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伝説の木の棒 後編 作者:木の棒

第1章 暗黒の世界

第1話 ゴブリン

 公園の蛇口の水に飲みこまれ、異世界で木の棒として生きた俺は、蠅の悪魔ベルゼブブとの戦いで、ニニと王子の聖魔法サンクチュアリを発動させ、その世界から元の世界へと戻った。

 あれから1年。
 俺は12回目のトイレを終えた後、自宅のトイレから溢れる水に飲みこまれ、再び異世界にやってきた。

 木の棒として、情報雑誌と共に。

 俺は、目覚めると川の浅瀬に転がっていた。

 その俺を拾ったのが、緑色の手を伸ばしてきたゴブリン。
 またまたゴブリンに拾われちまったわけだ。

 そして、ゴブリンに拾われた事実を認識した時、俺は焦った。
 情報雑誌を取られたことじゃないぞ。


 ナール……お前また聖樹の木を落としたのか?


 ナールが罪に問われていないか心配になった俺だったが、その心配はすぐに消えた。
 なぜなら、ここはナール達がいた場所では無いからだ。

 同じ場所では無いが、同じ世界ではあると思う。

 俺はメモリー機能を使ってみた。


メモリー
1.ゴブリンロード(死亡)
2.ゴブリン□
3.ひょろひょろおじさん□
4.空飛ぶ少女☑
5.怪しい女王☑
6.聖女☑
7.優しい王子☑
8.   ☑
9.悪魔のゴブリンロード☑


 ニニ達はちゃんとメモリーにいた。
 チェックをつけたり外したりも出来る。

 そして、いま俺を持っているこの悪魔のゴブリンロードという名前のゴブリン。
 実は……このゴブリン、すでに俺の持ち主として10匹目ぐらいです。

 もう数えてないから、よくわからないけどね。
 死んだらメモリーは消去できることが分かったので、ここに来て死んだゴブリン達は消去している。

 ゴブリン達を消去できるのはいいのだが、消去できない謎の持ち主がいる。
 8番目の持ち主の欄が空白となっている。
 しかもチェックまでついていて、なぜかこれが外せない。

 ゴブリンの前に誰か俺を拾っているのか?
 死亡しているなら、死亡と表示されるはずだから、空白なんてあり得ないだろう。
 バグったのか?

 考えたところで、空白は存在し、俺にはそれを知る術は無い。
 俺の持ち主はいま、悪魔のゴブリンなのだから。


 ここは弱肉強食の世界。
 そして暗黒の世界だ。

 見たことない、赤い光を照らす月が浮かんでいる。
 太陽はなく、ず~っと夜が続いている。

 赤い月の光はそれなりに強いけど、それでも視界を確保するには心もとない。
 光源は自分達で確保しないといけない、松明だったり魔法だったり。

 大地も不毛の大地だ。
 緑なんてほとんどない。
 ごつごつとした岩や、今にも朽ちそうな木。
 そして無残に転がる、生きていた何か。


 これらの情報から推測すると、この暗い世界は大ちゃんが言っていた地下世界ではないのか?という結論に至った。
 俺は地下世界に来てしまったのだろう。

 ニニ達が待っていた聖樹には転生出来なかったのだ。

 そう思った時、すごく落ち込んだ。
 俺はニニ達に会いたいために、牡蠣に当たってまで、トイレの水なんかに飲みこまれてきたのに、みんなに会えないなんて……。

 でも俺がここに来たことには、必ず意味があると思っている。
 俺が諦めず、突き進んでいけば、きっとニニ達に会えると信じている!!

 あれから何年後の世界なのか分からないけど、1年後なのか?
 俺の世界の時間の進み具合と、この世界の時間の進み具合が同じなのか。
 そもそも、転生する時に、時間軸がずれているのか。
 俺には分からない。

 新たな地下世界の木に転生した俺だが、前とは違った姿をしている。


 黒色の木の棒


 ふむ……これは聖樹の木の棒とは違うのか?

