第38話 帰るまでが遠足
作戦開始です。
ミリア達の偵察で、白龍が見つかった。
ちょうどよい感じの場所にいるらしい。
シュバルツの第1騎士団50名から30名。
15名ずつの2部隊として、これを囮部隊とする。
白龍の近くにいるその他の5色龍を、左右に散るように、地の果てに誘導。
適当に誘導した後は、囮部隊は地の果てから遠ざかればいい。
龍は地の果てを護っているので、地の果てから遠ざかれば、追ってこないんだそうだ。
ミリアの第8騎士団20名全員で、白龍を結界地点まで誘導。
誘導後は、シュバルツの第1騎士団残り20名と共に、白龍を包囲。
万が一…結界が破られたり、王子が致命傷を受けたりした場合…その身を持って白龍を拠点から遠ざける。
つまり「死んでも王子を護れ」である。
王子のレベルアップのためにも、王子が戦わないといけない。
マリアの第1魔術師団10名が結界内の白龍を遠距離から攻撃してある程度弱らせる。
弱ったところを王子が止めを刺す。
最初から最後までの戦いの経験…これがレベルアップのために必要なのかどうか分からないが、とりあえず最初は安全策で止めだけを狙う。
かっこいい英雄譚よろしく、王子を最初から戦わせるのは無謀で危険な馬鹿な行為である。
ちなみに、ニニは王子が止めを刺す時に、白龍の脚を凍らせて動きを止める係りだ。
5色龍は体長2~3mぐらい。
白龍黒龍になると、体長5mぐらいになる。
テントの中で作戦の最後の確認を終えると、王子の号令で龍討伐開始です!!!
…白龍討伐しました。
あ…あっけない!!
遠くから白く輝く身体の龍…そうまさに想像通りの龍がやってきた。
第8騎士団は、龍の防具で身を固めている。
作戦通りに白龍を誘導したら…マリアが俺を持って結界発動!
どんなに魔力を込めても、俺の魔力供給で魔力切れ起きないので、1日分の魔力全部を注ぐイメージで結界張ったそうだ。
すんごい強力な結界の出来上がりです。
結界に閉じ込められた白龍を、第1魔術師団が属性魔法で攻撃していきます。
結界は魔力で作られた属性魔法は通してくれます。
マリアも俺を持って光属性魔法で攻撃します。
聖属性魔法は?と思ったら、龍には聖属性魔法が一切通用しないとか。
ニニをチラっと見る。
震えている。
いくら覚悟を持ってきたとしても、いきなり初の実戦が龍だもんな。
地の果てにくるまでに、自然界のゴブリンや動物をちょっと倒したとは言っても、あれとは次元が違う。
ニニが白龍の脚を凍らせることが出来なくても問題ない。
王子だけで十分なのだから。
十分に白龍を弱らせたところで、マリアが俺を王子に渡す。
そして王子が白龍に近づくと、結界を解きます。
結界張ってると、王子が中に入れないからね。
王子は次の瞬間、身体強化を使い、一瞬で白龍に近づくと、炎闘気を纏った俺を白龍の頭部に打ち込みます。
…白龍一撃で倒れました。
「レベルアップしました。」
「レベルアップしました。」
「レベルアップしました。」
「レベルアップしました。」
「レベルアップしました。」
キター!キター!キター!
一気に5レベルアップ!!!
大ちゃん予想的中!!!
あっけなかったけど、これでいいんだ。
英雄譚やゲームのように、ピンチからの奇跡的な大逆転!みたいな展開は現実にはいらない。
それは物語の中だからこそ面白いのである。
そんな感じで龍討伐は続いたのです。
あれから2週間ほどかけて、白龍2匹、黒龍3匹倒しました。
龍素材いっぱいです!
ただ、最初に5レベル上がった以降、レベルは上がらなかった。
黒龍を倒してもレベルは上がらなかったのだ。
最初から最後まで王子が戦って倒しても上がらなかった。
黒龍の2匹目の時に、王子が最初から戦ってみた。
王子と黒龍を結界に閉じ込める。
王子が高速で移動するので、属性魔法で援護射撃するのも危ない。
ニニが黒龍の脚を凍らせようと頑張っていた。
何度か危ない場面もあったけど、王子は1人で黒龍を倒すことに成功した。
みなが王子をほめた。
王子も嬉しそうだった。
そんな王子を見つめるニニの笑顔が…お父さんとしては心配だった。
大ちゃんがここにいないので、俺と会話出来る人はいない。
つまり、龍をどれだけ倒しても、もう王子のレベルが上がらないことを伝えることは出来ない。
龍素材の確保を考えたら、別に龍を倒すことは悪いことじゃないしね。
大ちゃんが被害無しで龍を3匹倒せたら上出来と言っていたから、これはかなり良い結果のはずだ。
これだけ素晴らしい結果が出ている最大の要因はマリアだろう。
まず、マリアの結界が強力なのだ。
魔力レベル2になった俺を持ったマリアは、俺を使いこなし始めている。
ニニと王子は俺に助けてもらっている。
マリアは逆で俺を使っている。
道具として使いこなしているのだ。
後で聞いた話しではあるが、最初の白龍は1日分の魔力を注ぐイメージで結界。
徐々に…自らの限界を超えた魔力を注ぐイメージで結界を張っていたらしい。
最後の黒龍を倒した時は、2日分…つまり自分の限界の2倍近い魔力量を注いだ結界を張れたらしい。
さらには、俺の無限魔力供給を使ったマリアの回復。
囮部隊は無傷とはいかなかった。
致命傷を負う騎士はいなかったけど、それなりの傷を負ってしまった騎士もいた。
そこでマリアの聖属性魔法の回復です。
回復魔法という魔法は無い。
回復属性魔法も無い。
聖属性魔法の中に、その人が持つ自己回復能力を高める魔法が存在するだけ。
ヒール!と唱えたらあっという間に傷が塞がるなんてことは無いのである。
神話レベルでは、聖魔法には一瞬で傷を癒したり…死んだ者を生き返させることが出来たそうではあるが…。
自己回復能力を高めるだけでも効果が高いのだが…ここで登場するのが聖樹草茶である。
そう…可愛い娘ニニが心こめて作った聖樹草茶だ!
マリアが聖属性魔法で自己回復能力を高めて、傷口に聖樹草茶を塗る。
軽い傷なら1日で、ちょっとした傷でも2~3日で治る。
さらに、聖樹草茶を全員が飲むことで、心も身体も毎日が万全の体調となる。
さて予定していた日数分の龍討伐を終えて、帰宅の準備です。
帰るまでが遠足です。
みんな笑顔で帰り支度をしています。
死亡者0での白龍3匹、黒龍3匹の龍素材ゲットです。
大戦果です!
イベント発生です。
こういうゲーム的なイベントはいらないっていったじゃないですか…。
帰り支度を終えて、まさに拠点から空飛ぶバイクで飛ぼうとした時。
誰かが空を指さして叫びました。
みな…空を見上げて呆然としています。
俺も呆然としてます。
そこには…殺意を持ってこっちを見る…バハムートの化身がいました。
ステータス
炎闘気を纏う剣士の木の棒
状態:お話出来る優しい王子の炎闘気を纏う剣士の木の棒
レベル:15
SP:5
スキル
闘気:レベル2
魔力:レベル2
属性:レベル1
剣術:レベル2
身体強化:レベル1
炎魔法:レベル1
脱人見知り:レベル1
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