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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~ 作者:Sky Aviation

第5章 ~反撃開始! 沖縄・南西諸島を奪還せよ!~

〔F:Mission 10〕対艦攻撃⇒ASM-3超音速の槍

―AM09:12 奄美大島より北北西100海里地点
             日本国防空軍AWACS『E-767“アマテラス”』―





「全機に告ぐ。敵艦隊が射程に入った。データリンク開始。目標配分データを送る。データに従え」

 それと同時に、本機から対艦攻撃に向かう部隊に対してデータリンク。
 目標の情報が送られる。

 このとき、F-2対艦攻撃部隊は敵主力艦隊より北東100里地点にいた。
 もうすでに射程に入りつつある。
 今現場にいる部隊は以下のとおりだ。

【F-2対艦攻撃部隊概要】
対艦:F-2A戦闘機 ×30
    |―ASM-3 ×4
     ∟―AAM-4B/C ×2(自衛用)
護衛:F-35J ×20
    |―AAM-4C ×4
     ∟―AAM-5C ×4
   F-15J/MJ ×30
    |―AAM-4B/C ×4
     ∟―AAM-5B/C ×4

 総勢80機の大編隊。
 これらの攻撃が一気に敵艦隊に襲い掛かる。
 ASM-3はいわずと知れた超音速対艦ミサイルだが、最近になってさらに小型化にも成功。
 そのおかげで元々2発しかつめなかったものが従来どおり4発つめるようになった。
 護衛にいるF-35Jは、国際共同開発のF-35Aの日本版であるが、生産が間に合わずまだ30機ほどしか受け取っていない。
 これはそのうちの20機だ。残りの10機は九州で待機中。
 また、これのほかにも、空母『あかぎ』『かが』を就役させるにあたり急遽買い取ったF-35Bの日本版に改造してもらったF-35BJがあるが、こちらはB艦隊にいる。

 ASM-3の射程には入っている。
 本機とのデータリンクをフル活用すれば、より正確な照準が可能であろう。

 対する敵艦隊も、相当な大艦隊だ。

 東海艦隊をつかさどる中心とも言える存在であることに間違いはない。
 概要も表しておこう。

【中国海軍『遼寧機動艦隊』本隊概要】
旗艦:正規空母『16“遼寧”』
駆逐:旅洋りょようII型(052C型)『150“長春ちょうしゅん”』
            『151“鄭州ていしゅう”』
            『152“済南さいなん”』
            『153“西安せいあん”』
   ソヴレメンヌイ級(596型)『137“福州ふくしゅう”』
フリ:江凱えがいII型(054A型)『548“益陽えきよう”』
            『549“常州じょうしゅう”』
   江凱えがいI型(054型)『525“馬鞍山まあんさん”』
           『526“温州おんしゅう”』
   江衛ええいII型(053H3型)『521“嘉興かこう”』
             『523“莆田ほでん”』
             『524“三明さんめい”』
   江衛ええいI型(053H2G型)『539“安慶あんけい”』
             『540“淮南わいなん”』
             『541“淮北わいほく”』
             『542“銅陵どうりょう”』
   江滬えこIII型(053H2型)『536“蕪滬かぶこ”』
             『537“滄州そうしゅう”』
   江滬えこI型(053H型)『517“南平なんへい”』
            『518“吉安きつあん”』

 以上の総勢21隻。
 中には先の艦隊戦での生き残りで急遽合流したものもいる。
 本当はもっといたのだが、一部はさっきも言った艦隊戦で戦闘不能に陥った艦が母港に戻るのを護衛しに行った。

 これらに対して総勢30機のF-2から4発。つまり、単純計算で120発のASM-3が飛んでいくことになる。
 ……まあ、簡単に言うけど、これ一発にかけているんだよな。
 この攻撃が失敗したらもうASM-3も残弾少ないし、次の攻撃といったらASM-2でするしかないが、ASM-3で出来なかったものがASM-2で出来るとは限らない。

