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 「殺しちゃったんだけど」。こんな題名の書き込みがインターネット上の掲示板に表れた。

 長崎県佐世保市の県立高校1年の女子生徒(15)が殺害された26日夜のことだ。赤い血に染まった手にも見える写真が同時にアップされた。そばの書き込みには「出血はそんなにしていない」との言葉。

 翌27日早朝、この女子生徒を殺害した容疑でクラスメートの少女(16)が長崎県警に逮捕された。ツイッター上の赤い手の写真は、実際の事件と関連づけられ、一気に拡散した。

 長崎県警は、27日の段階から、この写真が事件と関連する可能性は低いとみている。背景の部屋の様子などが事件の現場とは異なっていたからだ。

 「佐世保、高1、殺人」。市内の高1の女子生徒は27日、あるツイッターの投稿に気づいた。思わずリンク先をクリックすると、血の付いた手のページが出た。「これ犯人なのかな」。そうメッセージをつけて、リツイート(転載)してしまった。

 「本物だと信じ込んでいたけど、『釣り』(だますためにうそを書き込むこと)だと後にツイッターで流れてきた。本当か分からないのに、拡散させちゃった」と後悔する。

 逮捕された少女と同じ高校の1年生男子は28日夜、自宅のベッドに寝転んでいるとき、スマートフォンに「加害者の顔写真」というメッセージを受けた。自分が入る無料通話アプリ「LINE(ライン)」のグループあてだった。「こんな人なんだ」。そのときはそう思ったが、すぐに気味が悪くなった。「なんでこんなのが拡散するんだろう」

 少女らが通っていた学校は28日、事件を受け全校集会を開いた。だが、10人の生徒が欠席。2人と同じ1年生3人の保護者からは「事件で不安定になっているので欠席させたい」と連絡があったという。

 学校に着いても教室に入れない生徒や、集会の途中で体調不良を訴える生徒もいた。計25人がスクールカウンセラーの面談を受け、このうち18人はカウンセリングの継続が必要だと判断された。

 長崎県内の公立高では原則、携帯電話の校内持ち込みは禁止されている。だが同校によると、ほとんどの生徒が携帯を持っている。

 学校には27日、保護者から「生徒たちがLINEなどで(事件について)やりとりしている。やめさせるべきだ」という意見が寄せられた。校長は集会で「いろんな情報がネット上に錯綜(さくそう)しているが、流されないでほしい。情報を不用意に流すこともしないでほしい」と呼びかけたという。

 何の罪もない高校1年の女子生徒が、残忍な手口により、変わり果てた姿で見つかった悲劇。その痛みを増幅させるような、ネット上のやりとりに、どう対処すればいいのか。

 「ネットの情報にさらされるほど、事件が生活に侵入し、痛みを繰り返し体験することになる」。トラウマケアが専門の関西学院大の池埜聡教授は指摘する。ただ、LINEのやりとりなどの禁止については「不安を話すはけ口がなくなったと感じてしまうかもしれない。代わりに気持ちを話せる窓口を設ける取り組みが必要だ」と指摘する。

 九州産業大の福田馨教授(情報セキュリティー)は「大人がネットを見せないようにすると、子どもたちは逆に本当のことがネットにあると思い込んでしまう。情報の真偽を意識する『メディアリテラシー』を身につけさせることが大事」と話す。