原爆投下搭乗員:戦いに疲れたバンカークさん93歳死去

毎日新聞 2014年07月30日 22時42分(最終更新 07月31日 01時19分)

 広島に原爆を投下した米爆撃機「エノラ・ゲイ」の搭乗員の中で最後の生存者だったセオドア・バンカークさんが28日、米ジョージア州アトランタ近郊の高齢者施設で老衰のため死亡した。93歳だった。

 2005年夏、米テネシー州オークリッジで原爆開発60年を記念する式典があり、インタビューした。原爆を投下しキノコ雲を確認した時、「ほっとした」と話した。「これで戦争が終わる。5年間の従軍で疲れ切っていた。家に帰りたかった」。正直な人だった。

 バンカークさんは「原爆は戦争終結を早め、多くの命を救った」と米国の中高年層に典型的な原爆投下正当化論を繰り返した。おそらく死ぬまでそう思っていただろう。一方、「核兵器は廃絶すべきだ」とも語っていた。

 米国人から英雄扱いされることに対して、「兵士は全員、役割を果たした。私も自分の仕事をしただけ」と答えていた。日本人に謝罪を要求されることには、うんざりしていた。「自分の気持ちを一番理解できるのは旧日本軍の元兵士だろうと思うことがある」と口にした。彼は命令を遂行する一兵士にすぎなかった。【國枝すみれ】

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