2014-07-30 20:00:50
テーマ:線維筋痛症、慢性疲労症候群、疼痛性障害
強迫神経症ではなくても、多くの精神疾患に強迫症状は合併しうる。近年、特に言われているのは自閉性スペクトラムと摂食障害であろう。
双方、精神所見がある場合、どちらを優先すべきだが、明白に自閉性スペクトラムがあるのならそちらを優先すべきである。そのように診断することで、精神科での疾患統計がより正確なものになる。
自閉性スペクトラムを優先すべき主な理由は、自閉性スペクトラムは生来性のものだが、一方、強迫症状は生来性とは言い難いからである。ただし、物心ついたときに既にそれっぽい所見が散見されることはある。
典型的な統合失調症の人は膨大な患者数に比し、強迫を合併している人は少ない印象。稀と言ってよいかもしれない。
若い患者さんの場合、強迫は人生を変えるほどの大きな過ちを犯す伏線になる。
これは犯罪を言っているのではない。例えば日常での大きな判断に影響を及ぼし、結果的にとりかえしのつかない結末をもたらす。
ある患者さんは、自分の体から奇妙な臭気を発していると思われてならなかった。そこで、遠方まで専門医を訪ね、いろいろ相談し手術を受けたのである。その時の主治医は積極的に手術は勧めなかったらしい。しかし、結局、本人に押しきられた。
このタイプの主訴、つまりその所見の一般的な評価が曖昧なものは、受診する医療機関により、対応が変わるものだ。
おそらく臭いなので、最初から精神科を受診する人は少ないと思うが、もし精神科にかかっていれば、やや重い神経症ないし、自閉性スペクトラムに合併しうる精神所見として、強迫に有効な抗うつ剤を主体に治療を開始されるはずである。
強迫は根幹の部分はいくらか残遺する傾向があるが、精神科治療により症状が改善すれば、少なくとも大きな決断を躊躇うくらいには緩和する。その後、本人が家族の意見を参考にしたりし、好ましい結果になることも多い。
ところが、美容整形などに受診した場合、営利目的の部分が健康保険診療に比べ大きいこともあり、手術を勧められることもありうる。改善という視点に限れば、特定の手術をすれば臭気は緩和することも多いからである。その実施の根拠については、美容整形的には間違ってない。
過去ログに、精神科患者は手術をするかどうか迷うときは保留し、安易に手術を受けるべきではないといった記事がある。これはその人の精神症状が影響し、その身体所見の過大評価や、どうしても治し、健康になりたいという強迫症状があるからである。
非の打ちどころがない完璧な身体は幻影と言ってよく、人間というものは完璧には完成されていないのが普通だ。ターミネーターじゃあるまいし人間に完璧な人などいない。
上に挙げた患者さんは、本人によれば、手術が不調に終わり、今もその後遺症に悩んでいる。また、果たして実際に手術が不調に終わっているのかも不明である。その後遺症(違和感・疼痛)の治療のために、日本各地を行脚している状況にある。
これは、完璧を希求したその精神症状にこそ、落とし穴があったと言わざるを得ない。
近年、問題になっているレーシックによる後遺症なども、これにいくらか関係していると思われる。レーシックに魅力を感じるのは、眼鏡をかけて矯正することは、完璧な治療ではないからである。
一見、完璧な手術で、その後が楽になるような手法は、時に反作用というべき困難が伴うことは稀ではない。
人間は楽をして良くなろうとするその心の過程に、油断というか、落とし穴に落ち込みやすい罠が存在している。
おそらく、人生はそういう風になっている。
先日、テレビで旭硝子という世界的メーカーの話が紹介されていた。旭硝子グループのスピリットは、
易きになじまず難きにつく。
といったものだという。これは非常に良い言葉で、本質的に今回の記事と同じことを言っていると思う。その理由だが、落とし穴に落ち込む原因は、本質的な改善の道筋ではなく「易きについている」から。
今回の記事では、「難きにつく」ということは、本質的な精神科の治療を進めることであろう。
参考
慢性疼痛と手術
醜形恐怖、顔の片側の腫れ、エネルギー
美容整形でのお手伝いを妄想・・
患者さんからのショートメールと線維筋痛症
人の判断に興味がある


1 ■無題
強迫性障害は、統合失調症と誤診される事が多いでしょうか。
強迫も難治性だと、メジャーを使うようですから
結果的には同じ治療になるでしょうか。