 これ一発に、すべての勝負をかける。

「島、今現在のF-2部隊の位置は?」

 ここの指揮官が聞いた。
 俺は即座に答える。

「現在敵艦隊より北西100海里地点。座標をディスプレイに出します」

 目の前のキーボードを操作すると、向かって機首側の壁に立てかけられている大型ディスプレイにそのF-2の座標が表示される。
 北緯29度55分0秒71、東経127度45分11秒85。
 高度は低空。1,000ftもない。

「よし、データリンクは済ませたな?」

「すでに」

「では直ちに攻撃開始命令を。浜口、今現在戦闘中の護衛のF-15とF-35に本部隊攻撃指示」

「了解」

 機内がにわかにあわただしくなった。

 実はこのとき、すでに護衛の戦闘機部隊は戦闘を開始していた。
 どうやら本土から上がってきた防空戦闘機らしく、こっちの状況を読み取るとそうはさせじと攻撃を仕掛けてきた。
 しかし、相対比率はまさに1:2。わがほうが有利であることに違いはなく、ちょうど互いに打った中距離ミサイル戦の決着が付いたところだった。

 その結果……、

「双方の中距離ミサイル弾着。敵勢力約30%~40%減衰。味方の損害約20%」

 ほとんど優劣は変わらなかった。
 敵戦闘機は未だにこっちに来ている。どうしてでもここを通さないつもりらしい。

 だが、もう時間的に遅い。

 俺もすぐに攻撃指示を出す。

「『アマテラス』よりトゥF-2全機へオール・ヴァイパーゼロ。時間だ。……超音速の槍を放て。攻撃開始」

 たまにはジョーク混じってもバチはあたらねぇ。
 実際超音速の槍なのには間違いない。これを迎撃できる槍なんてほとんどないしな。
 速射砲弾という名の石ころを使っても完全には無理だ。

 F-2もすぐに動いた。
 少し機間を離し、そこからさらに多数の小型目標がどんどんと飛んでいく。
 とんでもない速さ。ASM-3に間違いない。
 幸いF-2に被害はこれっぽっちもない。というか、そもそもこっちで早く接近を察知して即効で護衛部隊を向かわせたからなのだがな。

 全機がASM-3を撃ち終わるのにさほど時間はかからない。
 F-2はそのまま一時退避した。後の誘導はASM-3任せ。
 打ちっぱなしとはまた違うが、細菌のではさらに誘導性能をアップデートし、GPS誘導の性能強化、いざとなったらこのAWACSからの目標データを発射母機中継で送ることによって母機自体が誘導を完全にする必要はなくなった。

 F-2が全機反転しきると、護衛部隊もそれに合わせて少しずつ交代しつつ護衛。
 敵はそれ以上執拗な攻撃はしなかった。もうASM-3は放たれたから攻撃しても意味ないと判断したんだろう。

 今度は艦隊からの対空ミサイルだった。
 多数の小型目標が分離し、ASM-3に飛んでいく。

 だが、それらをすべて捉えるのは至難の業だった。
 そうでなくてもステルス性が考慮されて捕捉されにくいのに、それに加えてこの超音速。
 速度を出しにくい超低空でもM3,2を出す。……もちろん本当はもっと出せてM5,5なんだけど。
 それもあってか、迎撃されたものはあったにしろ、さほど数は変わらない。
 今打ったのは艦隊防空用の中距離空対空ミサイルだろうが、それを撃てる艦が艦隊内の艦船総数に対していくらか少なめな関係か、多く見積もっても1/3ないし1/4くらいしか落とせてない。
 しかもその間にも超音速で飛んでいくのでもう後は個艦で防衛するしかなくなり、今度はほとんどの艦から対空ミサイルが発射。
 短距離の個艦防衛用だろう。
 一気に複数発。それでも、まだ残ったには残った。
 数えてみたら総数60発前後。しかも、旗艦の空母『遼寧』に向かっている6発は未だに健在だった。
 さらに蘭州級駆逐艦に向かっているものも健在。
 ……ここからどこまで落とせれるか、見ものだな。

