2014.7.30 WED
ILLUSTRATION BY JUNKO SHIMIZU
PHOTOGRAPHS BY CEDRIC DIRADOURIAN
TEXT BY WIRED.jp_I
右から:コルク 代表取締役社長 佐渡島庸平、バスキュール代表 朴正義、ヤフーマーケティングソリューションカンパニー マーケティングイノベーション室長 友澤大輔、モデレーターをつとめた『WIRED』日本版 編集長 若林 恵。
深夜、Yahoo!JAPANのトップページに「もうねよう」とまどろむネコのバナーが表示されているのをご存知だろうか(7月29日現在)。
一見広告に見えるかもしれないが、さにあらず。ネコがゴロゴロしているだけのこの不思議なバナーは、7月中旬に開始したばかりのヤフーのプロジェクト「ヨルパネ!」の一環で掲載されているものだ。
Yahoo! JAPANのトップページの広告掲載枠(通称ブランドパネル)を、新たなネットクリエイションの実験場として、深夜時間帯にクリエイターに解放する試み。Yahoo! JAPANインターネットクリエイティブアワード 2014の特別企画として行われている。
9月まで続けられるヨルパネ!のキックオフイヴェントが先日開催され、2つのパネルディスカッションが行われた。
第1部では、「メディア論:日本最大のアグリゲーターであるYahoo! JAPANがクリエイティブコンテンツを発信する意味とは」をテーマに、クリエイターエージェンシー コルクの代表取締役社長 佐渡島庸平、バスキュール代表 朴正義、ヤフーマーケティングソリューションカンパニー マーケティングイノベーション室長 友澤大輔が登壇した。
成功している広告スペース(日本のウェブ広告としては最も高価な場所で、出稿依頼がたえないそうだ)を、ヤフーが無料でクリエイターに「公開」することにしたのは、なぜだろうか。
ヨルパネ!を率いる友澤は、プロジェクトのきっかけをこう振り返る。
「ヤフーのバナー広告は、制限が多くて出来ないことばかりなんです。ブランドパネルは、たくさんの人の目に触れる場所なのに、表現の場として機能していない。広告スペースとしては順調ですが、これから維持か衰退の道しかありません。本来、インターネットは自由な場所だったはず。それならばその場所をクリエイターに解放することによって、新しい道が切り開けるのではと思い、ヨルパネ!は始まりました」(友澤)
クリエイターが広告スペースを自由に使えることによって、どんなことが起こりうるのだろう。
ヨルパネ!をヤフーと共同で運営しているバスキュールの朴は、次のように語る。
「クライアントが売りたい商品があって、受注してからバナーをつくる流れでは、いかにも広告っぽいものしか生まれません。だから、日本で一番見られるバナー広告であるブランドパネルは、先にクリエイティヴがあって、そのスポンサーになりたい企業がいる、そんな場所になったらいいなと思うんです。そうすることによってバナーの概念が変わるんじゃないか、と期待しています」(朴)
「ブランドパネルは、もっと可能性があるはずで、でもそれをコンテンツ化しようと思った時に、コンテンツって何なのだろうってことがよく分からない部分もあったんです。だったら、クリエイターの方たちに、遊んでもらうことでできること、できないことが見えてきて、そのなかからこれからのブランドパネルのあり方をみんなで決めていけるんじゃないかと思いました」。クリエイターと共に新しいバナーあり方を考えることにした経緯と、ポータルサイトにおける「コンテンツ化」の課題について、友澤は触れた。
コルクの佐渡島は、ネットにおけるクリエイティヴ、そしてコンテンツについて、こう指摘する。
「ウェブにおいて、本当の意味でのコンテンツは、まだできてないと思うんです。Kindleや電子書籍は、紙を電子化しただけのコピー。YouTubeでのCMの入り方も、テレビのやり方ですよね。だからいま、ネット上にあるコンテンツは、プレハブ状態なんです。ウェブならではのコンテンツが、まさにこれから出てくるのではないでしょうか」
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