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伝説の木の棒 後編 作者:木の棒

第1章 暗黒の世界

第5話 進化

 ゴブリンキングを倒したオークロードは、オークキングに進化した。
 見事なまでに立派に成長した牙だ。

 ゴブリン達は自らの巣にサキュバス達を囲っていた。
 そのサキュバス達と食料を奪って巣に帰り、いまはどんちゃん騒ぎの宴の真っ最中だ。

 ゴブリンの巣にいたサキュバスの中で、ゴブリンと混じっていたやつは全員殺されたけどな。


 オークキングに進化した持ち主は、身に纏うオーラが違う。
 もはや他のオーク達とは別格の存在だ。

 いつもの美人爆乳サキュバス相手にも、大した興奮の色を見せない。
 その目が見ているのは、目の前の美人爆乳ではない。


 このサキュバスもそれが分かっているのだろう。

 必死だ。
 必死にオークキングに自らをアピールしていく。

 前までなら喜んで自分の相手をしてくれた男が、急に自分のことを相手にしてくれない。
 いや、相手にしてくれないのではない、現にいまオークキングに跨って必死に腰を振らせてもらっている。
 でも、自分を見てくれない、自分に興味が無くなっている……それが怖いのだろう。

 オークキングがサキュバスを犯しながら、その目が何を見ているのか。
 何を考えているのか。

 俺にはこの時、分からなかった。
 だが、その答えはすぐにやってきた。

 恐ろしい答えをオークキングは出したのだ。
 それは、まさにゴブリンでは出せなかった答え。

 俺を“最も効率的に使う”正しい答え。

 オークキングとなり、さらに知能が上がったのか?
 このオークキングは答えに辿り着いた。


 翌日、オークキングは1人のオーク戦士を呼んだ。
 オーク戦士の中では強そうなやつだ。
 オークキングは、そいつに……俺を渡した。


「持ち主が変更されました。ステータスがリセットされます」


 俺の中でシステム音が響いた。

 オークキングは本当にとんでもない奴だったのだ。

 俺はすぐに悟った、このオークキングが何を考えているのか。
 そしてそれはすぐに現実のものとなった。



 いま、俺は8匹目のオーク戦士に渡されたところだ。
 あれからさらに1ヶ月ぐらいだろうか、正確には分からない。

 7匹のオークロードが誕生している。
 そう、あのオークキングは俺を使って、種族の強化を始めたのだ。

 オークキングとなった自分に勝てる者はいない。
 俺を他の戦士に与えて、進化したオークロードが向かってきても、オークキングが負けることはないだろう。
 そもそも、オーク達が仲間内で殺し合う様なんて見たことない。

 そして、オークロードに進化したところで、俺を別のやつに与える。
 それの繰り返しだ。

 メモリー機能を知っていたわけじゃないだろう。
 たぶん、オークキングは俺をまた持つことがあっても、俺を1から育てるつもりでいたと思う。

 1匹目のオークロードが誕生して、俺を自分で持った時に、俺が魔剣化出来るのを見て、醜い顔で大喜びしていたからな。
 こいつはもう気付いている、俺の成長システムとメモリー機能を。

 俺はまた、オークキングの力に応えずにいて、あの気持ち悪い感触に襲われるのが嫌で、素直に魔剣化したのだ。


 もう両手では数えられないほどのオークロードが誕生した時だ。
 オークキングが俺を持って狩りに出かけた。

 10匹以上のオークロードを従えて。

 向かった先にいたのは、2匹のキマイラだ。
 夫婦のようなそのキマイラに向かって襲いかかるオーク達。

 キマイラも、恐ろしい雄叫びを上げて戦闘態勢に入る。



 勝負は一瞬だった。
 あっけないほどに、オーク達の勝利で終わった。

 仕留めたのは、オークキング。

 1匹をオークキングが殺すまで、もう1匹をオークロード達で抑える。
 オークキングが1匹目を倒したら、残った1匹を倒して終わり。
 時間にして5分も戦っていないだろう。


