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伝説の木の棒 後編 作者:木の棒

第1章 暗黒の世界

第2話 誘惑

 今日も元気に狩りいこうぜ!

 順調に強くなっていく悪魔のゴブリンロード。
 そのうち、ゴブリンキングとかにクラスアップするんじゃね?
 俺もレベル12に上がって、どんどん強くなっていく。


 そんな風に思っていた時期が俺にもありました。


 いま、ゴブリン達は“ある獲物”を追っている。
 ただ倒すだけなら、瞬殺出来るであろうその獲物をひたすら追って、無傷で捕えようとしている。
 かなり鼻息荒くしながらね。

 そのある獲物とは……“サキュバス”だ。

 背中に小さな羽を生やし、お尻からはキュートな尻尾が生えている。
 見るものを誘惑し、その精を搾り取る悪魔サキュバス。

 ゴブリン達がいま追っているのは、そのサキュバスであろう。
 見るからに美人でボインなサキュバス達は、まるでゴブリン達を誘惑しているかのように、どこかへ誘っていく。

 茶番劇のような逃走の仕方だ。
 その見事な胸とお尻を揺らして、誘惑しながらの逃走。

 いや、これってサキュバスの誘惑の魔法とかなのか?

 ゴブリン達も、その誘惑に見事に乗って、もうビンビンのガンガンで追っている。
 俺の持ち主のゴブリンロードもよだれ垂らしてサキュバスの尻を追っかけている。


 サキュバス達は、まるで最初からそこで捕まることが決まっていたかのように、森の中でゴブリン達に捕まった。
 1本の木に1匹、サキュバス達がゴブリンを誘うように待っている。

 その豊かな胸を両手で挟み込むように谷間を見せつける者、お尻を突出し誘惑している者、脚をM字に広げてゴブリンを迎えようとしている者。

 サキュバスのあからさまな誘惑に喜んでいるゴブリンだが、俺に言わせれば甘い。
 そんな露骨なことされて興奮しているのはお子ちゃまだ。

 俺ぐらいになると、隠れたエロ、見えないエロ、聞こえないエロを感じられるのだ。
 まったく……地上世界でも、暗黒世界でもゴブリン達は本能に忠実だな。

 悔しいわけじゃないぞ!

 興奮して雄叫びを上げたゴブリン達は、武器を投げ捨ててサキュバス達を犯し始まる。
 俺の持ち主は、サキュバス達の中でもとびきり美人で爆乳なサキュバスを捕まえている。
 サキュバスの色気に興奮したせいか、俺を地面に置きながら。


 「ゴブッ! ゴゴゴブブブブ!!!!」


 前言撤回。
 これに興奮するのはお子ちゃまではありません!

 ゴブリンの興奮声は置いておくとして、サキュバスの喘ぎ声はなかなかのものだった。
 いや、元人間の俺が興奮するのに十分な声だ。

 しかも、美人で爆乳な美乳の美尻ですよ。
 う~~~ん、目の保養になりますな~。

 腰なんてギュッと引き締まっているし、本当に2次元の世界から出てきたようなサキュバス達だ。
 やはり男を誘惑するために、サキュバスという種は美人で色気たっぷりである必要があるのだろう。

 彼女達が精を求めて相手を誘うなら、どんな相手だって誘惑出来ないといけないからな。
 ゴブリン達もサキュバス達を殺すつもりなんて無さそうだし。

 このまま捕まえて巣に連れ帰るのか……ん? 待てよ。

 お前達、嫁さんになんて言うつもりなんだよ!
 全員巣に嫁さんいるだろうが!

 ちょっと外で美人のお姉さんに声かけられたから、家に連れてきちゃいました♡ なんて話が通用する世界なのか?
 もしそんな話が通用する世界なら! ……俺もちょっとゴブリンになりたいと思った。


 さて、あの用心深いゴブリンロードが、俺をこんなに簡単に手放すなんて、サキュバスの誘惑はすごいのだろう。

 いや、いくら知能が高いといっても所詮はゴブリンってことなのか。
 こいつらにハメられているとも気づかずに、腰を振ってるんだからな。
 ゴブリン達はまったく気付いていなかったが、俺は気付いていた、その存在を。



