第13話 学校と仕事と朝食
魔力:魔力を吸収したり与えたりする
これが魔力スキルの説明文だ。
これ以上の説明はどんなに念じても出てこない。
この説明にある魔力を与える。
ニニが空を飛んでいる時、俺の身体から魔力がニニに供給されている。
俺はニニに魔力を与えているってわけだ。
そして、その効果でニニは、ひょろひょろおじさんが持っていた掃除の箒が実は何らかのすごい魔道具だと思って、おじさんから譲り受けようと必死だったんだろう。
そう考えると、コイン1枚で俺を買ったニニって意外としたたかなのかもしれん。
魔力を吸収するというのは、ニニが飛ぼうとした時に、ニニから俺に魔力が流れることだろうか?
でもそれは吸収というよりも、本来空を飛ぶためにニニが箒に魔力を流す行為に思える。
吸収という言葉から推測すると…俺が強引にニニから魔力を吸い取れると思えるのだが…さっきちょっとニニから魔力を吸い取ってみようと思っても、まったくそんなことは出来なかった。
これについては今後研究していかないとだめだな。
さて、空を飛んでニニが向かった先は…大きな建物だ。
中に入ると…学校?
ひょろひょろおじさんに掃除道具として使われていた学校にどことなく似ている構造の建物だ。
そして教室に入ると…大きな教室に8人ぐらいの人間がいた。
大人もいれば、老人のようなおじさんもいる。
ニニと同じぐらいの歳の人間はいなかった。
席が決まっていないのか、みんなばらばらに座っている。
仲良さそうに話し合っている連中もいるが、基本みんな一人だ。
ニニは最前列の端っこに座る。
そこが自分の定位置のように。
しばらくすると、教師と思われる人間が入ってきた。
そしてすぐに授業が始まる。
間違いない…ここは学校で、いまニニは授業を受けている。
でもなぜ夜に? それにこんなばらばらな年齢の人達と。
推測するに…ニニは昼間の学校に通うお金が無いのではないだろうか。
夜間学校ってやつだ。
ニニは昼間…もしかして働いているんじゃないか?
昼間は働いて、夜間学校に通う。
ぼろぼろのノートのような物に、今にも無くなりそうな短い鉛筆で、教師の言うことを集中して聞いてメモるニニ。
教科書と思われるものは、授業が始まる前に教師から手渡された。
そしてその科目?が終わると、教科書は教師に回収されてしまう。
ニニは教科書を買うお金がないから貸し出してもらっているのか。
時間にしてどれくらいだろう…3時間ぐらいか?授業が終わった。
ニニに貸し出されて回収された教科書は4冊だったが、1回の授業は1時間も無かったと思う。
授業が終わると、後ろに席に座っていた他の生徒達はすぐに帰っていった。
授業中、寝ていた奴もいたな。
ちゃんと勉強しろよ!お前らだっていろんな事情があってそれでも夜間学校に来てるんだろ!
ニニも授業が終わって教室を出ようとしたが、教師に呼び止められる。
…どうやら教師に俺…つまり箒のことを聞かれているようだ。
ニニは教師に説明しているが、教師の反応があまりよろしくない。
それでもニニは諦めず、丁寧に説明していく。
教師は最後には、面倒になったのかニニの言葉に納得してくれたようだ。
ニニは嬉しそうに箒を抱きしめ…うおっ!
…ニニに抱きしめられちゃった…えへ♪
学校から家に空を飛びながら戻るニニ。
街はまだまだ灯りに照らされていた。
夜の屋台のようなものから、美味しそうな匂いが流れてくる。
ニニは一瞬その屋台を見て、食べたそうな顔をしたけど…すぐに表情を戻してお母さんの待つ家に急いで帰っていった。
ニニの家に灯りはなく、真っ暗だ。
音を立てないようにドアを開けると、慣れた手つきで家の中に上がっていく。
布の袋を自分の部屋に置く。
また引出しから短剣を取り出して、短剣に何かを語りかける。
短剣をしまうと、別の部屋のドアをそっとあける。
そこには…静かな寝息を立てて寝ているお母さんがいた。
ニニはお母さんの様子を見ると安心したように、またそっとドアをしめる。
俺を部屋の机の上に大事そうに置くと、ニニはパジャマ?と思われる服を持って自分の部屋から出ていってしまった。
…風呂か?
