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伝説の木の棒 後編 作者:木の棒

第2章 3人娘

第8話 初めて

 アーシュ達狩りに行くの巻き!
 俺を持って、アーシュ達はさっそく里を出て、どこかに向かった。


 俺はいま猛烈に焦っていた。
 なぜか、それは闘気スキルを取ってしまったからだ。

 別にいいじゃん? と思っている貴方。
 違うのです。

 アーシュが……必ず最初に使うのが物理攻撃とは限らないのです。
 魔法かもしれないじゃないですか!!!!


 ゴブリンやオーク達は魔法を使うことがなかった。
 魔法使いは存在しなかったのだ。
 いや、オークには魔法使いのようなものも見えたが、俺の持ち主になることは無かった。

 だから、新しい持ち主になる度、俺は闘気スキルを取ることが習慣になってしまっていた。
 それが、こんなところで落とし穴に落ちることになるなんて……。



 アーシュの取得可能スキルを俺は見てみた。


 闘気  魔力  属性  刀術  電光石火  雷魔法  料理


 雷魔法があったのだ。
 父親と思われるハールも、雷ぶっ放していたからな~。

 アーシュ達はまだ悪魔と遭遇してないけど、俺はアーシュが悪魔を斬り捨ててくれることを祈っている。

 たった1レベル! たった1でいいんです!
 1レベルだけ上がれば、すぐに魔力取ってお役に立ちますから!
 だから、どうか……どうか魔法だけは、後生です!!!


 そんな俺達の前に1匹の悪魔が現れた。
 コボルトだ。

 俺は闘気全開! フルスロットル!

 アーシュみてみて! ほら!すごいでしょ? もう斬りかかっちゃってくださいよ!
 あんな犬っころ一撃ですよ!
 やっちゃいましょうぜ姉さん!!


 アーシュはコボルトを見て興味無さそうに……指をパチンと鳴らした。

 その音と共に、美しい雷がコボルトを襲った。





 ぐすん(涙)

 アーシュ……最初は優しくって言ったじゃない。
 初めてだったんだよ? 俺達の初めてだったのに!
 いきなりなんて、もうお嫁にいけない!

 俺の祈りも虚しく、アーシュはコボルトを雷で黒焦げにした。
 俺の棒も黒焦げになるほどの痛みが走ったが、なんとか耐えた。


 コボルトではレベルアップしなかったが、次に見つけた悪魔を俺で斬り倒したことで、レベルアップ!
 俺は光の速さで魔力スキルを取った。


 魔力スキルを得たことで、俺から魔力供給を感じられるようになったのだろう。

 アーシュは俺からの魔力にビックリ仰天。
 ベニちゃんとラミアに、俺から感じる魔力を興奮して話している。

 ラミアが魔力の話を聞いて、俺を持ちたがったのだが、アーシュがダメ!と拒否していた。
 俺のことを最初はただの棒だって思ってたくせに!
 もう、俺無しじゃ生きられない身体になっちまったんだな……俺ってなんて罪な男。

 そんな罪な男の俺を、アーシュはクルクルと回しながら、子供が楽しい玩具を見つけたような顔で、俺を見つめた。


 魔力供給出来るようになったのはいいんだけど、アーシュからとんでもない量の魔力を吸い取られ続けた。
 いや、ちょっと、別に俺は疲れないけど、もうちょっと優しくしてもいいんじゃない?

 魔力レベル1では、供給できるスピードが、アーシュの要求に応えられない。
 どんだけこの子は魔力を吸い取っていくんだよ!

 っていうか、君たち3人とも……メッチャ強くない?



 アーシュは速かった。
 スピードタイプだ。

 スキルにもあった電光石火の如く、あっという間に間合いを詰めて一閃。
 刀を使っていただけに、相手を斬り捨てること第一に考えているようだ。

 そして俺のレベルアップも凄まじいスピードで駆け上がり、あっという間にレベル6になった。
 つまり、基本3セットの闘気、魔力、属性がレベル2になり、魔剣化解放。


 俺は、魔力をアーシュに流す。
 俺からの魔力を感じたアーシュが立ち止まる。

 ベニちゃん達に何か話すと、俺の魔力を感じることに集中していく。

 俺は、アーシュからイメージを吸い上げようとする。

 どんな剣……いや、どんな刀がいいんだ?
 属性は雷だろう。

 刀へと、俺の力は変われるよ。
 君のイメージで、君の想いで、俺は変われるよ。


 アーシュは目を閉じながら、俺の魔力を感じていく。
 心を無にする如く瞑想の中、俺に自分のイメージを伝えてくる。
 そのイメージに合わせて俺は、自らの魔剣化を解放する。


