空き家を放置する理由の7割が「なんとなく」:ざっくり分かる!不動産コンサルタントが語る、空き家問題の現状

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深刻化している空き家問題、これを読めば現状がざっくり掴めます。

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J-WAVE『JAM THE WORLD』の2014年7月30日放送分よりピックアップ。

昨日、総務省による土地調査計画が発表されました。それによると全国の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%にも上るとのことです。 

参照:2013年の「空き家率」、過去最高の13.5%–最も高いのは山梨県・低いのは宮城県

最近ではそんな空き家を利用するなどの動きも全国で見られるなど、この問題に関する関心が高まっています。

そんななか、今回の『JAM THE WORLD』では不動産コンサルタントの長嶋修さんをゲストに迎えて、この空き家問題について丁寧な解説をされていたのでピックアップしてご紹介します。

 

しゃべるひと

  • 長嶋修さん(不動産コンサルタント)
  • 堤未果さん(ジャーナリスト)

 

新築住宅がひとつ売れると2倍の経済波及効果も

:まず空き家の定義から教えていただけますか?

長嶋簡単に言うと「長期間空いている住宅」ということなんですけど、このなかには別荘なども少し含まれているんですね。

でも、イメージ通りでよくて長く空いていて何にも使われていない住宅ということです。

:昨日の総務省の発表で空き家率が過去最高の13.5%ということが発表されてるんですが、なぜ日本ではこんなに空き家が増えてしまうんでしょう?

長嶋:日を追うごとに空き家が増えていってしまっているんですけど、簡単に言うと計画がないんですよね。無計画に新築を作ってしまうから、

:政府側に?

長嶋:そうです。OECDに加盟するような普通の国って、「いま世帯数がコレくらいで、住宅はこのくらいあるので◯年でこのくらいの新築をつくろう」っていう計画を作るんですよ。それに基づいて税制とか金融をコントロールしていくんです。

ところが日本の場合はそういった計画が全くなくて、「去年100万戸つくれたから、今年はもっとつくれたらいいなぁ」、これだけなんですよ。

これでは空き家が増えるよね、ってことなんですよ。

:これは日本の政府が新築をどんどん増やす背景にはどんなメリットを見込んでいるんですか?

長嶋:基本は景気対策ですね。新築住宅がひとつ売れると二倍の経済波及効果あるって言われれているんですね。

例えば、3000万円の住宅が建てられれば、巡り巡って6000万円の経済波及効果があると。

こんなに経済波及効果が高い産業は他にないんですね。だから、景気対策をするとなると、事あるごとに必ず「住宅政策」ってなっちゃうんです。

いまはこの空き家対策に税金をかけてやっている時代ですから、実際には多分もう二倍の経済波及効果なんてないんですよね。

:にもかかわらず続けている?

長嶋:この政策変更をことで景気が悪くなっちゃったらどうしよう、というのが大きいと思います。変わる恐怖ですね。

あともう一つは新築住宅の産業がありますから、こういった方々の抵抗というのも少しあるんでしょうね。

:造りつづけてしまうと。

 

 

中古市場拡大の政策転換が遅れたことが原因

:そうは言っても日本の新築住宅は造り続けたとしても、その価値の落ち方も諸外国に比べて激しいですよね?

長嶋:そうなんですよ。

日本は新築で買ったときが1番高くて、中古住宅マーケットにいくとだいたい10年で半値、25年くらいでほぼ0、と。

だから、カンタンに言うと住宅ローンを組んで家を買うということは住宅ローンの残高の目減りと建物の価値の下落の目減り競争をしてるんですよね。

よっぽど頭金を入れないと、途中の家を売ろうと思ったら住宅ローンの残高の方が大きくて家系内債務超過状態になってしまう。

500万円とか手出ししないと売れないんです。そういうことが続いてきたと。

いつも新築の方が価値があり、中古になった途端に価値が下がって、「あとはもう知らないよ」ということになっちゃったのが、いまの日本の住宅政策ですね。

:アメリカなんかでも中古の売り買いがなされてますし、そんな値の下がり方はしてないですよね。

長嶋:他の先進国はある程度の住宅の数ができてきたら、今度は二次市場を発達させよう、中古住宅市場がどうやったらうまくいくか、政策転換をするんですよ。

これは中古車の世界も一緒で、新車がある程度売れたら、次は二次市場の中古車マーケットができるのと同じ理屈で。

で、日本は正直その転換が遅れましたね。ベストなのは1980年代。

それがやっと遅ればせながら、2013~2015年で政策の大きい変更がなされたと。

 

 

放置する理由の約7割は「なんとなく」

:売ることも貸すこともされずにそのまま放置される空き家が相当多いんですが、放置する理由はなんなんですか?

長嶋:これは、あるアンケートによると「特に理由はありません」という方が70%なんですよ。

残り30%の方は、今売らない理由があって空き家にするんですね。

70%の方は明確な理由がなく、なんとなく空き家にしていますと。不思議な状況なんですけどね。

このなかには細かく言うといろいろあります。

不動産の所有者が亡くなっちゃって相続が起きるんですけど、そうするとその相続の内容って戸籍には登録されないんですね。

不動産の登記にももちろん反映されないので、誰の持ち物かわからなくなると。

:なるほど、持ち主が。

長嶋:あるいは持っていても壊さない理由もあるんです。

:壊さないでそのままにしている方ってかなり多いと思うんですけど、壊した場合と壊さず家つきで持っていた場合と、例えば、固定資産税みたいなものって変わるんですか?

