××馴れ合いと触れ合い



欲しいのは。
何よりも欲しいのは、目の前の青年。
彼の瞳と、手の温もりと、触れてくる指の優しさ。
そう言ったら、どんな顔をするだろう。

思っても、絶対に、言葉にするつもりはない。
けれど、戸惑いつつも、この馴れ合いと触れ合いは絶対に止めてやらない。
この温もりを、ずっと感じでいたいから―――。
これくらいの我侭は、許してネ。銀ちゃん―――。


「おい。神楽」
ふいに呼ばれて神楽は振り向く。
「…銀ちゃ?」
名を呼ばれた瞬間、突然背後から抱き寄せられる。
「ど…どうしたあるか?銀ちゃん」
神楽の大きな蒼い瞳が銀時を捕らえる。
「んー。どうもしねぇよ。酢昆布やるから少し大人しくてしていやがれ」
「なんだよ。…訳わけんねぇ」
それでも、髪を梳く大きな手が気持ちよくて、神楽は酢昆布を頬張りながら瞳を閉じた。

「銀ちゃんの手、好きアル……」
「なんだよ。手ェだけか?」
笑みを含んだ声に、神楽はゆっくりと瞳を開けた。
「だけじゃないけど」
「…あとは何だ?はっきり言えよ」
「言わないよ。ニブちん天パ」
照れくさくて、改まって言うことなど出来やしない。
好きだとストレートに告げるのは、子供っぽく聞こえるかもしれないと思えるかもしれな
いし(実際、神楽はまだ子供だが)、背伸
びして銀時と付き合っても端から見たら滑稽かもしれない。そんなどうでもいいような
ことばかり考えてしまって、神楽の口はい
つも重かった。どう会話を続けていったらいいのか困り果て、神楽は急いで会話を見繕う。
「ねぇ。銀ちゃん」
顔だけをくるりと背後の銀時に向け、上目遣いのまま銀時の顔を見上げる。
「あァ?」
「今日は…このままずっと抱き合っていたいアルよ。ね…駄目?」
「……………」
自分はいきなり何を言い出すんだと、あまりの恥ずかしさに神楽はそのまま顔を俯い
てしまう。
もっと他に言い方がなかったのかと、思い返せば羞恥心で顔が紅潮に染まる。
「色気のねぇ誘い方するのな、お前はよォ―――。もう少し、男の誘い方ってモンを学べよ。
じゃねェと銀さん興奮出来ないじ
ゃん」
銀時は笑いながら俯いている神楽の顎を掬い上げて、自然に唇を寄せる。
ひとしきりキスを交わした後、銀時の大きな手がチャイナ服のボタンを外していき、神楽の
素肌に触れる。
ソファに座り込み、神楽を脱がしながら、銀時は神楽を膝の上に引き上げた。
膝に跨って向かい合うのは、さすがに少し照れ臭い。
神楽は視線を合わせないよう、耳に唇が寄せられるとすぐさま目を閉じた。

「…ぎ、銀ちゃ」
もう一度開いた唇を、言葉を奪うようにそっと塞いだ。
ゆっくりと、キスを、深める。
包み込む、あたたかな、やさしい温もり。
伝わる、鼓動。
この腕に、神楽は深く安堵した。


 

                                      ―END―


--------------------------------------------------
銀神絵茶にアップしていた銀神らぶらぶ(?)小説です。

2006.06.24 かずきりょう