地元の人たちが「遊ぶところも呑むところもない」と笑う、瀬戸内海の小さな島がいま、おひとり様女子の注目を集めている。
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家浦港から広がる集落を望む。海の向こうには岡山・香川の県境が真ん中を貫く石島が見える
瀬戸内海、播磨灘に浮かぶ小さな島、豊島(てしま)。島の周囲は約20km、人口は1,000人あまり。高松市の人口が42万人で、小豆島が3万人。人口だけを見ても、この島の小ささ、長閑さがうかがえる。
この島に移住し、イチゴ栽培を営む森島丈洋さんは“女子旅急増現象”について、「きっかけは瀬戸内国際芸術祭からです。アートやスローライフ志向の20代、30代女性が、リピートして訪れるようになりました。宿泊施設も少ないので、農家の家に短期ホームステイする民泊(みんぱく)という過ごし方も定着して、“おばあちゃんの家に帰る”という意識で島を再訪する姿が見られます」と話す。
◆ゴスロリ系女子がママチャリで……
記者が訪れた日も、ゴスロリ系女子が“ママチャリ”を走らせながら、眺めのいいところで自転車を止め、ちょっと歩いてみたり、スマホで写真を撮ったりと、のんびり過ごす姿が見られた。
⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=687380
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豊島で遭遇したゴスロリ系女子。ママチャリでのんびりと流し、気に入ったところでボーッとする
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瓦屋根、庭のつくり、ぶら下がる野菜……。瀬戸内独特の家並みが見つかる
「島の移動は電動アシスト自転車のレンタルが人気です。この島の道は起伏が激しく坂道が多いので、電動アシストが重宝します。そういう情報もSNSなどで女性たちに広まったみたいですね。ちなみに24時間営業のコンビニや銀行ATMもない島なので、すべて現金決済となっています(笑)」(森島さん)
豊島へは、岡山県側からも香川県側からも船便が出ている。新幹線で岡山・宇野港から、飛行機で香川・高松空港から、寝台特急「サンライズ瀬戸」で高松駅からと、アクセスは陸海空にわたり多彩。成田~高松間のジェットスター・ジャーパン(LCC)は、夏休み期間中に1往復を増便。都心と高松のルートも充実し、“秘境”などといわれた瀬戸内の島々も日帰りで行けるようになった。
小豆島と直島の間にポツンとある豊島。東西の両島ほどのにぎわいや観光スポットもないが、「電動アシスト自転車に乗って、気に入った地点でボーッとして、出会った猫にカメラを向ける。そんなゆるりとした旅をする女子たちが静かに増えていますね」と森島さんは話していた。
かつては産業廃棄物問題で「ゴミの島」と揶揄された時代もあったが、いま豊島は「何もしないシアワセ」を求める女子たちにウケている。
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豊島、唐櫃港の朝。島の学校に通う学生や、資材を積んだトラック、営業マンなどが上陸する
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高台から瀬戸内海を眺める。海の向こうは本州だ
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水が豊富な豊島。6月の田んぼにはたっぷりと水がはられ、日本の原風景がつくられていた
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気になったところは歩いてみて、猫に出会えばカメラを向ける
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何ひとつ動きがない豊島の穏やかな眺めのなかに、赤い郵便車がポツンと現れた
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豊島「島キッチン」で昼食。豊島で生まれ育った若い女性が切り盛りする
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豊島に移住した森島さん。イチゴを育てながら、豊島の魅力を伝えている
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高松港行き高速艇が出る家浦港。豊島を発つとわずか40分ほどで高松港に着く
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展望台から瀬戸内海を眺める。東西を走る大型船と、南北を結ぶ小型船が頻繁に行き来する
<取材・文・撮影/大野雅人>