ところが、韓国政界では、与党・セヌリ党の咸珍圭(ハム・ジンギュ)報道官が「日本の集団的自衛権行使容認の方針に、わが政府が甘く対応してはならない」と述べるなど、与野党が一致して反発を始めた。11日には、国会の外交統一委員会が「外交的挑発行為と規定し強く糾弾する」という決議まで採択した。
支持率下落に歯止めがかからない朴氏は「長いものには巻かれろ」という考えなのか、反対論に同調してしまった。4日にソウルで行われた中国の習近平国家主席との昼食会では、集団的自衛権の行使容認に「憂慮する」との認識で一致したのだ。
米国が、日米韓の連携を重視するのは、北朝鮮の脅威に対処するためだけでなく、海洋覇権をもくろむ中国を抑止する目的があるのは言うまでもない。その中国首脳と足並みをそろえて日本の同盟強化策に反対することは、米国にとっては、まさに「裏切り行為」(田久保氏)に他ならない。
加えて、韓国自身にとっても自殺行為といえる。
日本が集団的自衛権を行使できれば、朝鮮半島有事の際に自衛隊は米軍に対し、武器弾薬の輸送や発進準備中の航空機への給油といった支援活動も可能となる。これに反対することは、韓国国民の生命と財産を守る責務を負う大統領の立場を忘れたに等しい。
安倍首相は15日の参院予算委員会で、在日米軍基地の米海兵隊について「日本が了解しなければ韓国に救援に駆け付けることはできない」と語った。これは日米安保条約第6条に基づく事前協議制度を前提にした発言であり、暗に韓国側に「よく考えてください」とメッセージを送ったともいえる。だが、韓国側は「(日本政府が)在日米軍投入に介入できる根拠がない」(軍関係者)と反発するだけで、冷静な議論は期待できない。