第17話 葉っぱ
いきなりですがイベント発生です。
いや、イベントの続きか。
ニニは俺に跨って空を飛んでいる。
夜の学校が終わった後だ。
いつもならすぐに家に帰るのに…今日は向かった方角が違う。
ニニは街の外に向かっている。
今夜はあいにくの雨だ。
雨合羽のようなフードつきマントを着たニニは…雨に紛れていったいどこに向かっているのか。
1時間ほど飛んだだろうか…着いた先は…森の入口だった。
ここまで来ると、街の灯りなんて無い。
ニニは街の灯りが届かないところに来ると、何かの魔法を詠唱した。
すると、ニニの指から光の玉が…。
おお…光の玉だ!
ニニは光属性の魔法も使えるのか。
ただ、俺からかなり大量の魔力がニニに流れた。
ニニは光の玉が出てきたことを喜んでいる。
…もしかして初めて成功したとか?
俺の魔力頼みだったのかもな。
灯りを確保したニニは森の中に入っていく。
大丈夫か…ゴブリンとかオークとか鹿とか出ないか?
ニニは森の中に入ると何かを探している。
何か…たぶん薬草を探しているのだろう。
お母さんの薬が切れたこのタイミングで、ニニのこの行動。
やってきたのは森の中。
そして探すものと言えば薬草だろう。
異世界転生でのテンプレでもある、冒険者ギルドでの初めてのクエスト…それは薬草採集だろう!
くそ…鑑定スキルがあればな…薬草がすぐ見つかるんだけど、あいにく持ち主依存のスキルの中に鑑定は無い。
俺がニニを助けてあげられるのは、魔力を供給して灯りの光の玉を維持することぐらいだ。
冷たい雨の中、ニニはどんどん森の奥に向かっていく。
本当に大丈夫か…マジでゴブリンとか出てくるんじゃないか?
最悪…水魔法か氷魔法を取るか…。
闘気と同じで、俺の魔力は無限…の可能性がある。
実際には分からない。
検証していないのだ。
膨大な魔力をニニに流して検証しようと考えたこともあったけど…もしも…もしもそれで、ニニに何かあったらと思うと検証出来なかった。
膨大な魔力がいきなり身体に流れ込んできて、ニニが俺の魔力に耐えきれなくて爆発しちゃうとか…怖くてとても検証なんて出来ない。
そうこうしている内に…ニニが目的のものを見つけたようだ。
なんか巨大な木の根?みたいなものから生えている葉っぱだ。
それが薬草なの?
俺には分からないが、とりあえずニニは喜んでいる。
この葉っぱからきっと薬が出来るのだろう。
ニニは、木の根から生えた葉っぱの前で正座をして祈りを始めた。
…いやいやいや、ニニ今は急ごうよ!
ほら、危険な魔物が来たりしたら危ないよ!
早くその葉っぱを、ぱっと取って空飛んで帰ろうよ!
ニニの祈りは3分以上続いている。
いつまで祈りを捧げているんだ…。
冷たい雨に打たれながら…ニニが風邪引いちゃうよ。
ようやくニニは木の根から葉っぱを取った。
それを大事にハンカチのような布で包むと袋に中に入れる。
ニニは周りを気にしながら歩き始めた。
あれ?…俺で飛んで帰らないの?
森の木が邪魔だけど、ゆっくり上昇すれば大丈夫だと思うんだけどな。
何故か歩いて森を抜けようとするニニ。
ただ、ここでさらにイベント発生です。
見つかったのです…いや魔物じゃなくて人間に。
光の玉を持った人が遠くに見えた瞬間、ニニは自分の光の玉を消した。
そして、その人から逃げるように反対方向に走っていく。
向こうはこっちに気付いているのか、何か叫んでいる。
人から逃げるニニ。
どうしてだ?
魔物から逃げるなら分かるけど、どうして人から逃げているんだ?
…異世界転生お約束の薬草採集クエスト。
そんな感覚でいた俺は大きな勘違いをしていたのではないか?
薬草採集がギルドのクエストとしてある…でも実際にそんなことあり得るのか?
薬になるような草はお金になるということだ。
普通は…誰かがその一帯を管理していたり、利権を確保していたりするんじゃないのか?
つまり…ニニは薬草を採りにきたんじゃなくて…盗りにきたってことか。
ニニを追ってきていると思われる人達は、この薬草地帯を管理している組織の人達なんだろう。
こんな夜中に森の中を巡回するなんて…そんなに大事な薬草なのか?
ニニも薬草をとる前に、祈りを捧げていたな。
かなり貴重な薬草なのかもしれん。
となると…捕まった時のニニの罪は重い可能性がある!
い、いかん!俺の娘がピンチだ!
薬草を盗ったことはいけないことだけど、お母さんを思ってのことだし、それに貴重かもしれないけど、葉っぱ1枚のことだ!
俺はニニを助ける!
さて…水魔法か氷魔法か…逃亡のためにはどっちがいいんだろう。
そもそもどんな魔法が使えるのか分からん!
水魔法だと水が出るんだよな…どれだけの水が出るのか分からないけど、自然を壊すようなことになったら、ニニ自身の罪の意識が増えてしまうだろう。
氷か?
氷なら凍らせるだけだから、太陽の光で融けて元通りだもんな。
追ってくる人達の足元をちょっと凍らせることが出来れば、かなり有効だろう。
「氷魔法を取得しました。」
今さらだけど、氷魔法と氷属性魔法って違うのか?
全スキル一覧見たら、氷魔法とは別に氷属性魔法ってあるんだけど…なんだこれ?
それに氷魔法を取っても、どうやって使ったらいいのか分からない。
闘気や魔力の時と違って自然と理解出来るといった感じがないのだ。
う~~~ん…念じればいいのか? イメージすれば魔法が出るかもしれん!
氷魔法が使えるわけだが…いきなり木の棒から氷魔法が出たらニニ驚くかな…。
まぁ、でも緊急事態だ!仕方ない!
近づいてくる追手の足元が凍るイメージで念じてみる!
むむむむ~~~~!!!!!!!
あ…あれ?
何も起きない。
俺の魔力が高まる気配がない。
え…ええ?!
ど、どういうこと?!
ステータス
ヒヤッと冷たい魔力通な木の棒
状態:空飛ぶ少女のヒヤッと冷たい魔力通な木の棒
レベル:3
SP:1
スキル
魔力:レベル1
氷魔法:レベル1
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