いや、この世界に風呂というものがあるのか分からない。
ラノベ知識からいくと、風呂とは王族貴族のみで、一般市民は水浴びで終わるそうだが…。
くっ!風呂にしろ、水浴びにしろ、箒を持っていく理由は無いか!
無いな…本当に無いか?………無いな…まったく持って理由が無い。
ちなみに俺はロリコンでは無い。
ニニは可愛らしい少女だが、それはニニの雰囲気を表現しているのであった、ニニは立派な女性だ。
ニニの年齢を知る術は無いが、きっと高校生ぐらいだろう。
…高校生ってロリコンじゃないよね?
ラノベ知識からいけば、だいたいこういう世界って15歳ぐらいで成人するはずだし!
部屋に戻ってきたニニは、予想通り髪が濡れていた。
ポニーテールが解けて、髪型が変わるとなんていうか…こうグッとくるよね!
印象が変わって2度美味しい!みたいな!
…何を言ってるんだ俺は。
ニニは机の上に置かれた俺を見て…何か語りかけてきた。
その表情は暗くてはっきりと分からないけど、笑顔だったり、真剣な表情だったり…ちょっと悲しそうな表情だったりに見える。
時間にして5分ぐらいだろうか。
ニニは独り言のように俺に語りかけて…最後に箒の木の棒の部分…つまり俺の部分に優しくキスをしてベットに入っていった。
……俺はこの子のために生きようと決心した。
次の日の朝…朝といっても早朝。
太陽がまだ地平線から微かに見えるぐらいの明るさの早朝。
ニニは…牛乳配達をしていた。
なんて働き者なのニニ!
新聞というものがこの世界にあるのか分からない。
いや多分ない。
牛乳配達をする家の先々に新聞らしきものは無い。
となると、早朝のバイト?は牛乳配達となるのだろう。
いや、このビンに入ってる白い液体が牛乳なのか何なのか知らないけど、牛乳と呼ぶことにしよう。
ニニは俺を使って空を飛びながら、牛乳配達をこなしていく。
あっという間に、最初に渡された牛乳を配達終えると、主任らしき人が驚いていた。
ニニはさらに牛乳を受け取ると、また配達…戻ってまた配達…合計3回も配達した。
驚きの表情の主任は、ニニを褒めてくれているようだ。
ニニは賃金をもらうと嬉しそうな笑顔で、主任から牛乳を2個もらう。
そしていまもらったばかりの賃金でパンを買う。
ついでに卵も買った…卵を買う時にニニがやけに難しい顔をしていたけどなんだったんだろう?
家に帰ると、ニニは朝食の準備を始める。
お母さんはまだ寝ているのか?
今日の朝食は、パンと牛乳とゆで卵。
うむ、今朝ゲットしたものばかりだな。
ドアの開く音が聞こえる。
お母さんがやってきた。
お互い挨拶を交わす…っとお母さんが驚いた!
え?お母さんどうしたの?
お母さんは…テーブルの上の朝食に驚いているようだ。
驚くお母さんを見て笑顔のニニ。
ニニが今朝のバイトのことを話しているのだろうか…話し終えるとニニとお母さんは抱き合っていた。
お母さんの目には涙が見える。
…もしかして…この朝食は二人にとってものすごく豪華なのではないだろうか?
ステータス
ちょっと魔力通な木の棒
状態:空飛ぶ少女のちょっと魔力通な木の棒
レベル:2
SP:1
スキル
魔力:レベル1
+注意+
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