。

舛本:そう。コーチング(人材指導)もそうです。なのにアニメ業界のマネジメントやコーチングの本がない。そこで最初は、ブログで制作進行の仕事を紹介させてもらったんです。まだTRIGGERを立ち上げる前、ガイナックスにいた頃なんですが、ウェブの広報をしていた人に話を持ちかけて。

――ガイナックスのサイトは、『天元突破グレンラガン』の頃から、アニメのメイキング要素を大きく扱うようになった覚えがあります。制作進行もでしたし、当時はまだ今ほど注目されていなかった撮影の仕事をとりあげた記事もあったりして、よく勉強させていただいてました。

舛本:そのころガイナックスのウェブサイトでは、アニメの制作の裏側を知ってもらおうという雰囲気が高まっていたんですよ。制作進行に関する記事は、全部で20回くらい書いたかな。その反響が大きかったので、じゃあブログじゃなく、書籍化しましょう……といってまとめたのが、今回『アニメを仕事に!』の元になった同人誌(『はじめての制作進行』サークル弁慶堂発行)なんですね。

――それがまわりまわって本書に至ると。ちなみに、ブログへの反響というのは主にどんな方から?

舛本:一番最初はアニメ業界の内部の方ですね。それも、僕よりもかなり年上の方から書籍化してほしいという反響がありました。制作進行を教えるにあたって、自分たちも背中で教えてしまっているので、どういうことを教えるかを言葉にしてまとめた本がほしいんだと。
 次が制作進行志望の子たちから、Twitter経由で反響がありました。業界の中からの声が先にあったのは、正直以外でしたね。

――舛本さんご自身は、制作進行として現場でご活躍されていたときから、ここまでご自分の仕事を言語化されていたんですか?

舛本:そこは仕事をしながらだんだん言語化していったというのがリアルな話ですね。最初の3年間はとにかく仕事を覚えるのが先決でした。本格的に仕事を言語化することに興味をもったのは後輩ができてからなんですよ。
『天元突破グレンラガン』のときに制作デスクをやらせていただくようになったんですが、僕ひとりでは作品が作れなかったんですね。下に制作進行が5人から6人は必要だった。でもそのときついてくれたのが、キャリアの長い子でも制作進行になって2年目で、中には入りたての子もいたんです。
 その子たちに仕事を教えるときにかなり悩んで、言語化しなきゃいけない状況に追いやられたというのが、本に書いたようなことをきちんと考え始めるきっかけでした。仕事を始めて6年目のことです。

――繰り返しになりますが、本書は類書がないんですよね。誰もまとめたことのない事柄を言葉にしていくのは、相当難しかったのではないかと思うのですが。

舛本:僕、新書とかビジネス本を中学生時代からよく読んでたんです。日本マクドナルドの創業者の藤田田さんが大好きなんですよ。それと浅草ロック座の会長の齋藤智恵子さんと、ソフトオンデマンドの初代会長の高橋がなりさん。この3人の本は出たら必ず読んでました。そういう積み重ねがあったからできたんじゃないかなと思います。
 人に何かを伝えるときに、言語化する――形のいい言葉でいうと、理論化する。わかりやすい言葉で人に伝える、言葉のキャッチボールの仕方を、そこで学んでいたんだと思います。
 そこから体で覚えた仕事を言葉にしていった。こういう風に考えられたのは良かったですね。最初から言葉で教えられていたら、その人の言葉でしか仕事を理解できなかったでしょうから。

――別の業態に関する本からの蓄積が、イチから覚えたアニメの仕事内容と、うまく化学反応を起こして本書の文章が生まれたと。

舛本:そうだと思います。あともうひとつは、僕、最初に就職したアニメーションのグロス(下請け)会社で、いろんな方にお会いできたんです。その経験が大きいと思いますね。
 東映アニメーションの監督さんたちともそのときに出会えましたし、『雪の女王 The Snow Queen』や劇場版「とっとこハム太郎」の仕事で出崎統さんとも会えましたし、スタジオぴえろの案納正美さんともご挨拶させていただいたし、『星のカービィ』で総監督の吉川惣司さんともお会いできました。そういうすごい方々と直接お話しさせていただいたのも大きかったと思いますね。もちろん、そのあとガイナックスで、庵野秀明さんたちにお会いしたのもとても大きい経験です。

――大御所のみなさんはもちろん、ガイナックスのみなさんはまた言語でのコミュニケーション能力の高いが揃ってらっしゃいますもんね。

舛本:そうなんです。特に鶴巻(和哉)さん。ホントに言葉のキャッチボールがしやすいんですよね。鶴巻さんは相手のボールにあわせるのが上手い。本当にすごいなと思いましたね。そこで勉強させていただいたんだろうなと思います。

――そうした方々との交流から培われた、舛本さん流の相手の心を理解するためのコツというか、心がけていることってあります?

舛本:いやー……難しいですね。特に意識してはいないんです。強いて言うなら、僕って、求められれば自分の話もするんですけど、基本的には相手の話を聞くことが好きなんですよね。何気ない会話の端々に見えるその人の他人とは違う部分に興味がある。何かを心がけてテクニカルにやっているわけではないですが、そこですかね。それまで興味がなかったことも、話を聞いてみると興味が湧いてきたりして。そこから理解が深まることが多いというのが、僕の印象ですね。

――大事なのは好奇心ということですね。

舛本:そうですね。それはあると思います。

>>>制作進行は「サイヤ人」である!?>>>

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