米国:イスラエルと「場外戦」 ガザ戦闘めぐり
毎日新聞 2014年07月31日 11時25分
【ワシントン和田浩明】長年の同盟国である米国とイスラエルが、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐり対立を深めている。オバマ米政権は、パレスチナ民間人の死傷者急増に懸念を強め、イスラエルに対策強化を要求する。一方、イスラエルはケリー米国務長官による停戦仲介が、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマス寄りだとして、交渉内容をメディアにリークする作戦で対抗。同盟国同士の「場外戦」が続いている。
「イスラエル軍に自宅退去を求められた多数のパレスチナ人が国連の避難所でも安全でないことに、極めて強い懸念を抱いている」。米国家安全保障会議のミーハン報道官は30日、米国政府としては異例に強い調子の声明を発表した。
ガザで同日発生した国連避難所として利用されている学校砲撃事件を受けたもので「子供を含む罪のないパレスチナ人が死傷した」として非難した。
砲撃自体に関しイスラエルの名指しは避けたが、内容的には「イスラエル非難」のトーンで、シュルツ大統領副報道官も「イスラエルは民間人死傷者の抑制のため取り組みを強める必要がある」と明言した。
これに先立ち、ケリー国務長官はエジプトやイスラエル、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸などを訪問しイスラエルとハマスの即時停戦に向けエジプト案を軸に調整を図ったが成果を出せず帰国。
イスラエルメディアは、イスラエル政府からリークされた情報などを元に、ハマス寄りと見るカタールやトルコも引き込んだケリー氏の調停努力を批判した。
これに対し、サキ米国務省報道官は28日の定例会見で「同盟国に対する扱いではない」と反発した。
米国政府はイスラエルを「真に特別な関係」(ライス大統領補佐官)と見なしており、こうした対立が両国関係の決定的悪化につながる可能性はほぼない。だが、オバマ大統領とネタニヤフ・イスラエル首相の「不仲説」はこれまでも伝えられている。
ロイター通信によると、ガザの保健当局者の集計ではパレスチナ側の死者は30日現在1346人で、過半数は民間人と見られる。イスラエル側では兵士56人と民間人3人が死亡した。
ただ、米国世論はイスラエルを支援する傾向が強い。ピュー・リサーチ・センターが28日に公表した世論調査では、今回の紛争は「ハマスの責任」とする回答が40%で最も多く「イスラエル」は19%だった。