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伝説の木の棒 前編 作者:木の棒

第3章 怪しい女王と聖女

第23話 新しい仕事

 俺は女王を最大限に警戒している。
 こいつは…俺と同類だ。
 つまり転生者だ。

 女王の姿はこの世界の人間のものと思える。
 つまりトリップ…転移者では無い。
 魂だけがこの女王に宿ったのだろう。
 宿ったのがいつなのか…生まれた瞬間からなのか…ある特定の時期に宿ったのか分からない。

 女王が呟いた日本語を聞いた日から数日…俺は女王の部屋で過ごすことになった。
 例の谷間を見つめていたい女性神官も度々、女王の部屋にやってきては、俺のことを見つめて触ってくる。
 胸で挟んでみると何か分かるかもしれませんよ?

 数日後…俺は女性神官に持たれて部屋を出た。
 向かった先には…ニニがいた。

 ニニ!
 会いたかったよ!
 俺のニニ!

 久しぶりにあったニニは…いつもの黒いワンピース姿では無かった。
 この城にいる女性神官達が着ている法衣のような、白いローブを着ていた。

 …それがめっちゃ可愛いの!
 もうすんごい可愛いの!
 神々しいほど可愛いの!

 ニニも久しぶりに俺に会えて嬉しそうだ。
 女性神官から俺を渡されると、ぎゅっと俺を抱きしめてくれた。
 俺は尻尾を振る犬のごとく、ニニに魔力を流していく。
 ニニも俺の魔力を感じて、笑顔がはじける。

 ニニの様子を微笑ましい笑顔で見ている女性神官。
 ニニが落ち着いたところで、一緒に移動していく。
 入った部屋には…女王がいた。
 俺の警戒心が動く。
 それに応じるように魔力が動いたのか…ニニが一瞬俺を見つめた。

 女王は優しそうな笑顔でニニを迎える。
 そしてニニに…葉っぱを渡す。
 これはニニが盗ったあの葉っぱと同じ葉っぱか?

 部屋には様々な器具が置かれていた。
 ここは薬を調合する部屋ではないのだろうか。
 ニニは女王と女性神官が見つめる中…葉っぱを俺ですりつぶしていく。

 もちろん俺は薬調合スキルを発動したよ。
 可愛いニニのためだ。

 部屋にはニニ、女王、女性神官の3人しかいない。
 俺で一生懸命葉っぱをすりつぶす音以外は何も聞こえない。
 ニニはあの日とまったく同じように…葉っぱを茶葉のようにすりつぶして、それでお茶を淹れる。
 出来あがったお茶を女性神官が確認する。
 そして頷きあう女王と女性神官。

 女王は出来あがったお茶を前に、ニニに優しく語りかけていく。
 ニニは女王の言葉を真剣に聞いていて、コクコクと頷いている。
 やがて女王がニニの頭を優しく撫でると、ニニも嬉しそうな笑顔を見せる。
 女王は女性神官に後は頼むという感じで部屋を出ていった。

 その後は、女性神官がニニに部屋の器具のことをいろいろと教えているようだ。
 一通り説明を終えると、一人の女性が入ってきた。
 メイド服を着ている。
 その女性をニニに紹介すると、女性神官とメイドも部屋を出ていく。
 部屋にはニニだけが残された。

 久しぶりにニニと2人きりになれて俺は嬉しいのだが、いま俺はニニに使われて葉っぱをすりつぶしている真っ最中だ。
 ニニは部屋で1人…例の薬草葉っぱから、お茶を作る作業を続けている。
 これはニニの新しい仕事ってことなのか?
 ニニは…薬草茶を作る係りになったのか?

 それにしても、どうして1人なんだ…。
 助手みたいな人をつけてくれたっていいじゃないか。
 ただひたすら葉っぱをすりつぶす作業は、結構大変だと思う。
 ニニは力が強くないからな。

 ニニは女性神官がやってくるまで、ずっと薬草茶を作っていた。
 女性神官が入ってくると、作った薬草茶のビンを見せる。
 そのビンを1つ1つ確認する女性神官。
 何やらニニと話しながら、ああでもない、こうでもないと話しているように見える。


 ここで問題発生。
 大問題発生です。

 薬草茶を作り終えたニニは…俺を洗面所のようなところで葉っぱを洗い流してくれた。
 そう…この城には…洗面所のようなものがあるのだ!
 いったい誰だ!こんな現代日本チックな技術を開発したのは!
 洗面所があるせいで、ニニがお風呂で俺を洗ってくれる幸せイベントが無くなってしまうではないか!
 許さない…許さないぞ!

 俺はこの世界のことを知らない。
 知らないから推測するしかない。
 もともとこの世界に、こんな洗面所があるとすれば、それはもうこの世界を恨むしかない。
 だが…この世界に洗面所というものが本来は無かったとしたら…。
 考えられるのは1つしかない。
 あいつだ…女王だ。
 あいつが転生者としての現代日本の知識と魔法を組み合わせて、洗面所を作り上げたんだ!


 俺は女王に対する警戒を改めて心に誓ったのであった。


 洗面所で俺を綺麗に洗ってくれたニニは、俺を大事そうに持ちながら夕食を食べている。
 女性神官と一緒に。
 夕食のテーブルには、ニニのお母さんの姿もあった。
 お母さんも綺麗な服を着せてもらっている。
 ひどい扱いを受けていないと分かって、俺は安心した。

 夕食が終ってお茶を飲んでいると、女王がやってきた。
 女王は笑顔で座ると、気軽にニニやお母さんに話しかけている。
 楽しい女子のお茶会といった感じだ。

 お喋りが一通り終えると、女王はニニから俺を受け取ろうとする。
 ニニは一瞬考えるように手が止まる。
 でも…ニニは女王に俺を渡してしまった。

 ノ~~~!!!
 俺はニニと一緒に寝たいよ!
 ニニに抱かれて寝たいよ!
 女王の部屋に置かれて独りで夜を過ごすの嫌だよ!


 そんな毎日を繰り返すようになった。
 そしてイベントが発生してしまった。

 その日も夕食の後の、楽しい女子のお茶会。
 メンバーはいつも、ニニ、お母さん、女王、女性神官の4人だ。

 ただその日…女王が真剣な表情でニニに何かを語りかけた。
 ニニは驚きと動揺の表情を見せる。
 そんなニニを女性神官が優しく話しかけて落ち着かせる。
 見事なコンビネーションだな、こいつら。

 ニニはお母さんからも何かを言われて…ついに頷いて、俺を女王に渡した。
 それはいつものように、お茶会が終わるから俺を女王に渡したんだと思った。
 思ったのだが…。


「持ち主が変更されました。ステータスがリセットされます」


 俺は女王の物になってしまった。


ステータス
木の棒
状態:怪しい女王の木の棒
レベル:1
SP:1
スキル:無し
+注意+
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