 それは一瞬だった。
 サキュバス達とやっている木の上から、それは飛び降りてきた。

 まさに1人1殺。
 ゴブリン達の首が空を舞う。

 俺の持ち主のゴブリンも、あっけなく動かない肉となって地に落ちた。


 飛び降りてきたのはオーク。
 あのゴブルン達の村を襲ってきたオーク達だった。

 ただ、あのオーク達とは比べものにならない強さだろう。

 木の上からの奇襲とはいえ、一瞬たりとも気配を悟られず、全員が的確にゴブリンの首をはねている。
 そしてサキュバス達を囮に使う知能の高さ。

 そうなのだ、このサキュバス達はこのオーク達の仲間? 部下? 奴隷? なのか、オーク達と寄り添うようにイチャついてる。
 間違いなく、ゴブリン達をおびき出すための罠として、サキュバス達は自分達を囮に使ったのだ。


 ゴブリンを殺したオーク達は、適当にゴブリンの肉を持ち帰るようだ。
 美味しいのか知らないが。

 ただ、こいつらの目的は、どうやら俺だった。

 成長するゴブリン達の噂を聞いたのか、どこかで見ていたのか分からないが、あきらかに全員が俺のところにきて、棒をゲットしたことを喜んでいた。
 俺の持ち主のゴブリンロードを倒したオークが、俺の新たな持ち主となるようだ。


ステータス
闘う木の棒
状態:悪魔のオークロードの闘う木の棒
レベル:1
SP:0
スキル
闘気:レベル1



 すぐに闘気スキルを取る。


 ま、これも弱肉強食の世界。
 とは言え、ゴブルンとの思い出がある俺としては、オークにゴブリン達を倒されてあまり良い感情は抱けないけどな。

 ゴブリンは俺にとって、ちょっとした特別な存在だ。
 ゴブリンとオーク、どちらかを持ち主として選べと言われれば、例え種としてオークの方が強かったとしても、俺はゴブリンを選ぶ。

 あのどこか憎めないゴブルン……今はもういないと思うとちょっとだけ寂しさも感じる。
 でも俺を裏切って大剣なんかに浮気した恨みは忘れていないからな!

 息子のゴブルンジュニアはメモリー機能を信じるなら、まだ生きているはずだ。
 父親の狩りに頼って生きてきた、あのボンボンが生き残っていることに、ちょっとだけ驚きを感じている。

 もしも……もしもまたゴブルンジュニアに出会えることが出来た時、ゴブルンジュニアが超マッチョのムキムキスーパー戦士になっていたら、土下座して謝ろうと思う。

 可能性としては限りなく低いけどな。


 さて、オークが持ち主になったけど、俺は進まないといけない。

 どこに向かっているのか分からないが、進むのをやめたら、みんなと会える日は永遠に来ないのだから。

 俺は木の棒。
 道具として使われることしか出来ない。

 前回もゴブリンとの出会いが始まりだった。
 そして、ゴブリンとの別れが、次の出会いに繋がった。

 今回もゴブリンから始まり、オークへと。
 俺の物語は続く。
 黒い木の棒になったけど、持っている力は同じなら、俺の進む道にきっと何かが待っているはずだ。

 出来れば待っているのは、ニニのような可愛い女の子だと嬉しいけどね。

 ずっと悪魔達が持ち主とか嫌だな。
 いや、そもそもこの地下世界に人型はいるのか?

 サキュバスは人型といえば人型だけど、戦闘力があるように見えない。
 誘惑のチャームのような魔法は使えるのかもしれないが。

 ゴブリンやオークとは違う、人の顔をした人型が持ち主になって欲しいな~。
 サキュバスに持たれて、女王様プレイの棒として生きるのも悪くないけど、それって叩く相手がきっとオークとかゴブリンなんだろうな。

 俺はどこまでいっても、ゴブリンとオーク止まりなのか?!
 いや、自分を信じろ!
 俺はやれば出来る子だ!
 この闘気、魔力、属性を使える棒の噂が広まれば、きっと素敵な持ち主様と出会えるはずだ!

 
 俺は帰りながら適当に狩りをするオークロードに力を貸し、オークとサキュバス達と一緒に、こいつらの巣に向かっていったのだった。
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