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ぼっち転生記 作者:ファースト

半年後

   ◆

 ――半年が過ぎた。

 この半年間はかなり順調に色んな計画が進んだ。

 そうそう、大草原にある家も、拡張と増築を重ね、ちょっとした屋敷といえる規模になっている。

 家(屋敷)の隣には、異性が苦手らしい獣半人ウォルフ専用の小屋(レンガ造り)を建ててもいる。
 犬小屋――ではない。
 十分な広さを持つ一軒屋だ。
(自分専用の家を俺が与えてやったことに、ウォルフはとても喜んでくれた)

 また、家(屋敷)を囲む土壁は三重になっている。

 元々、家を中心として半径五十メートルの円周に、三メートル以上の高さで築いていた土壁には、出入口ようの木製ドアをつけてもいた。
 土壁は大地の精霊ノームに協力してもらっていたが、木製ドアは木も含めた植物の精霊ドライアードに手伝ってもらい制作したものだ。

 さらに、大地の精霊王ベヒーモスの力を借り、家(屋敷)から半径百メートル程の円周で巨大な城壁(第二の壁)も作った。
 高さは十メートル、厚さは一メートルを超える、土の城壁だ。
 ドアも設置している。

 そして、先月、第三の壁までつくった。
 それも大城壁を、
 半径は三百メートル前後、円周にして約二キロ、高さ二十メートル、厚さ三メートルを超す大城壁をつくったのだ。
 精霊使いとしての実力が、日々増している俺が、大地の精霊王ベヒーモスに頑張ってもらった。
 一度では作りきれず、何度かに分けて完成させたが。
 完成させるのに、物凄く疲れてはした。

 でも、建ててよかったとは思う。
 なにせ、高さ二十メートルの城壁など、この世界でもそうそうないようなのだ。
 半年前に購入したユーシア大陸博物学(全五巻)によるとだが。
 前世の記憶にある、東ローマ帝国の帝都コンスタンティノープルでも城壁の高さは十数メートルであったことを考えると、我ながら大した大城壁を作ったモノだと思う。
 奴隷達も第三の壁(大城壁)を見あげて、その圧倒的高さと壮大さに度肝を抜かれていた。

 ちなみに、第三の壁(大城壁)の前後には、『溝』も掘ってある。
 大地の精霊王ベヒーモスやノームたちに協力してもらってな。
 外掘りと内堀だ。
 外掘りは水の張られていない空堀りだが、深さは十メートル以上。
 内堀は、大草原を流れる大河から水を引いてきた水堀だ。
 水が綺麗なので泳ぎを楽しむこともできる。
 昨日も、俺が買ってやった水着を着た奴隷達が楽しそうに水堀で泳いでいた。
 また、水堀には魚もたくさんいるので、釣りを楽しむこともできる。

 その辺の野生動物や魔物モンスターが大群で襲ってきても、ビクともしない大城壁でもある。

 巨人が大挙して進撃でもしてこないかぎり、まず安泰だろう。

 ………………。

 巨人の名を出したが、大森林に数多く住む巨人どもが進撃してくるフラグにはならない…………はずだ。



 話しは変わるが、明日の誕生日で十一歳にある。

 この世界、少なくとも俺が住んでいる国では、あまり派手に誕生日を祝うという習慣はないが。
 国家的行事となる王族や、財のある大貴族・大豪商は別のようだけど。
 平民やホークウッド家のような下級貴族では、ごく簡素に祝うだけである。

 そういえば、前世でも友人を呼んだ誕生日パーティなど一度も開いたことはないな。
 というか、他人の誕生日パーティに呼ばれたことも無い。
 当然と言えば、当然だ。
 誕生日を祝ったり、祝ってくれたりする友達など、一人もいなかったのだから。
 ある程度、年齢がいってからは、家族ですら俺の誕生日を完全スルーしていたし。
 一人ソロでの誕生日パーティをどれだけの回数しただろう。
 いや、正確にはペットの九官鳥に祝ってもらえてはいたが。
 賢い九官鳥キューちゃんに、誕生日の歌を覚えさせて――この話はここまでにしておこう。



 それより、半年経った現状の説明だ。

「ユニコーン牧場は――現在、二百頭を超す牝馬がユニコーンの子を孕んでいる、な」
「そうそう、孕みまくりなの。アッシュ君の『矯正』が効いて、ユニコーンたん、非処女ちゃん相手でも交尾しまくりの、孕ませまくりなの」

 俺の独り言が聞こえたようで、肩に止まっていた風精霊のシィルが合いの手を入れてきた。
 さらに、

「このペースで増やしていけば、十年後にはユニコーンたんが五千頭ほどになるの。すっごいの」
「それはちがうぞシィル」
「ほぇ?」

 第二の壁と第三の壁に囲まれた第三中庭で座っている俺は、シィルの間違いを正してやった。

「一年で五百頭程度しか増えないのは数年間だけだ。これから生まれるユニコーンが大人になり、繁殖可能になれば、一年に孕ませられる牝馬の数もそれだけ増える」
「あ、そうかっ!」
「俺の計算では、十年後には一万頭を遥かに超えているはずだ。順調にいけばだが」
「ほぇ~~~~~~~っ!!!! 超すっごいのっ! ユ、ユニコーン王国が誕生しちゃうのっ!!!」

