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伝説の木の棒 前編 作者:木の棒

第4章 優しい王子

第38話 帰るまでが遠足

 作戦開始です。

 ミリア達の偵察で、白龍が見つかった。
 ちょうどよい感じの場所にいるらしい。

 シュバルツの第1騎士団50名から30名。
 15名ずつの2部隊として、これを囮部隊とする。
 白龍の近くにいるその他の5色龍を、左右に散るように、地の果てに誘導。
 適当に誘導した後は、囮部隊は地の果てから遠ざかればいい。
 龍は地の果てを護っているので、地の果てから遠ざかれば、追ってこないんだそうだ。

 ミリアの第8騎士団20名全員で、白龍を結界地点まで誘導。
 誘導後は、シュバルツの第1騎士団残り20名と共に、白龍を包囲。
 万が一…結界が破られたり、王子が致命傷を受けたりした場合…その身を持って白龍を拠点から遠ざける。
 つまり「死んでも王子を護れ」である。

 王子のレベルアップのためにも、王子が戦わないといけない。
 マリアの第1魔術師団10名が結界内の白龍を遠距離から攻撃してある程度弱らせる。
 弱ったところを王子が止めを刺す。

 最初から最後までの戦いの経験…これがレベルアップのために必要なのかどうか分からないが、とりあえず最初は安全策で止めだけを狙う。
 かっこいい英雄譚よろしく、王子を最初から戦わせるのは無謀で危険な馬鹿な行為である。

 ちなみに、ニニは王子が止めを刺す時に、白龍の脚を凍らせて動きを止める係りだ。

 5色龍は体長2~3mぐらい。
 白龍黒龍になると、体長5mぐらいになる。


 テントの中で作戦の最後の確認を終えると、王子の号令で龍討伐開始です!!!





 …白龍討伐しました。

 あ…あっけない!!

 遠くから白く輝く身体の龍…そうまさに想像通りの龍がやってきた。
 第8騎士団は、龍の防具で身を固めている。
 作戦通りに白龍を誘導したら…マリアが俺を持って結界発動!

 どんなに魔力を込めても、俺の魔力供給で魔力切れ起きないので、1日分の魔力全部を注ぐイメージで結界張ったそうだ。
 すんごい強力な結界の出来上がりです。

 結界に閉じ込められた白龍を、第1魔術師団が属性魔法で攻撃していきます。
 結界は魔力で作られた属性魔法は通してくれます。
 マリアも俺を持って光属性魔法で攻撃します。

 聖属性魔法は?と思ったら、龍には聖属性魔法が一切通用しないとか。

 ニニをチラっと見る。
 震えている。
 いくら覚悟を持ってきたとしても、いきなり初の実戦が龍だもんな。
 地の果てにくるまでに、自然界のゴブリンや動物をちょっと倒したとは言っても、あれとは次元が違う。

 ニニが白龍の脚を凍らせることが出来なくても問題ない。
 王子だけで十分なのだから。

 十分に白龍を弱らせたところで、マリアが俺を王子に渡す。
 そして王子が白龍に近づくと、結界を解きます。
 結界張ってると、王子が中に入れないからね。

 王子は次の瞬間、身体強化を使い、一瞬で白龍に近づくと、炎闘気を纏った俺を白龍の頭部に打ち込みます。
 …白龍一撃で倒れました。

 「レベルアップしました。」
 「レベルアップしました。」
 「レベルアップしました。」
 「レベルアップしました。」
 「レベルアップしました。」


 キター!キター!キター!
 一気に5レベルアップ!!!
 大ちゃん予想的中!!!


 あっけなかったけど、これでいいんだ。
 英雄譚やゲームのように、ピンチからの奇跡的な大逆転!みたいな展開は現実にはいらない。
 それは物語の中だからこそ面白いのである。


 そんな感じで龍討伐は続いたのです。

 あれから2週間ほどかけて、白龍2匹、黒龍3匹倒しました。
 龍素材いっぱいです!

