首相の憂鬱
2022年4月10日A.M.11:00
日本国首都東京都首相官邸大会議室
私こと、日本国内閣総理大臣である伊藤典秀はこの首相官邸の主となって既に6年も経つが未だに国民から根強い人気からか、政権交代を視野に入れてはいるのだがどういうわけだかずっと選挙に当選し続け、今ではすっかりこの状況に慣れてしまっている。
・・・恐ろしいな、慣れというものは。
「総理、JIAの情報伝達官がお見えになりました」
ふと、考えていると私の秘書官が耳打ちした。JIAとは日本版CIAとも言うべき諜報組織で、その殆どは極秘で、総理大臣である私ですら知らない。ついでに言えば彼らの本部は『東京のどこかにある』と言う半ば都市伝説と化している。
「そうか、通してくれ」
「は、わかりました」
秘書官がそういうとこの大会議室のドアに立つ警備兵がうなずき、ドアを開ける。ここの警備は以前、警察庁警備局の人間だったのだが、2016年の首都襲撃事件の際に拳銃しか持っていなかった為に自動小銃を持った北朝鮮兵に真っ先に殺されてしまったことから、今は陸上自衛軍第一レンジャー連隊の隊員が警備についている。最も、今でも警察庁警備局の人間が何人か警護についているんだがな。
「皆さんおそろいのようですね。皆さん始めましてタイガーです」
そういって大会議室に入室してきたのは見るからに高級そうなスーツを着こなしたJIAの情報伝達官だ。顔が前いたのとは違うから担当官が変わったんだろう。まぁ、向こうなりの考えなのだろうと結論づけた私は新たな情報伝達官、タイガーに聞こうとしたら、我が内閣で一番の老兵三谷園俊一内閣官房長官が「それで、タイガーじゃったか?何の用でわしらを呼んだんじゃ?」。・・・御年87歳の老兵だが逆に言えば大ベテランで私もこのお方を引っ張るのは流石に引けたのだが本人から「入れてくれ」と頼まれたのだ。
「では、今から資料を配布しますので」
「私がやります」
タイガ-がそういうと私の秘書官が率先して資料配布をおこなってくれた。
「では皆さんの元に行き届いたようなのではじめます。まず皆さんは今日の日韓、日中、日露、日米関係をご存知ですね?」
「ご存知も何も、周知の事実だと思いますが・・・」
そういうのは我が内閣では唯一の公明党出身者であり外務大臣である霧島君がいった。まあ私も知っているし、読者の皆さんに解説でもしよう。日米関係や日露関係は比較的良好で、特にロシアは89年の北海道襲撃事件以降当時わが国の新型戦車、90式戦車の砲をT-72と同じ125mm砲を『無料』で輸出したり、ライセンスを許したりといろいろと良好な関係を築いていたし、わが国は恩返しとしてF-2戦闘機の機体素材(と言っても一部だが)の技術を提供している。アメリカだがこちらは、AH-1Zを無償で提供したり、空母建造のために造船所(ニューポートニュ-ズ)を提供したり、さらには航空機運用技術、艦載機であるF/A-18等と、こちらも結構良好な関係である。
だが一方で韓国、中国両国とは悪く、特に日韓関係は激悪でまるで1940年代の日米関係である。・・・そういえば昨日霧島君がド偉く疲労がわかるほど顔に出ていたな。彼には頭が下がる・・・。
「日露、日米は良好で、日韓中は悪いぞ?」
「はい、霧島外務大臣の仰るとおりです。ですがその状況はより一層酷くなるかも知れません」
「どういうことじゃ?」
「詳しいことはその資料に記してあります」
タイガーがそういうと皆、配られた資料のページを捲る。そこには何とも信じがたいものが記されていた。私もそうだがみな驚いているがそれを口に出していいものか迷っていたが、桐谷防衛大臣が「に、日本本土侵攻作戦!?」とありえないと言った具合で半ば叫びながらそういった。この中で驚いているのは三谷園官房長だろう。あの人は今までに韓国と言う国を良く知っている。
「こ、これは本当かね?」
「ええ、残念ながら」
「なっ!?」
資料には日本本土侵攻計画と書かれていたが、タイガーは
「つい最近判明したので詳しいことは分かっておりませんが、現時点判明しているのは対馬島、竹島、讃岐諸島に対し上陸作戦を行うだけのようですが・・・おそらく本州に侵攻する可能性が有ります」
と、さらりといったが・・・みな、固まっていた。いくら韓国が反日国家だからと言ってもこんなことをすればどうなるかと言うことくらいは分かっているはずだ。しかも韓国は四年前に北朝鮮を併合したばかりでまだ国内の経済が混乱していた。しかも2016年の東京襲撃事件に韓国がかかわっていたと言ううわさも流れているくらいで、韓国の国際社会からの信頼はがた落ち状態で、アジアで最もひどい貧困国として知られていたし、便りの米国も韓国と同盟を破棄している。まさしく八方塞の状態である。
「わかった・・・とにかく
韓国方面の情報を収集してくれ」
私はJIAの情報担当官に対し、それしか言う事がなかった・・・
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