「敵艦隊の防空網突破しつつあり。先頭の第1弾弾着まで10秒」

 ほかからも報告が来た。

 後10秒。もう近接火器も総動員か。
 当たり前だがミサイルはもう使えないな。近すぎるし。

 おそらく、速射砲なりCIWSなりRAMなりを撃ちまくってるころだろう。

 ……超音速の槍を捉えれるかな?

「インターセプトまで5秒。……4、……3、……2、……1、……マークインターセプト」

 その瞬間、迎撃し切れなかった艦に対して無慈悲な攻撃によって放たれた超音速の槍が突き刺さった。
 次々とそのASM-3が敵艦に突き刺さり、消滅する。

 結局、総勢で1/2程度しか迎撃できなかった。いや、超音速でこれだけ迎撃できればむしろ御の字と見てもいいだろう。
 相手が相手だ。これを半分も迎撃できたのはむしろ自分達の腕の高さを証明したことにもなる。
 ……まあ、全部迎撃できないと意味ないことは確かだが。

「敵艦に多数の命中弾確認! 旗艦『遼寧』にも計4発弾着確認!」

 ほかの管制官が興奮交じりで報告すると、この場が一気に盛大な歓声に包まれた。

 アジアで無敵を誇っていた東海艦隊の奴らを沈めた。
 特に、旗艦遼寧の攻撃成功は大きかった。
 これで戦局は大きく傾く。
 俺達側に、大きく傾く結果となるだろう。

「でかしたぞ空軍連中め! これで奴らのここの海域の主導権は握ったも同然だ!」

「俺達も空軍連中ですけどね……」

 そんな俺のツッコミにはかまわず、未だに鳴り止まない歓声。
 管制(官)が上げる歓声はこんなにもでかいのだな。
 ……中々うまいことをいったぞ。我ながら。

「敵艦隊の損害を報告しろ。衛星からの画像データリンク。弾頭画像の解析も急げ」

「了解」

 ほかの管制官に指示を出しまくる中、俺も部隊に指示を出す。

「『アマテラス』よりトゥF-2全機へオール・ヴァイパーゼロ。よくやった。敵艦隊の大損害を確認。各機、帰頭せよ。RTB」

 F-2全部隊からの了承の返答が来ると、護衛とともに九州方面に帰頭し始めた。
 結果的にF-2に損害はなし。護衛のF-15とF-35が中距離ミサイル戦及びその後の格闘戦でいくらか損害が出たが、全体的に見ればさして気にするほどのものでもなかった。

 文句なしの、勝利の凱旋だった。

「敵艦隊の損害詳細が出ました。ディスプレイに出します」

 敵艦隊の情報の解析が終了した。
 ほかの管制員がキーボードを操作し、すぐに先ほど俺が表示させたディスプレイに重ねて表示する。
 敵艦隊の情報の一覧が出る。

 その情報をまとめるとこうだ。

撃沈:旗艦⇒正規空母『遼寧』(ASM-3、4発命中により損害甚大。大傾斜)
   駆逐艦『長春ちょうしゅん』(おそらく轟沈。弾薬庫誘爆の可能性。)
    〃 『鄭州ていしゅう』(おそらく轟沈。機関誘爆と予想)
    〃 『福州ふくしゅう』(艦尾に被弾。浸水拡大)
   フリゲート『益陽えきよう』(艦首側に被弾。浸水拡大)
     〃  『嘉興かこう』(水面下に被害拡大。傾斜増大)
     〃  『三明さんめい』(破口発生。爆発はせずも浸水拡大)
大破:駆逐艦『済南さいなん』(艦橋大破。電子機器全壊)
   フリゲート『温州おんしゅう』(艦首に被弾。艦首全壊につき速度極低下)
     〃  『安慶あんけい』(艦腹に被弾。戦闘不能)
     〃  『淮北わいほく』(艦橋大破。戦闘続行不可)
     〃  『滄州そうしゅう』(電子機器全壊。射撃管制能力損失)
航行不能:フリゲート『常州じょうしゅう
       〃  『淮南わいなん
       〃  『銅陵どうりょう
浸水拡大:フリゲート『馬鞍山まあんさん』(右舷に破口発生)
       〃  『南平なんへい』(艦首に破口)
中破:フリゲート『莆田ほでん』(射撃管制システム全壊)