 色が黒いし。
 でもスキルはあるんだよね。

 形状がちょっと粗いな。
 ナールが作った完全なる円柱の棒とは違う。


 それにしても、この世界は厳しい。
 ゴブリンが俺を持っても、必ず勝てるわけじゃない

 強い悪魔がごろごろしている。
 俺の力でそれなりの確率で勝っているが、いずれ負ける。

 今のところ、俺の持ち主に勝った相手は、瀕死状態での勝利のため、仲間のゴブリンに倒されている。
 そして残ったゴブリンの中から、一番強いものが俺の新たな持ち主となる。

 これの繰り返しだ。

 さらに、戦闘中の死亡だけではなく、仲間内でも襲う場合がある。
 自分が俺の持ち主になりたくて。
 ゴブルン達のような、平和な村なんて存在しない。


 力こそが正義


 ハーレムなんて囲っていたら、腰振ってる最中に後ろからズドンだ。

 地下世界の悪魔はみんな知能が高い。
 ここにいるゴブリン達全員が俺の力に気づいている。

 そして全員武装していて、集団行動での罠を張った作戦を用いて狩りをしている。
 「言語」と思われる言葉まで言うのだから、ゴブルン達とは比べ物にならない知能の高さだ。

 ゴブリン達が何言っているのか、まったく分からないけどね。


 いまの持ち主は用心深い性格で生き延び、俺を使いこなしていった。
 すでにレベル10だ。

 この地下世界と思われる場所では常に戦っているからか、レベルアップがすごい。
 それともこの黒色の木の棒は、レベルアップの法則が違うのか?
 戦うだけで、どこまでもレベルアップしそうな感じがするぞ。

 いや、やはりこの地下世界特有の事情に思える。

 ゴブルンや王子は、自分より弱い敵をいくら倒してもレベルアップしなかった。
 でもこの地下世界はどうだ?
 自分より強い弱いなんて分からない。

 例え、自分より弱い相手でも、みんな知能を持っているんだ。
 人数差や作戦、罠でいくらでも強い相手を倒せる。
 逆に言えば、強くても弱い相手に負けることがある。

 この地下世界の戦いは、常に「経験」を得るのだろう。



ステータス
超魔剣の木の棒
状態:悪魔のゴブリンロードの超魔剣の木の棒
レベル:10
SP:0
スキル
闘気:レベル4
魔力:レベル3
属性:レベル3



 俺かなり強いです。
 もうかれこれ10日以上、このゴブリンと一緒に戦っているからな。

 しかも知能あるマッチョなゴブリンロードですよ。
 ゴブルンとは違うのです!

 ……ゴブルンが懐かしい。
 まさか、ゴブルンに望郷の念を抱く日がくるとは。

 ま~いくら俺が強くなっても、勝てない時は勝てないけどさ。
 上には上がいます。

 たった今も、キマイラみたいな悪魔から全力疾走で逃げている最中ですから!!!










 逃げ切りました。
 ゴブリンが3匹ほど犠牲になったけど。

 仲間が犠牲になっても何とも思わない。
 そんな感傷に浸ってるよりも、今日の獲物を得ることが大事なのです。

 そして、その獲物を狙って行動中です。



 ゾウ……と言えばいいのか、顔立ちはゾウみたいに可愛くてなくて、すんげ~不細工だけど。

 親子のゾウを狙っている。
 子供だけじゃなくて親もやるだろう。

 予想通り、ゴブリン達が動き出した。
 まずは子供の方に狙いをつける、すると親ゾウが子供を助けようと動き出す。

 速い! このゾウ見た目と違ってメッチャ速い!!
 逃げる子供は無視、突っ込んできた親ゾウを誘導するように、ゴブリン達は逃げる。
 逃げた先に待っているのが……俺を持ったゴブリンロードだ!

 通り過ぎるゾウの後頭部目掛けて、崖の上からジャンプ。
 俺は風魔剣を纏って、親ゾウの後頭部を一閃!!!!!!


 スッパ~~~~~ン!!!!!


 頭真っ二つの親ゾウです。
 子供ゾウは、別部隊のゴブリン達が倒しに向かっているだろう。
 親ゾウがいない子供ゾウなら、ゴブリン達が5匹ぐらいで囲って倒せるはずだ。



 食料として獲物を狩っているから、炎魔剣とかよりも風魔剣がいい。
 獲物を傷つけずに、斬り倒せるから。
 炎だと爆発みたいなの起こって、食べられる部分が減っちゃうからな。

 ゾウを運びやすいサイズに切り分けるゴブリンロード。
 そして切り分けられたゾウの肉を、次々に運んでいくゴブリン達。

 今日はみんなお腹いっぱいに食べられそうだな。
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