 それからオーク達の行動はさらに過激になっていった。
 より強い相手を求めていった。
 そして、その時が訪れた。



ステータス
超魔剣の木の棒
状態:悪魔のハイオークキングの超魔剣の木の棒
レベル:24
SP:0
スキル
闘気:レベル8
魔力:レベル8
属性:レベル8



 オークキングは、ハイオークキングに進化した。
 身体からは、さらに禍々しいオーラが漂う。

 ベルゼブブに似た禍々しさだ。
 さすがにあそこまでの強さとは思えないが、十分すぎる強さだ。


 オークロード達もハイオークロードに進化していった。
 これはオークという種族の性質なのか何なのか分からないが、キングがハイオークになってから、オークロード達も俺を持って狩りをしていくと、ハイオークロードに目覚めた。

 そして、どんなに強敵を倒しても、キングになるオークは現れなかった。
 キングとは1人だけなのだろう。



 そうしてこの一帯を支配するほどまでに強くなっていったオーク達。
 もう何十匹のハイオークロードがいるのか、俺には分からない。

 さらにもう1つ変化が起きた。

 サキュバス達だ。
 彼女達も進化したのか、背中の羽が少し大きくなり、頭から羊の角のようなものが生えてきていた。

 彼女達は子供を残すためだけに精を必要としているのではないのだろう。
 自分自身の力のために精を求めていたはずだ。

 ハイオークキングの精を得たことでサキュバス達が進化したのか?
 サキュバス達はみんな、ハイオークキングに群がる。
 彼の精を求めて。

 そんなサキュバス達を見ても、もうまったく興奮の色を見せない豚の王。
 勝手に俺の上で腰を振れと言わんばかりだな。


 さらに、進化したサキュバス達は、何やらあやしげなアイテムを作り始めていた。

 得体の知れない液体、縄、糸、拷問器具のようなもの等。
 何に使うのか……精を取るために使うんだろうな。



 この暴食とも言えるオーク達が、このまま地下世界を支配してしまうのではないかとさえ思えてしまっていたある日。

 俺は新しいオーク戦士に与えられた。
 そのオーク戦士は嬉しそうに俺を手に持って狩りにいく。

 俺は思考することをやめた機械人間のように、闘気スキルを取った。
 俺はこのままオーク達に力を貸し続けることで、自分は何かを得られるのか、分からなくなっていた。

 分からないけど、俺は棒で道具なのだ。
 使ってもらうしかない、たとえそれがオークであったとしても。

 それに、また力を貸すのをやめたとき、あの意味不明な意識が勝手に入ってきて、気持ち悪いことになることも嫌だった。

 新しいオークも俺を使い、強敵を倒しどんどん成長していく。
 いつものと同じように、いつもの速さで、成長していった。

 もはや流れ作業だ。
 まさか、今回俺がこの世界に来たのは、このオーク達が地下世界を支配するためなのか?
 このオーク達がこの地下世界を支配して、何かあるのか?

 いや、よくよく考えれば、この地下世界で強くなったオーク達が、地上世界に攻めいったら。
 そうだよ、どうして今までそのことに気付かなかったんだ!

 俺はなんて馬鹿なんだ。
 自分のことしか考えていなかった。

 ここが地下世界ではないかと予想した時に、どうしてそのことを考慮しなかったんだ。

 地下世界の悪魔は穴を通じて、地上世界を攻めていたじゃないか。

 いや正確には、どうして穴から出てきていたのか分からない。
 このオーク達が穴を探していたり、地上世界に行こうとしている素振りなんてまったく見なかったからな。


 そのオークが、オークロードに成長した。
 強くなった自分に喜び、さらなる敵を求めて狩りに出たのだ。

 そして俺は出会った。






 輝く長めの白銀の髪


 歴戦の戦士を思わせる隻眼の渋い顔立ち


 見事な褐色の肌


 歳は30歳ぐらいだろうか


 黒い鎧に白銀の槍


 見るものを威圧するオーラを放ちながら


 八本の脚を持つ軍馬に跨った男。




 その男は、オークロードと俺を見ると、嬉しそうに笑った。


 刹那……オークロードの身体はこの世界から消し飛んだ。
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