 飛び上がって驚くシィル。

「二十年後には、十万頭を超しているかもしれん」
「ほぇぇぇぇぇぇぇぇえええぇっ!!!??? ユ、ユ、ユニコーン大帝国が誕生しちゃうのっ!!!!!!!」

 あくまで計算上の話だけどな。
 そもそも、後、四年と半年が経つ前に、この大草原からは一時避難しないといけないし。
 南の彼方にかろうじて見える真炎山で眠る――真竜王ゾグダリズが起きてきやがるから。

 …………。

 移転は相当面倒だろうし、倒せるものなら真竜王を倒してやりたい。
 でも、無理だろうなぁ。

「いまのところはまだ、老衰で無くなるユニコーンも一カ月に一体かそこらだ」
「だから、ゲットできるユニコーンの角も一カ月に一本だけなの」
「うむ」
「あ、でも、ユニコーンの数がそれだけ増えれば――」
一月ヒトツキに老衰するユニコーンの数も相当増える」
「角、ゲットしまくりなのっ!!!」
「群れの総数における約0.5%が一カ月に老衰死しているようだからな。その計算からすれば、十年後には、一か月に五十本を超すユニコーンの角が手に入る予定だ」
「うひゃ、五十本っ!」
「二十年後には、五百本以上だ」
「うっひゃぁぁぁあぁあぁあっ!!! そのへんに捨てる程ユニコーンの角が手に入りまくるのっ!!!」

 いや、どれだけ角が取れるようになっても、捨てはしないだろうけど。
 しかし、五百本、か。
 供給大増加によるかなりの値崩れを考慮しても、一か月に大金貨五千枚以上にはなるだろう。
 年間なら大金貨六万枚。
 日本円にして、約六百億円。

 …………途方もない金額だ。

 大金貨六万枚というと、この世界においては、小国の年間国家予算、あるいは中規模都市の年間運営予算以上でもある。
 いや、まぁ、二十年後に角が一カ月五百本以上とれるというのは、あくまで計算上の話だけど。
 十年後に、角が一か月五十本取れるようになるのですら、そうそう上手く計算通りに事は運ばないと思う。

 だが、仮に順調に事が進めば。

 十年後の段階でも、年間で大金貨一~二万枚というの収入が期待できる。
 並みの貴族が保持する全財産以上の大金が手に入る計算だ。
 順調に事が進めば、だが。
 なんにせよ、ユニコーン牧場が莫大な利益を生み出すようになるのは、まだまだ先の話だ。
 現在のところ、ユニコーン牧場よりコカトリス牧場(養コカトリス場)の方が、利益をあげている。

「三十羽前後のコカトリスを集めたコカトリス牧場一か所で、毎日、三十個近い卵が手に入っているしな」
「コカトリスたん達は、金の卵を毎日産んでくれてエライエライなのっ!」
「大きさも品質も最高クラスだとメルル婆さんが認めてくれているおかげで、卵一個、金貨四枚になってもいる。三十個で金貨百二十枚つまり大金貨十二枚」
「今、コカトリス牧場は十か所あるから……え~と、え~と」

 指を使って計算しだす風精霊のシィル。 
 いや、十倍するだけの、非常に簡単かつ単純な計算なのだが。

「大金貨百二十枚だ」
「い、いま、計算終了したから、言うつもりだったのにっ!」
「そいつは悪い」
「うんうん許してあげるの。でも、一日に百二十枚なら一年間で…………え~と、え~と」
「…………」
「え~と………………え、え~と」

 頭から湯気をだすシィル。
 ショート寸前の気がする。

「年間で――」
「駄目っ! 言っちゃ駄目なのアッシュ君っ!!! 私がちゃんと計算するのっ」
「…………」
「え~と、え~と…………………………う~~~ん、バタン、キュー」

 俺の肩の上で、バタッと倒れる風精霊。

「答え、言ってイイか?」
「う、うう、お願いなの。降参するの」
「四万三千八百枚だ。年間で」
「アッシュ君は暗算能力も凄いのっ!!!」

 以前、紙に書いて筆算で答えを出したのを覚えていただけなのだが。

「……現段階ではコカトリス牧場(養コカトリス場)が、一番の収入源だ」
「コカトリたん様様なのっ。ただ、コカトリスたんは、繁殖力が低めみたいなの。だから、なかなか数が増えそうにないの」
「そうだな。やはり将来的には、ユニコーン牧場に収入は逆転されるだろう」

 俺がかなりの数を毎日安定供給しているのでコカトリスの卵は、供給過多になりつつあるし。
 城塞都市カレという都市単位でなく、もはや国レベルで。
 もうそろそろ、値も崩れてくるだろう。
 そうなれば、コカトリス牧場の収入も目減りしてしまう。

 …………他国への販売も視野にいれるべきか?

