第4話 悪戯
オーク達はその日、ある巣を奇襲した。
その巣にいたのは……ゴブリンだ。
ただのゴブリンじゃない。
俺を持っていたゴブリン達の巣よりも大きく、数も多く、1匹1匹の強さも上だった。
こんなに成長したゴブリン達がいたのかと、俺も驚きだ。
その巣の奥から出てきたのは、いったい何mなのか分からないほど、馬鹿でかいゴブリンだった。
俺はすぐに悟った、こいつはゴブリンキングだと。
別に王冠なんて被ってないけど、今まで見てきたゴブリンとは次元の違う強さだと雰囲気で分かる。
ゴブリンキングは奇襲してきたオーク達を見て激怒。
次の瞬間、ゴブリンキングが拳で地を叩くと……まるで地震が起きたように大地が揺れた。
その地響きに一瞬固まるオーク達。
それを合図に反撃に出るゴブリン達。
ゴブリン達の中にはゴブリンロードと思われる戦士達もいる。
お互い乱戦状態に突入だ。
だが、最初の奇襲で巣の守りの優位性を損なってしまったゴブリン達が不利のようだ。
オーク達が押していく。
ゴブリンキングは、俺の持ち主が引き受けている。
魔剣化した俺の前に、ゴブリンキングもうかつに近づけないようだ。
俺から感じる力の強さを分かっているのだろう。
魔剣化した俺でゴブリンキングに斬りかかるオーク。
だが、ゴブリンキングは、その巨体からは想像もつかない速さで動き回る。
オークがゴブリンキングを捉えたとしても、その鋼の肉体を魔剣化した俺では斬り裂けない。
ダメージは与えていると思うのだが、ゴブリンキングの身体からみなぎる力に、魔剣が押し返されてしまう。
強いな、キング級とはこれほど強いのか。
俺の持ち主が弱いとは思わない。
オークロードでもあり、魔剣を持っているのだから。
そのオークロードと互角に渡り合えるゴブリンがいるなんて、まったく世界は広い。
待てよ、ゴブリンキングがこれだけ強いってことは、もしこのオークが、オークキングになったら、どんだけ強くなるんだ?
このオークがキングになったら、俺無しでもこのオーク達に勝てるゴブリンなんて、この地下世界にいないんじゃないか?
俺は思った……別にこのオーク達に力を貸してやる義理はない。
俺はゴブリンの方が好きだ。
ゴブルンを思い出せば、やっぱりゴブリンに味方してあげたいと思う。
悪魔のように知能は無かったよ。
ただただ、俺を振り回すだけだったよ。
それでも、俺はゴブルンが嫌いじゃなかった。
馬鹿で、ハーレム囲って、息子に甘いゴブルンが嫌いじゃなかった。
途中で大剣に浮気されちゃったけど、それは仕方ない、馬鹿だったんだから。
このゴブリンキングが俺の持ち主でもいいんじゃないか?
魔剣化は見たんだ、俺の力に気付けるだろう。
ゴブリンキングが魔剣を持てば、オークに負けることはないだろう。
キング級がいる、このゴブリンの巣はある程度まとまりだってあるはずだ。
俺は、魔剣化を解いた。
痛いのは嫌なので、最低出力の闘気だけだ。
魔剣が解かれて、俺から力を感じなくなったオークは焦った。
棒をぶんぶん振り回して、魔剣出ろ!みたいに念じてる。
俺はそれを馬鹿なやつめ、と思いながら見ていた。
ゴブリンキングも俺から力を感じれなくなって、攻勢に出た。
吹き飛ばされるオーク。
俺はゴブリンキングの勝利を確信していた。
このオークロードを倒して、俺の持ち主になってくれるのを待つだけだ。
あの爆乳美人サキュバスの胸やお尻を叩けなくなるのだけが、ちょっと残念だな。
もう1度だけ、あの口で俺を天国に連れていって欲しかったな。
いや、待てよ。
これだけのゴブリンの巣だ。
サキュバスいるんじゃね?!
きっといるよ!
え?まてよ。
っていうことは、今度は、顔ゴブリンの身体サキュバスとか、ゴブリンと混じったやつがいるのか?!
それはそれで1度見てみたいな。
そして、このゴブリンキングは棒プレイ好きなのか?