 ……こうしてみると、とんでもない大損害だな。

 いくらASM-3の威力が高かったとはいえ、1発や2発当たっただけでこんなになるのか……。
 こりゃ数分前まであった遼寧機動艦隊の威厳もあったものではない。

「大損害だな……、これで、沖縄をつかさどる力も失ったな」

 指揮官も確信したように言った。
 こんな有様では、俺達を止めたりするどころか、そもそもここを普通に守ることすらままならない。

 しかも、やられたのがほぼ新鋭の主力艦。
 いくら元からそっちが厄介なのでそれをしとめるのを最優先させて目標配分したとはいえ、そのおかげで生き残るのが旧式中心とはなんと言う皮肉なんだろうかね。
 唯一新鋭でいるのが蘭州級の『西安せいあん』だけという有様だ。

 こんな状態では、とてもじゃないが今後の作戦行動は期待できない。

 ましてや、今北と東から来ている艦隊をとめるなんてことは不可能だな。

「……ッ! 敵艦隊、その場を遊弋する一部の艦を除き後退します」

 管制員の報告だ。

 レーダー上でも、どうやら生き残った艦は撤退を始めるようだ。
 ここにいてもやられるだけだしな。さっさとひいたほうが吉だろう。
 判断自体はいい。
 だが、それは俺達の侵攻を見ているということになるだろう。
 ……まあ、どの道自分達にとって負の結果しか返ってこないだろうがな。

「今残っているのは大破艦か、それとも救助のためにたまっている艦かだな」

「どうします? まもなく北方のA艦隊の射程に入りますが?」

「攻撃はさせなくていい。どっちにしろ、もう戦闘能力は残っていないはずだ。ただし、攻撃を仕掛けてきたら自衛権を発動してもいい旨の内容を伝えておけ」

「了解。A艦隊旗艦『いずも』に指令を出しておきます」

 A艦隊は先ほどからずっと北からの進軍を続けている。
 もうすぐ艦隊の攻撃圏内に入るけど、積極敵は攻撃はさせないみたいだ。
 まあ、一々してる暇もないんだけどな。

「……ッ!」

 すると、また報告が来た。

「B艦隊に動きです。上陸第1派。上陸開始。繰り返します。上陸第1派上陸を開始しました」

「きたか……」

 B艦隊。南東から来る主力艦隊で、大量の揚陸艦をまかなった艦隊だ。
 まだLCACを出すには少し早いから、たぶん輸送ヘリとかを使った先遣隊だろう。
 上陸地点は糸満市の米須海岸。
 そこはまもなく本隊が上陸する予定になっている場所で、偵察目的も兼ねているのだろう。
 たぶん、その護衛に空は大量の航空機が飛んでいるに違いない。

「よし、では今度はそちらの管制に向かう。各自、後に割り当てられる担当部隊を確認しておけ」

 指揮官が指示を出す。
 任務が変わったことによって、俺達各種管制官が担当する部隊も変わる。
 俺も、さっきまで担当していたF-2部隊の担当を外れ、またほかの部隊を指揮することになる。

 といっても、俺の担当は上空援護の航空部隊になるだろう。










 沖縄の上陸は、まだ始まったばかりである…………
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