 出来上がったのは一本の刀。
 紫電を帯びた魔刀……名付けて紫電魔刀! そのままだけど。
 持ち手の先から長く伸びる刀身が、本物の刀のようにその輝きを放っている。


 アーシュは大喜びだった。
 2人に、見て見て! この刀見て!と。

 ぴょんぴょんと跳ね上がるように喜んでいる。
 アーシュは笑うと本当に可愛いな~。

 それなのに服は男物の男装麗人。
 やばい、このギャップにグッ!ときますね。


 2人とも、刀になった俺を見て、もう驚くのを通り越して呆れているようだ。


 さて、アーシュも強いけど、ベニちゃんとラミアも強い。

 ベニちゃんはパワー型の総合格闘家タイプだった。
 黒いレザーグローブに包まれた、その拳がベニちゃんの武器だったのだ。
 スピードはアーシュほどじゃないけど十分に速く、身体を俺の闘気に似た何かが纏っていて、攻撃も防御も問題なく強い。

 脚技使うと、深いスリットからチラチラ見えそうで、グットです!
 そして揺れるボインがグットです!!

 格闘家ですからね!そりゃ~動きますよ。
 もうボインボインの、ぷるんぷるんの、バインバインですよ!

 全ての表現が正しい。
 何も間違っていない。
 なんて素晴らしいことなんだろう……俺は彼女に感謝の念を抱いた。

 そして出来れば彼女に寝技をかけてもらいたいとも思った。
 きっと素晴らしい寝技の数々を持っているんだろう。

 でもあの力で寝技かけられたら、棒がぽっきりいきそうな気がして、ちょっとだけ怖い。


 ラミアは魔法使いタイプだ。
 使う魔法は水。

 このセクシーな踊り子のような服に、なんと水の蛇が絡みつくように発生する。
 敵を認識すると、その水蛇が地を這うように相手を襲う。

 地を這う水蛇に気を取られると、ラミアが持っている鞭が上から振ってくる。
 何で出来ているのか分からないが、その鞭はすごく痛そうだ。

 さらに、彼女は完全に水を支配に置いているのだろう。
 この水蛇……魔法と思っていたのだが、違うのかもしれない。

 水蛇が出ているとき、ラミアが悪魔の攻撃を受けそうになったことがあった。
 俺は危ない!と叫んだ、声なんて出ないけど。
 ラミアの水が盾となって、その攻撃を防いだのだ。

 同時に2つの魔法を使うことが出来るのか、出来ないのか、分からない。
 でも少なくとも、ニニや、あのマリアですら2つ同時に別の魔法を使ったことはない。
 混合魔法はあったけど、それは複数の属性を混ぜているだけで、行使される魔法は1つなのだ。

 ラミアは魔法を2つ同時に使えるのか、いや、俺には水に意思があるようにすら思える。
 悪魔の攻撃を水で防いだ時、ラミアは水に感謝するように撫でていた。
 つまり無意識、自動でラミアを守ったのだ。

 そして、ラミアはベニちゃん以上に、ボインボインであった♡



 3人は良いトリオだ。
 言葉は分からないけど、3人の様子を見ていれば何となく分かる。

 リーダー格だけど、ちょっと突っ走っちゃうアーシュ。

 お姉さん役で、アーシュとラミアを制御しつつ、ツッコミ役もこなすベニちゃん。

 のほほ~んとしつつも、フェロモンむんむんなエロスのラミア。


 例え数で不利な状況でも、3人のコンビネーションで圧倒していく。

 こんなにも強いと思える彼女達ですら、勝てない相手はごろごろいるのだ。

 おそらくラミアの危険察知能力が高いのだろう。
 ラミアの指示に従って、道を変えたり、引き返すこともある。

 俺の見た感じでは、彼女達は1対1でオークロードには勝てるだろう。

 でも進化したハイオークロードには厳しいかもしれない。


 この世界で生きていくために、彼女達は強さを求めているのだ。

 アーシュは父親と思われるハールのような強さを求めているのか。



 そして狩りを続けて、たった1日で俺はここまで強くなった。




ステータス
紫電魔刀の木の棒
状態:アーシュの紫電魔刀の木の棒
レベル:15
SP:0
スキル
闘気:レベル5
魔力:レベル5
属性:レベル5



 アーシュ、王子に追いつく!

 これはちょっとおかしいぞ。
 やっぱり、この黒い木の棒の成長システムが違うように思えてきた。

 アーシュは強い。
 だから、俺を持って戦っても、そんなに成長速度は早くないはずだ。

 それなのに、たった1日でレベル15。
 やはり、前回とは違って、戦えば戦うだけレベルが上がっていくように見える。

 どうしてだ?
 この木の棒は、聖樹の木ではないのか?

 それを考え始めると、答えの出ない質問ばかりが浮かんでしまう。

 いまは、ものすごいスピードで成長出来ることを嬉しく思っておこう。
 何か落とし穴がなければいいのだが。
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