30度目の優勝を決め、待ちかまえたファンに赤いバラを投げる笑顔の白鵬=27日、愛知県体育館で
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◇名古屋場所 千秋楽
(27日・愛知県体育館)
横綱白鵬(29)=宮城野=は日馬富士を上手出し投げで退けて13勝2敗とし、2場所連続30度目の優勝を果たした。優勝回数で30度の大台到達は大鵬、千代の富士に続いて史上3人目。関脇豪栄道(28)=境川=はトップに並んでいた琴奨菊を寄り切りで破り12勝。審判部は大関昇進を諮る臨時理事会の開催を北の湖理事長(元横綱)に要請し、理事長もこれを了承した。30日の秋場所番付編成会議と理事会で昇進が正式に決まる。琴奨菊は初賜杯を逃した。平幕の遠藤(23)=追手風=は勝ち越した。
2敗で並んでいた琴奨菊が目の前で負けた。勝てば優勝が決まる。今場所は肝心なところで墓穴を掘ってきた。「結果を求めて、心と体が一致しない部分があった。最後は自分を信じて」。白鵬は史上3人目の優勝30回を前に心を静めると、日馬富士を上手出し投げで退けて見せた。
「29回、30回と近づくほど苦労しました。(喜びは)違いますね。苦労した分ね。達成感があります。昭和の大横綱に肩を並べた景色にいる。自分は幸せ」
土俵下インタビューで見せた満開の笑みが、苦しかった場所を象徴していた。単独トップに立ったと思ったら、すぐに並ばれる展開。「多少の緊張感はあったけど、初めての経験じゃない」。自分を信じ抜いた結果だった。
入門する部屋を探すため、2000年10月に初来日した当初に撮影した写真がある。「(部屋が見つからず)次の朝にはモンゴルへ帰るチケットを持っていた、62キロの少年。(今あるのは)たまたまって言うかもしれないけど宿命、運命っていうかね」と当時を振り返った。
そして、こう付け加えた。「あのときの写真をもっと世の中に出してほしいですね。横綱も最初から大きい人間じゃなかったと。お父さん、お母さんが自分の子どもたちに夢と希望や、もっと可能性を持つんじゃないかと思う。だって、あんな少年、どこにでもいるでしょ?」と。
これからもそう。双葉山の69連勝を目指して連戦連勝を重ねていた2010年。「大鵬親方に電話をして相談した」という。すると、「われわれも記録に挑戦して、できなかった。できるものなら頑張ってもらいたい。記録は破られるためにあるのだから」と言われた。その言葉で「すっきりしました」と思い返す。
千代の富士の31回の上には、大鵬が持つ史上最多の32回の大記録が待っている。今、白鵬がたずねても、大鵬さんは同じ返事をしただろう。迷いなく、信じる道を突き進むだけだ。 (岸本隆)
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