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【社会】

「九条守れ」俳句、今後も不掲載 世論二分なら排除

2014年7月30日 07時08分

掲載拒否に委員から批判が相次いだ「さいたま市公民館運営審議会」の会合=29日、さいたま市大宮区で(岡本太撮影)

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 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ市民の俳句を、さいたま市大宮区の三橋(みはし)公民館が月報への掲載を拒否した問題で、稲葉康久・市教育長は二十九日の定例会見で、「世論を二分しているものは月報にそぐわない。今後も掲載しない」と述べた。

 市教育委員会は、今後の月報で俳句を掲載するかどうかを再検討していたが、掲載されないことがほぼ確実になった。

 市教委は今回の問題を受け、各公民館での市民の文芸作品などの掲載について、独自の基準づくりも進めている。稲葉教育長は「集団的自衛権の問題が背景にあり、掲載すべきではなかった。今後もこの立場をご理解いただく」と話し、「世論を二分するような」テーマの作品は載せない基準にする考えを示した。

 掲載拒否は、六月下旬に公民館が作者の女性らに連絡して判明。市教委は今月八日にいったん「今後も掲載しない」としたが、市民らから「表現の自由が萎縮する」などの批判が出て、十五日、一転して再検討の方針を明らかにした。

 清水勇人(はやと)市長も十七日の会見で「世論が大きく分かれる問題で一方の意見を載せると、市の意見だと誤解を招く。(掲載拒否は)おおむね適正だ」と述べた。

◆「多様な学び 行政介入すべきでない」公民館審議会

 今回の掲載拒否問題への批判は、日に日に高まっている。市教委や市に掲載を求めている団体職員武内暁(さとる)さん(66)=さいたま市中央区=は「世論を二分するものを、なぜ載せてはいけないのか。公民館の主役は住民。基準で縛ろうという発想がおかしい」と憤る。

 二十九日に開かれた「さいたま市公民館運営審議会」でも、有識者や住民代表の委員から、公民館や市教委の対応に厳しい意見が相次いだ。

 審議会は大学教授、NPO法人や住民の代表ら十三人が、公民館の運営のあり方を話し合う。この日の会合では掲載拒否問題を約一時間にわたり議論。委員長を務める安藤聡彦(としひこ)・埼玉大教授(社会教育学)は「公民館運営の根本に関わる問題だ」と指摘した。

 大高研道(おおたかけんどう)・聖学院大教授(同)は「『梅雨空−』の句を問題にすれば、(公民館の月報などに載せる)すべての作品を、政治的かどうか判断しなければならなくなる。公民館は多様な学びの場を保障するのが役割で、行政が介入するべきではない」と批判した。

 稲葉教育長の定例会見は審議会の会合後にあった。教育長の発言を聞いたある委員は「審議会の議論とはまったく逆の方向だ。何が世論を二分しているかなど判断できるはずがないし、するべきではない」と反発した。 (岡本太)

(東京新聞)

 

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