第21話 ドアーフ?ドワーフ?
犯人はお前だ!
っとニニに指さされたわけでは無い。
ニニが昨夜からの出来事を説明するのに、俺のこと…木の棒のことを説明しないわけにはいかないよな。
ニニは言葉を選びながら慎重に俺のことを女王に話していく。
時に驚いたような表情で…時に嬉しそうな表情で…俺のことを話してくれる。
そんなニニのことを見ていると、俺まで嬉しくなってくる。
ニニは俺のことを話していくうちに、徐々に興奮していった。
最初は慎重に選んでいた言葉も、興奮が高まるにつれて、次から次へと言葉が波のように出てくる。
話しながら、あっ!と気づいたように何かを話したり。
話しながら、う~~んとニニ自身が考え込んでしまったり。
ニニの話しを聞き終えた女王は笑顔だ。
笑顔で…俺を持ってくるように指示したのだろう。
宰相のような偉そうな男性が…俺を使用人から受け取ると女王に俺を渡す。
俺を握りしめて、まじまじと木の棒を見る女王。
女王に握られて、まじまじと谷間を見る木の棒。
女王は何かを思いついたかのように指示すると、俺は偉そうな宰相にまた渡されて…宰相は俺をニニに渡した。
俺はこの瞬間を待っていた。
ニニに持ってもらった瞬間…俺はニニに干渉する。
発動するのは氷魔法。
目標は…もちろんおっさん騎士だ!!
俺から一気に魔力が高まったことに気付いたニニ。
俺を制止しようとするが、俺は止まらない。
おっさん騎士を凍らす!!!
足元から徐々に凍っていくおっさん騎士。
悲鳴を上げている。
このまま全身を凍らせてやる!っと思っていたのだが、あの女性騎士が俺をニニから取り上げる。
ニニに干渉出来なくなった俺の氷魔法は、おっさん騎士を下半身まで凍らせたところで止まってしまった。
ニニが森の中で氷魔法を使った時は一瞬だったのに…なんで一瞬で凍らせられなかったんだ?
ニニに干渉して…ニニが願うこと…ニニの意志無しに魔法を発動したからか?
騒然となった部屋の中…女王は冷静だった。
おっさん騎士が凍っているのを見て…嬉しそうな笑顔を見せていた。
いや、部下が氷漬けにされて笑顔ってどうなのよ?と思うけど。
ニニが釈明するように女王に話す。
ニニの言葉におっさん騎士が怒鳴り声をあげる…下半身凍ったまま。
おっさん騎士の言葉を、女性騎士が遮る。
女性騎士は女王に何かを説明する。
きっと、取調室での出来事を説明しているんだ。
そうなんです!
このおっさん騎士悪い人なんです!
罰を与えないといけないのです!!
下半身が凍ったまま、女王に質問されて青ざめるおっさん騎士。
自分はやっていないと否定しているのだろうか。
女性騎士の冷たい視線と声を聞いた女王は…おっさん騎士に何か言うと、騎士3人掛りで凍ったおっさん騎士を持ち上げて部屋から出ていった。
エッチなことはいけないんですよ!
おっさん騎士が出ていき静かになると…女王は、あの偉そうな宰相に目配せする。
すると宰相の合図で扉が開く。
誰か入ってきた。
子供…じゃないな…背は子供のように小さいけど、顔は髭もじゃだ。
罪人のようなぼろぼろな布きれの服1枚の小さな髭もじゃ男が入ってきた。
髭もじゃ男は、女王の前で膝をつき頭を下げる。
すぐに女王は髭もじゃ男の顔を上げさせると、女性騎士から俺を受取り、髭もじゃ男に見せる。
すると…罪人のような虚ろな目をしていた髭もじゃ男の目がぱっ!っと開いた。
本当にぱっ!っと大きくなったのよ。
まるで神を見るような感動した目で俺を見つめる髭もじゃ男。
そして…偉そうな宰相が俺を髭もじゃ男に渡す。
俺を握りしめて、あちこち触りながらじっくりと観察する髭もじゃ男。
その目には涙が溢れていた。
再び頭を女王の下げて、土下座スタイルのまま、髭もじゃ男は女王に話していく。
その言葉を笑顔で聞いている女王。
その様子をぽかんとした表情で見ているニニ。
この髭もじゃ男が…まさか…俺の本当の持ち主なのか?!
嫌だ!嫌だ!!
俺の持ち主はニニにもう決まってるんです!
時々ボインな女王様に持たれるのは許せるけど、こんな髭もじゃ男が俺の本当の持ち主なんて認めない!
俺の心の叫び虚しく、髭もじゃ男は俺を大事に抱きしめながら、ただただ泣くのであった…俺も涙目。
女王との謁見?も終わりなのか、ニニとお母さんは女性騎士に連れられて部屋を出ていく。
俺は髭もじゃ男に抱かれたままだ。
ニニが俺を見ている。
ニニ!助けて!俺は君の物だよ!
こんな髭もじゃ男嫌だ!!!!!
ニニが部屋を出ていってしまった…。
でも例のシステム音が聞こえない。
俺の持ち主の条件は、はっきりと分かっていないが、ニニは俺を誰かにあげるという意思を示していないし、俺を放棄する意思もないだろう。
だから俺の持ち主はニニのままでいられるはずだ。
女王の部屋に残された俺と髭もじゃ男。
女王に優しい声で語りかけられると、髭もじゃ男はまた土下座して…俺を宰相に預けて部屋を出て行った。
今さらだけど、この髭もじゃ男ってドアーフじゃね?
ん?…ドアーフだっけ、ドワーフだっけ?どっちだ?
女王の後ろを宰相に持たれた俺は進んでいく。
とある場所までくると、宰相は俺をメイドのような女性に預けてお辞儀して去っていった。
俺はどうやら女王の部屋に運ばれたらしい。
女王の部屋のテーブルに置かれる俺。
女王は部屋でリラックスタイムだ。
優雅に紅茶みたいなものを飲んでいる。
しばらくすると、女性神官が入ってきた。
さっきの女王との謁見中には見なかった顔だな。
そして見たくなるような胸の谷間だな、おい。
女性神官は椅子に座ると女王と親しげに話している。
その様子だけで、この女性神官の地位が高いことが分かる。
二人とも時々俺を見つめながら、あれこれと話し込む。
話が終わったのか、女性神官はお辞儀をして、部屋から出ていった。
薬草お茶のビンを1つ持っていった。
そして女王もどこかに向かうのか…紅茶を一口飲むと立ち上がる。
部屋のドアの前で立ち止まると、一度振り返り俺を見つめて、女王が呟いた。
「まったく頭の痛い話だ」
その言葉に…俺の心臓は飛び出そうになった。
木の棒だから心臓ないけどさ。
女王が呟いた言葉…それは俺にも理解が出来た。
それは日本語だった。
ステータス
すりつぶすのが得意な冷たい魔力の木の棒
状態:空飛ぶ少女のすりつぶすのが得意な冷たい魔力の木の棒
レベル:4
SP:0
スキル
魔力:レベル2
氷魔法:レベル1
薬調合:レベル1
+注意+
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