第8話 初めて
アーシュ達狩りに行くの巻き!
俺を持って、アーシュ達はさっそく里を出て、どこかに向かった。
俺はいま猛烈に焦っていた。
なぜか、それは闘気スキルを取ってしまったからだ。
別にいいじゃん? と思っている貴方。
違うのです。
アーシュが……必ず最初に使うのが物理攻撃とは限らないのです。
魔法かもしれないじゃないですか!!!!
ゴブリンやオーク達は魔法を使うことがなかった。
魔法使いは存在しなかったのだ。
いや、オークには魔法使いのようなものも見えたが、俺の持ち主になることは無かった。
だから、新しい持ち主になる度、俺は闘気スキルを取ることが習慣になってしまっていた。
それが、こんなところで落とし穴に落ちることになるなんて……。
アーシュの取得可能スキルを俺は見てみた。
闘気 魔力 属性 刀術 電光石火 雷魔法 料理
雷魔法があったのだ。
父親と思われるハールも、雷ぶっ放していたからな~。
アーシュ達はまだ悪魔と遭遇してないけど、俺はアーシュが悪魔を斬り捨ててくれることを祈っている。
たった1レベル! たった1でいいんです!
1レベルだけ上がれば、すぐに魔力取ってお役に立ちますから!
だから、どうか……どうか魔法だけは、後生です!!!
そんな俺達の前に1匹の悪魔が現れた。
コボルトだ。
俺は闘気全開! フルスロットル!
アーシュみてみて! ほら!すごいでしょ? もう斬りかかっちゃってくださいよ!
あんな犬っころ一撃ですよ!
やっちゃいましょうぜ姉さん!!
アーシュはコボルトを見て興味無さそうに……指をパチンと鳴らした。
その音と共に、美しい雷がコボルトを襲った。
ぐすん(涙)
アーシュ……最初は優しくって言ったじゃない。
初めてだったんだよ? 俺達の初めてだったのに!
いきなりなんて、もうお嫁にいけない!
俺の祈りも虚しく、アーシュはコボルトを雷で黒焦げにした。
俺の棒も黒焦げになるほどの痛みが走ったが、なんとか耐えた。
コボルトではレベルアップしなかったが、次に見つけた悪魔を俺で斬り倒したことで、レベルアップ!
俺は光の速さで魔力スキルを取った。
魔力スキルを得たことで、俺から魔力供給を感じられるようになったのだろう。
アーシュは俺からの魔力にビックリ仰天。
ベニちゃんとラミアに、俺から感じる魔力を興奮して話している。
ラミアが魔力の話を聞いて、俺を持ちたがったのだが、アーシュがダメ!と拒否していた。
俺のことを最初はただの棒だって思ってたくせに!
もう、俺無しじゃ生きられない身体になっちまったんだな……俺ってなんて罪な男。
そんな罪な男の俺を、アーシュはクルクルと回しながら、子供が楽しい玩具を見つけたような顔で、俺を見つめた。
魔力供給出来るようになったのはいいんだけど、アーシュからとんでもない量の魔力を吸い取られ続けた。
いや、ちょっと、別に俺は疲れないけど、もうちょっと優しくしてもいいんじゃない?
魔力レベル1では、供給できるスピードが、アーシュの要求に応えられない。
どんだけこの子は魔力を吸い取っていくんだよ!
っていうか、君たち3人とも……メッチャ強くない?
アーシュは速かった。
スピードタイプだ。
スキルにもあった電光石火の如く、あっという間に間合いを詰めて一閃。
刀を使っていただけに、相手を斬り捨てること第一に考えているようだ。
そして俺のレベルアップも凄まじいスピードで駆け上がり、あっという間にレベル6になった。
つまり、基本3セットの闘気、魔力、属性がレベル2になり、魔剣化解放。
俺は、魔力をアーシュに流す。
俺からの魔力を感じたアーシュが立ち止まる。
ベニちゃん達に何か話すと、俺の魔力を感じることに集中していく。
俺は、アーシュからイメージを吸い上げようとする。
どんな剣……いや、どんな刀がいいんだ?