 まぁ、コカトリス牧場にはこの半年だけでも十分稼がせたもらった。
 なにせ、一日に大金貨百二十枚の収入が入っていたのだ。
 日本円にして、一億円以上。
 コカトリス牧場のおかげで、欲しかった『魔法の城』を購入可能な程、金も貯まった。
 お値段、大金貨一万枚という『魔法の城』を、である。
 明日、城塞都市カレに行って、『魔法の城』を購入するつもりだ。
 自分への誕生日プレゼントとして。

 さらには明日、この大草原とその周辺を領土とした――『国』の建国を宣言する。

 …………言うだけなら、タダだし。

 やはり、
 男なら一国一城の主を目指さなきゃね、である。

 もっとも建国宣言といっても、別に対外的な承認・認知を他国から得るわけではない。
 得られるとは思えないし、得る気もない。

 建国宣言といっても、まさに、俺が勝手に言うだけ、なのだ。

 お遊びみたいなものだ。

 王様ごっこ、ともいえる。

 前世の記憶にもある、飲み会などの定番といえる王様ゲーム(王様ごっこ)は………………一回もしたことはないが。

 ちなみに国花は『ゴムの木』の一種である『ユーシアゴムノキ』にしようと思う。
 前世の記憶にある日本では、観葉植物として栽培されることもあるインドゴムノキにかなり似た樹木だ。
 大森林ほどではないが、大草原から南の地にある、かなり広い森(命名、ゴムの森)にたくさん生えていた。
 観葉植物として鉢に入れ、大草原の家でも飾っている。
 幹に傷をつけると出てくる乳液がゴムの原料になるはずなので、今後、各種ゴム製品の開発・生産に力を入れても面白そうだ。
 …………避妊具も含めて。
 なにせ、インドゴムノキから出る乳液は、ゴムの原料としては劣るようだが、『ユーシアゴムノキ』の乳液は含有率が凄いらしいのだ。
 もっとも、ユーシア大陸にも、それほどの数、『ユーシアゴムノキ』は生えていないらいい。
 ユーシア大陸博物学(全五巻)によるとだが。
 俺が発見・命名したゴムの森は、大陸最大の『ユーシアゴムノキ』の森かもしれない。

「アッシュ君、アッシュ君」
「なんだよシィル」
「ユニコーン牧場やコカトリス牧場だけでなく奴隷牧場の方も、順調だよね、なのっ!」
「ん? ああ、まぁな」
「でも、私、思うの。
 子供の奴隷を買ってきて、剣技を教えたりして、一流の戦士に鍛え上げ、大人になったら剣闘士や奴隷兵士として売り飛ばすっていうアイデア自体はいいの。
 でも、どうせなら、売り飛ばさず、そのまま手元に持っておくことをお勧めするの」
「…………」
「それで、一流の戦士を揃えたサイキョーの奴隷兵士軍団を作るのっ!」
「そんなもの作ってどうするんだよ」
「世界征服するのっ!」
「……ハァ?」

 拳を天に向けて突き上げている風精霊にたいして、俺は呆れてしまった。

「男の夢なのっ! 浪漫なのっ!」

 馬鹿馬鹿しい。
 俺はあくまで、鍛え上げて奴隷共を剣闘士や奴隷兵士として売り飛ばし、利益をだすために奴隷の子供達を買取り、養っているのだ。
 ビジネスとして。

「だって、売り飛ばしても、養育費を考えたら正直、赤字になると思うの」
「…………」
「それは、子供達にとってはとてもイイ話なの。
 剣闘士や奴隷兵士として売られても、一流戦士といえるほど剣の腕前があれば、かなり良い生活は出来るとは思うし。
 死ぬまで牛馬の如くこき使われるド貧しい農奴なんかより、よっぽどイイ生活が出来るとも思うの。
 奴隷牧場の生活自体も快適だし、奴隷の子供達にとっては本当に良い話なの。
 美味しいご飯もお腹いっぱい食べられているし。
 でもでも、売却価格から養育費を引いて赤字になるなら、アッシュ君にとっては全然良くない話なの」
「…………」
「ダメダメなの」
「……いや、あのな」
「アッシュ君がしているのは、ビジネスになってないの。慈善事業なの。アッシュ君が福祉的慈善事業のつもりで奴隷牧場を作ったのなら、別にいいけどぉ」

 奴隷牧場に、福祉的意味合いが込められているのは認める。
 しかし、俺は完全な慈善事業として、奴隷牧場をつくったわけではない。
 勘違いしないでくれ。

「それは違うぞシィル」
「ほえ?」
「確かに奴隷牧場の子供たちが『一流程度』の戦士にしか育たなければ、赤字になるだろう。だが、『超一流』まで育て上げれば、売却値も跳ね上がる。十分、利益だって出る」
「『超一流』の戦士なんて、そうそう育たないと思うの」
「教える人間が並みなら、そうだろう。だが――」

 俺は第二の壁にある扉をあけ、こちらに近づいてくる獣半人を指さした。

「超がいくつもつく腕前を持つ、極上……いや、最極上戦士が教官なら、話は別だ」

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