 ただ、最初に5レベル上がった以降、レベルは上がらなかった。
 黒龍を倒してもレベルは上がらなかったのだ。
 最初から最後まで王子が戦って倒しても上がらなかった。

 黒龍の2匹目の時に、王子が最初から戦ってみた。
 王子と黒龍を結界に閉じ込める。
 王子が高速で移動するので、属性魔法で援護射撃するのも危ない。

 ニニが黒龍の脚を凍らせようと頑張っていた。
 何度か危ない場面もあったけど、王子は1人で黒龍を倒すことに成功した。

 みなが王子をほめた。
 王子も嬉しそうだった。
 そんな王子を見つめるニニの笑顔が…お父さんとしては心配だった。

 大ちゃんがここにいないので、俺と会話出来る人はいない。
 つまり、龍をどれだけ倒しても、もう王子のレベルが上がらないことを伝えることは出来ない。
 龍素材の確保を考えたら、別に龍を倒すことは悪いことじゃないしね。
 大ちゃんが被害無しで龍を3匹倒せたら上出来と言っていたから、これはかなり良い結果のはずだ。

 これだけ素晴らしい結果が出ている最大の要因はマリアだろう。

 まず、マリアの結界が強力なのだ。

 魔力レベル2になった俺を持ったマリアは、俺を使いこなし始めている。
 ニニと王子は俺に助けてもらっている。
 マリアは逆で俺を使っている。
 道具として使いこなしているのだ。

 後で聞いた話しではあるが、最初の白龍は1日分の魔力を注ぐイメージで結界。
 徐々に…自らの限界を超えた魔力を注ぐイメージで結界を張っていたらしい。
 最後の黒龍を倒した時は、2日分…つまり自分の限界の2倍近い魔力量を注いだ結界を張れたらしい。

 さらには、俺の無限魔力供給を使ったマリアの回復。
 囮部隊は無傷とはいかなかった。
 致命傷を負う騎士はいなかったけど、それなりの傷を負ってしまった騎士もいた。

 そこでマリアの聖属性魔法の回復です。

 回復魔法という魔法は無い。
 回復属性魔法も無い。
 聖属性魔法の中に、その人が持つ自己回復能力を高める魔法が存在するだけ。
 ヒール!と唱えたらあっという間に傷が塞がるなんてことは無いのである。

 神話レベルでは、聖魔法には一瞬で傷を癒したり…死んだ者を生き返させることが出来たそうではあるが…。

 自己回復能力を高めるだけでも効果が高いのだが…ここで登場するのが聖樹草茶である。
 そう…可愛い娘ニニが心こめて作った聖樹草茶だ!

 マリアが聖属性魔法で自己回復能力を高めて、傷口に聖樹草茶を塗る。
 軽い傷なら1日で、ちょっとした傷でも2~3日で治る。
 さらに、聖樹草茶を全員が飲むことで、心も身体も毎日が万全の体調となる。

 さて予定していた日数分の龍討伐を終えて、帰宅の準備です。
 帰るまでが遠足です。
 みんな笑顔で帰り支度をしています。
 死亡者0での白龍3匹、黒龍3匹の龍素材ゲットです。
 大戦果です!


 イベント発生です。
 こういうゲーム的なイベントはいらないっていったじゃないですか…。


 帰り支度を終えて、まさに拠点から空飛ぶバイクで飛ぼうとした時。
 誰かが空を指さして叫びました。

 みな…空を見上げて呆然としています。
 俺も呆然としてます。

 そこには…殺意を持ってこっちを見る…バハムートの化身がいました。



ステータス
炎闘気を纏う剣士の木の棒
状態:お話出来る優しい王子の炎闘気を纏う剣士の木の棒
レベル:15
SP:5
スキル
闘気:レベル2
魔力:レベル2
属性:レベル1
剣術:レベル2
身体強化:レベル1
炎魔法:レベル1
脱人見知り:レベル1
+注意+
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