それが問題だ!
好きだよね?棒でプレイしちゃうよね?うんって言ってよ!俺を安心させてよ!
そんなことを考えて、ぼ~っと2匹の戦いを見ていた時だった。
それは、突然やってきた。
「 の悪戯が発動します」
は?
何の悪戯だって?
まさに目が点状態だった俺を襲ったのは、気持ち悪い感触だ。
なんて表現したらいいのか分からない。
別に痛くない。
車や船で酔ったような感じでもない。
ただただ気持ち悪い。
自分が見たくないものを、見ているような
触りたくないものを、触っているような
味わいたくないものを、味わっているような
感じたくないものを、感じているような
気持ち悪さが俺を襲った時、別の何かが俺の中に入ってきたような感じがした。
俺ではない何かは、俺の中で勝手に何かを始める。
おい、何してるんだ?
俺の中で勝手に何をしているんだ!!
それは俺の言葉を無視して、棒に魔剣を纏わせた。
俺の力が戻ったオークロードが反撃に出る。
ゴブリンキングも、魔剣化した俺に気付いてすぐに距離を取る。
だが、魔剣化した俺から炎闘気が弾丸となって、ゴブリンキングを襲う。
怯んだところを、オークロードが一気に近づいて、ゴブリンキングを斬る。
俺は風魔剣と一瞬でその姿を変えて、ゴブリンキングを真っ二つに斬り捨てた。
ゴブリンキングを斬り捨てたオークは雄叫びを上げる。
その鼻から生えている角が、高く高く立派に伸びていた。
戦いはオーク達の勝利で終わった。
俺は気持ち悪さから解放されていた。
何とも言えない気分だった。
別にあのゴブリンキングを斬ったことに何かを感じてるわけじゃない。
あいつはゴブルンではないから。
でも、俺の意思に反して俺の力が発動した。
勝手に炎闘気を飛ばされ、勝手に風魔剣化した。
しかもその威力は、いまの俺が出せる威力よりも数倍高かった。
何だったんだあれは。
最悪な気分だ。
何の悪戯だ?
思い出せるそれは、何とかの悪戯が発動するというシステム音だ。
ただ、その何とかの部分は、俺が聞き逃したのではなく、何も言っていなかったはずだ。
何も言っていない、つまり空白。
俺はメモリーを呼び出した。
メモリー
1.ゴブリンロード(死亡)
2.ゴブリン□
3.ひょろひょろおじさん□
4.空飛ぶ少女☑
5.怪しい女王☑
6.聖女☑
7.優しい王子☑
8. ☑
9.悪魔のゴブリンロード(死亡)
10.悪魔のオークキング☑
8番目に登録されている謎の持ち主。
空白からして3文字の名前だ。
こいつか? こいつが何かしたのか?
俺がこの世界にきて、俺の意識が戻る前に持ち主となったこいつの仕業か?
仮にそうだとして、なぜ発動できた?
俺の力を使うための唯一の条件は、俺を持つことだ。
俺は持ってもらわなければ、何も出来ないただの道具だから。
こいつの意識が勝手に俺の中に入ってきたのか?
俺ではない何かをこの棒の中に感じた。
だとすれば、こいつは俺の意識の中に入ってこれるのか?
こいつが俺の中に入ってこれる条件は何だ?
まさか無条件にいつでも入ってこれるのか?
いや、俺が戦う意思を放棄した時か?
今まで、俺を使う者達に応えて、俺は常に全力を出していた。
それは、俺自身が前に進むため。
今回は、それに反して、初めて俺が意図的に力を出さなかった。
この黒い木の棒は、この地下世界のものと思われる木の棒は、戦うことを強制するのか?
戦う気がないなら、強引にでも力を引き出させるのか?
いや、無駄な思考はやめよう。
現に、何かが俺に干渉してきたことは間違いない。
それが謎の持ち主なのか、そうじゃないのか、考えても分かるはずがない。
いまはこの出来事を心に留めて、前に進もう。
俺は前に進むしか無いのだから……。
ステータス
超魔剣の木の棒
状態:悪魔のオークキングの超魔剣の木の棒
レベル:18
SP:0
スキル
闘気:レベル6
魔力:レベル6
属性:レベル6
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