属性は雷だろう。
刀へと、俺の力は変われるよ。
君のイメージで、君の想いで、俺は変われるよ。
アーシュは目を閉じながら、俺の魔力を感じていく。
心を無にする如く瞑想の中、俺に自分のイメージを伝えてくる。
そのイメージに合わせて俺は、自らの魔剣化を解放する。
出来上がったのは一本の刀。
紫電を帯びた魔刀……名付けて紫電魔刀! そのままだけど。
持ち手の先から長く伸びる刀身が、本物の刀のようにその輝きを放っている。
アーシュは大喜びだった。
2人に、見て見て! この刀見て!と。
ぴょんぴょんと跳ね上がるように喜んでいる。
アーシュは笑うと本当に可愛いな~。
それなのに服は男物の男装麗人。
やばい、このギャップにグッ!ときますね。
2人とも、刀になった俺を見て、もう驚くのを通り越して呆れているようだ。
さて、アーシュも強いけど、ベニちゃんとラミアも強い。
ベニちゃんはパワー型の総合格闘家タイプだった。
黒いレザーグローブに包まれた、その拳がベニちゃんの武器だったのだ。
スピードはアーシュほどじゃないけど十分に速く、身体を俺の闘気に似た何かが纏っていて、攻撃も防御も問題なく強い。
脚技使うと、深いスリットからチラチラ見えそうで、グットです!
そして揺れるボインがグットです!!
格闘家ですからね!そりゃ~動きますよ。
もうボインボインの、ぷるんぷるんの、バインバインですよ!
全ての表現が正しい。
何も間違っていない。
なんて素晴らしいことなんだろう……俺は彼女に感謝の念を抱いた。
そして出来れば彼女に寝技をかけてもらいたいとも思った。
きっと素晴らしい寝技の数々を持っているんだろう。
でもあの力で寝技かけられたら、棒がぽっきりいきそうな気がして、ちょっとだけ怖い。
ラミアは魔法使いタイプだ。
使う魔法は水。
このセクシーな踊り子のような服に、なんと水の蛇が絡みつくように発生する。
敵を認識すると、その水蛇が地を這うように相手を襲う。
地を這う水蛇に気を取られると、ラミアが持っている鞭が上から振ってくる。
何で出来ているのか分からないが、その鞭はすごく痛そうだ。
さらに、彼女は完全に水を支配に置いているのだろう。
この水蛇……魔法と思っていたのだが、違うのかもしれない。
水蛇が出ているとき、ラミアが悪魔の攻撃を受けそうになったことがあった。
俺は危ない!と叫んだ、声なんて出ないけど。
ラミアの水が盾となって、その攻撃を防いだのだ。
同時に2つの魔法を使うことが出来るのか、出来ないのか、分からない。
でも少なくとも、ニニや、あのマリアですら2つ同時に別の魔法を使ったことはない。
混合魔法はあったけど、それは複数の属性を混ぜているだけで、行使される魔法は1つなのだ。
ラミアは魔法を2つ同時に使えるのか、いや、俺には水に意思があるようにすら思える。
悪魔の攻撃を水で防いだ時、ラミアは水に感謝するように撫でていた。
つまり無意識、自動でラミアを守ったのだ。
そして、ラミアはベニちゃん以上に、ボインボインであった♡
3人は良いトリオだ。
言葉は分からないけど、3人の様子を見ていれば何となく分かる。
リーダー格だけど、ちょっと突っ走っちゃうアーシュ。
お姉さん役で、アーシュとラミアを制御しつつ、ツッコミ役もこなすベニちゃん。
のほほ~んとしつつも、フェロモンむんむんなエロスのラミア。
例え数で不利な状況でも、3人のコンビネーションで圧倒していく。
こんなにも強いと思える彼女達ですら、勝てない相手はごろごろいるのだ。
おそらくラミアの危険察知能力が高いのだろう。
ラミアの指示に従って、道を変えたり、引き返すこともある。
俺の見た感じでは、彼女達は1対1でオークロードには勝てるだろう。
でも進化したハイオークロードには厳しいかもしれない。
この世界で生きていくために、彼女達は強さを求めているのだ。
アーシュは父親と思われるハールのような強さを求めているのか。
そして狩りを続けて、たった1日で俺はここまで強くなった。
ステータス
紫電魔刀の木の棒
状態:アーシュの紫電魔刀の木の棒
レベル:15
SP:0
スキル
闘気:レベル5
魔力:レベル5
属性:レベル5
アーシュ、王子に追いつく!
これはちょっとおかしいぞ。
やっぱり、この黒い木の棒の成長システムが違うように思えてきた。
アーシュは強い。
だから、俺を持って戦っても、そんなに成長速度は早くないはずだ。
それなのに、たった1日でレベル15。
やはり、前回とは違って、戦えば戦うだけレベルが上がっていくように見える。
どうしてだ?
この木の棒は、聖樹の木ではないのか?
それを考え始めると、答えの出ない質問ばかりが浮かんでしまう。
いまは、ものすごいスピードで成長出来ることを嬉しく思っておこう。
何か落とし穴がなければいいのだが。
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