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【社説】

秘密保護法 官僚に都合いい基準だ

 特定秘密保護法について政府が意見公募中だ。その運用基準の素案は、官僚に都合よくできている。秘密指定や解除などが曖昧な点は変わりがなく、国民の「知る権利」への侵害を強く懸念する。

 ルールを守らせるには、守らなかったとき、ペナルティーを科すことだ。秘密保護法は官僚が恣意(しい)的に秘密の指定を行う恐れが指摘されてきた。だからこそ、官僚に対するペナルティーの視点は欠かせない。だが、残念ながら、運用基準の素案には、その仕組みがない。最大の欠陥といえる。

 防衛や外交、特定有害(スパイ)活動、テロ活動の四分野で、法は別表で二十三項目を秘密事項と定めた。今回の素案は、全部で五十五の項目を並べた。数だけに着目すると、あたかも具体的に明示しているような錯覚に陥る。

 ごまかしではないか。例えば、防衛分野の事項の中で、唐突に「米軍の運用」という言葉が素案に登場する。これは秘密保護法にない言葉だ。なぜ法にない概念が素案に盛り込まれるのか。特定秘密の範囲が拡大する恐れがある。

 外交分野でも曖昧用語が交じる。「国際社会の平和と安全の確保」などという漠然とした言葉が出てくるのだ。特定有害活動という概念も依然、抽象的である。あやふやな言葉が闊歩(かっぽ)している限り、どのようにでも解釈できよう。

 秘密の解除も、官僚のさじ加減になる可能性がある。指定期間が三十年超だと歴史公文書は国立公文書館に移管される。三十年以下だと、首相の同意で廃棄することもできる。このような基準では、仮に官僚がオープンにしたくないと考えれば、あえて三十年以下の指定期間にし、廃棄してしまうことも可能になってしまう。

 そもそも「歴史公文書」という言葉も曖昧で、その判断さえ恣意性を帯びる。すべての特定秘密は指定期間を過ぎたら、公文書館に移管し、公開すべきである。

 「法を拡張して解釈してはならず、必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って指定する」−。これが基本的な考え方だという。だが、訓示規定にすぎない。ペナルティーのない世界では、違法不当な指定もまかり通る余地がある。

 訓示規定を官僚が忠実に順守すると考えるのは楽観的だ。

 チェック機関を政府内部につくっても、信頼はされない。そもそも欠陥法なのだから、基準で取り繕うとするにも無理がある。法の廃止を求め続けたい。

 

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