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貿易赤字の裏側

財務省が7月24日に発表した2014年上半期の貿易収支は、7兆5983億円の赤字で、半期では過去最大の赤字となりました。

このままのペースでいくと、年間を通して15兆円の貿易赤字となります。

日経新聞は「燃料輸入の増加が主因」と分析しています。

産経新聞も「原発の稼働停止に伴う、火力発電用燃料の輸入額が高水準となるなど輸入が過去最大に」と解説しています。

天然ガスの輸入量が増えて貿易赤字が増えているというように聞こえます。
 
この一年間の天然ガスの輸入量を四半期ごとにみてみましょう。

2013 Jan.-Mar 23,494千トン
2013 Apr.-Jun 19,913
2013 Jul.-Sep 21,244
2013 Oct.-Dec 22,840
2014 Jan.-Mar 23,734
2014 Apr.-Jun 20,528

2013年の第2四半期と比べ、2014年の第2四半期の天然ガスの輸入量は3%の増加です。

ところが同じ時期の天然ガスの輸入金額をみてみるとこうなります。

2013 Jan.-Mar 1,829,974,606千円
2013 Apr.-Jun 1,671,296,539
2013 Jul.-Sep 1,705,469,789
2013 Oct.-Dec 1,852,210,267
2014 Jan.-Mar 2,113,850,763
2014 Apr.-Jun 1,792,803,219

2013年の第2四半期と比べ、2014年の第2四半期の天然ガスの輸入金額は7%も増加しています。

福島第一原発の事故が起きた2011年と比較してみましょう。

年度 輸入量 輸入金額
2011 83,183千トン 5,404,383,719 千円
2012 86,865 6,214,120,485
2013 87,731 7,342,827,358

2013年の輸入量は2011年と比べて5%の増加です。しかし、輸入金額は36%も伸びています。

2011年3月、天然ガスの価格は$12.18でした。当時の為替レートは1ドルが81円79銭。円建ての天然ガスの価格は996円25銭。

2014年5月の天然ガス価格は$17.75、為替レートは101円79銭。円建ての天然ガス価格は1806円77銭。円建て価格は81%の上昇です。

2014年上期の輸入量、金額を単純に2倍して比較してみると輸入量は2011年と比較して6%の増加、輸入金額は45%増えることになります。

新聞報道を見ていると、あたかも原発が停止したので天然ガスの輸入量が増えて、貿易赤字が膨らんだかのように思えます。しかし、事実は、天然ガス価格の上昇とそれに輪をかけた円安のおかげで円建てのガス価格が上昇し、貿易赤字が増えたのです。

どの新聞を読んでも天然ガスの輸入量やその価格がどう推移したのか、まったくわかりません。

政府が発表していることだけを右から左に流しているだけではマスコミの役割を果たしていると言えないのではないでしょうか。

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