(2014年7月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ウクライナ危機を巡り、厳しい立場に立たされているウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News〕
まず、破綻した石油会社ユーコスの元大株主らに500億ドルの賠償金を支払えという命令が裁判所からロシアに下された。次に、欧州連合(EU)がウクライナ問題について、初めてロシア経済の全セクターに真の打撃を与えうる追加制裁を科すことを決めた。
この2日間で、欧州とロシアの関係は冷戦終結後最悪の状況に陥った。1980年代半ば以降で最悪と言ってもいいかもしれない。
タイムマシンで昔に戻ったような感覚は、29日の米国の動きによりさらに強まった。ロシアは新型の地上発射型巡航ミサイルの実験を行っており、ロナルド・レーガンとミハイル・ゴルバチョフの間で交わされた重要な軍縮条約に違反していると米国が非難したのだ。
ロシアのメディアや政治家は、ユーコスの件の裁定とEUによる「第3段階」の制裁の開始を結びつけ、これはロシア経済に打撃を加える試みだとする陰謀論を展開しているが、この2つの出来事が同じタイミングで明らかになったのは偶然にすぎない。
昔の冷戦に戻るわけではないが・・・
ただ、この2つが重なったことにより、グローバル経済との統合を深めようとするポスト共産主義のロシアの試みが水を差されたり、下手をすれば反転したりする恐れが生じている。ロシアの経済発展はより内向きな、自給自足的なものになってしまうだろう。
また、制裁によってロシアと西側諸国の関係は新しい、そして(かつての冷戦時のようなとまではいかなくとも)今以上に冷ややかな局面に移行する公算が大きい。
「2つの密閉されたシステムが欧州で対峙する状況に戻ることはあり得ない。経済は今後も、統合されることはないにしても、互いに関係し合う状態が続くだろう」。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のジェームズ・シェール氏はこう語る。「ただ、今まで通りの状況に戻ることは不可能だという感じもする」
ロシアと西側の関係がさらに悪化するか否かは、ウラジーミル・プーチン大統領次第でもある。この問いは、ソビエト時代の末期でも1人の人物次第で決まったものだが、今ではその度合いがさらに強まっている。