長嶋:全然変わるんですよね。

だから、気づいている方々は建物をあえて壊さず、古家を残したままにするんですよ。

土地があって、その上にとりあえず住宅が立っていると、固定資産税が数分の一になるんですね。

:そんなに違うんですね。

長嶋:だから、建物を壊してくださいって言っても、お金をかけて解体して、その上固定資産税も上がっちゃうようなことをやる人はいないよねって話なんですね。

:そうすると税制自体がそういうことになっていると。

長嶋:これは昔の税制なので、廃止したほうがいいんです。

:これもさっきのお話の、新築住宅信仰と一緒で引きずってきた?

長嶋:昔は土地があったら、そこに建物を建ててくれると、住宅も足りないことですし優遇しますよと言っていたんです。いまはも逆なので、それが濫用された形になっちゃったんですね。

 

 

強制的に取り壊せる、「空き家対策法案」

:空き家が壊されないで、土地の上にそのまま建っていていることで起きる問題とはなんですか?

長嶋:いろんな問題が起きているんですけど、例えば建物が崩れてくる、歩行者とか周辺住民に迷惑がかかる。

あとは空き家だからやっぱりイタズラで中にはいっちゃったり、そこで放火が起きたり、事件みたいなものもあります。

あとはやっぱり街が汚くなっちゃう、快適性、ひいては街の資産性、雰囲気にも影響してくるよねって形なんですよね。

:そこでいま、たくさん増えてしまった空き家を壊すために政府はなにか対策を打っているんでしょうか?

長嶋:政府というよりは、各自治体レベルで、空き家の条例を作っているんです。いま200弱の自治体がやっているんですけど。

さっきのようなが迷惑がかかっている住宅に対しては勧告とか命令ができたり、あるいは氏名を公表しますと、いうことをやっているところが年々増えています。

:効果は?

長嶋:うまくいっているのと、全然うまくいっていないのと両方ありますね。

こうした事態を受けて、いま自民党が空き家対策法案を今年の秋に提出しようとしているんですね。

:空き家対策法案?

長嶋:これは、勧告とか命令を聞かなかったら、勝手に取り壊しちゃって解体費を所有者に請求することができると。

かなりドラスティックな法案なんですね。

:でも、固定資産税や相続税の税制の部分を今の状況に合ったように改定するということではなくて、強制的にドラスティックにやってしまうという方向に?

長嶋:いまの改正法案のなかには税制改正のことは盛り込まれていないんですよね。

:それはなぜですか?

長嶋:いやぁ、これは私にもわからないです。

両方やらないと難しいと思っているんですけどね。

 

 

メンテナンスさえすれば木造住宅も100年は保つ

:よく、住宅の寿命について日本では3~50年とかが割と定説になっていますがあれはどうなんでしょう?

長嶋:あの定説は間違いなんですよ。

国土交通省のアナウンスは、30年くらいが寿命と言ってるんですけどあれは取り壊した住宅の平均年数が30年というだけで、実際には保っている住宅はいっぱいあるんですね。

これがおかしい、と言って早稲田大学の小松さんという教授が人間の平均寿命を出すのとおなじやり方で試算を出すんですけど、木造もRC住宅も平均64~65年です

もっというと、いまの日本の設計と建築技術はほぼ世界一なのでちゃんと作られていて、かつご本人が適度にメンテナンスしていれば、木造住宅でも100年は全然保ちます、全然大丈夫です。

:すると30年とか50年とかって思い込みとか…、

長嶋:実際壊したのは3~50年なんですけど、それはもう本当にダメな建物か、あるいはまだまだ建物は保つんだけど、「取り壊しちゃって、別に使っちゃった方がいいよね」ということで取壊しているやつもいっぱいありますから。

:すると、ずいぶん不動産の実態と私たちのイメージはギャップが、

長嶋:えぇ。

もっと長持ちしますし、大事にすればだんだん価値がつくようになってきますし。不動産ってもっといいものですね。

:そうすれば新築ラッシュも少し変えていって、中古住宅のマーケットも変えればずいぶん変わってきますね。

長嶋:中古住宅流通市場っていまは50万戸くらいしかないんですけど、その4~5倍に増えてもおかしくないですね。

他の先進国はそうなってますから。新築より圧倒的に中古マーケットの方がデカいと。中古マーケットがでかくて、取引がいっぱい行われるので、価値も落ちづらくなると。

ほんとに家買った方が貯金になるんですよね。築20年の家を築35年で2000万前後で売ったら、…これは家買った方がいいですよね。

 

 

都内でも空き家の活用が始まっている

:増えている空き家ですけど、空き家を逆に活用している地域ってあるんですか?

長嶋:もちろんたくさんありまして、地方が頑張って取り組んでいるところが多いですけど、最近は都内でいうと世田谷区なんかは補助事業で、空き家を活用して高齢者や子どもが集まるしかけをするとか、そういった団体を支援するみたいなことはやっていますね。

東京23区でも実証実験をやって、大量空き家発生に備えているっていう時代ですからね。

:そうすると、行政が強制的に壊すという自民党がやろうとしていることと、同時並行で自治体が逆に活用すると?

長嶋:それはもちろん壊した方がいいものは壊す、活かせるものは手直しをして新しい用途に転換させるという活かす政策の両方をやっています。

:活かせるとその自治体の発展にもつながるというポジティブな。

長嶋:実際には、空き家は放置されているのでダメなものはダメなんですけど、全然大丈夫なもの、ほんの少し直せば使えるものはいっぱいあるんですね。

:また直すとなるとそこで仕事も生まれますしね。

長嶋:そうですね。

これからは新築を建てることではなく、直す、修繕するという方に行かざるを得ないんですね。

:日本も大きく変わっていくところですね。

 

不動産コンサルタント 長嶋 修 公式ホームページ

 

番組情報

JAM THE WORLDJ-WAVE

放送時間:20:00~21:50

 


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