事態を打開するため、まずは今そこにある貧困の解消に力を注いでほしい。

 子どもの貧困率が、過去最悪の16・3%(2012年)に達した。子どもの6人に1人が、平均的な所得の半分を下回る世帯に暮らしている。

 この数字は、先進国の中では最悪クラスだ。しかも、この30年近く、率の悪化に歯止めがかからずにいる。

 政府は「子どもの貧困」対策の大綱づくりを進めている。そこに何を盛り込むか。

 有識者による検討会の提言には多岐にわたる対策が並んだ。とくに、教育支援策が充実している。

 教育は子どもに自立できる力をつける。親から子への貧困の連鎖を断つために大切だ。

 ただ、今すでに貧困にあえぐ子を救うには、まず保護者の貧困を改善する必要がある。深刻なのは貧困率が5割に及ぶひとり親世帯、とくに母子家庭だ。

 母子世帯の母の8割は働いているが、仕事による年収は平均で180万円にすぎない。生活保護を受けているのは1割ほどだ。働いても貧しさを抜け出せないところに根深さがある。

 大きな要因は、不安定な非正規雇用が半数に及ぶことだ。たとえば、収入の低いシングルマザーを正規で雇い入れた企業には助成をする、といった思い切った手を打てないか。

 根本的には、雇用の構造から生じている問題だ。非正規雇用を正規にかえていく努力をしなければ、貧困に苦しむ人はなくならない。非正規の待遇改善も必要だ。

 検討会では「収入の低いひとり親家庭に支給される児童扶養手当を増額してほしい」との声が、当事者や支援者から上がった。優先順位は高いだろう。

 貧困の根絶には息の長い取り組みが要る。それは貧困率に長年歯止めがかからなかったことからも明らかだ。大綱を作って終わりにしてはならない。

 政策の効果を検証できるように、大綱には貧困率や進学率、就職率などを改善する数値目標を定めておくべきだ。

 生活の苦しい家庭の子どもに学習や食事を支援する民間組織は各地にあり、効果をあげている。ただ、どこもメンバーの献身的な努力に支えられているのが実情で、運営は厳しい。

 検討会では、こうした活動の支援にも使える官民基金の創設が提案された。わが子や孫だけでなく、よその子にも出来る範囲で手をさしのべる。社会で子どもを育てるために、そういう仕組みがあっていい。