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伝説の木の棒 前編 作者:木の棒

第2章 空飛ぶ少女

第12話 ニニ

 魔力通になった木の棒です、こんにちは。
 新しい持ち主様とも出会えてハッピーです。

 新しい持ち主様をご紹介いたします。
 某有名アニメ映画に出てくるような、可愛らしい女の子です。
 年齢は分かりませんが、たぶん15歳ぐらいでしょうか。
 残念ながら大きな赤いリボンで髪はとめていません。
 でもポニーテールで可愛いです。
 真っ黒なワンピースを着ています。
 紫ではなく真っ黒なので、ここもちょっと違います…何と違うのかは置いといて。

 そして新しい持ち主様の名前です。
 こちらの世界の言葉は分からないですが、持ち主様がお母様から呼ばれている音を必死に聞いてみました。
 その結果…持ち主様の名前と思われる音を聞き取ったのです。
 名前は…ニニです。

 …セーフ!セーフだよね?!
 \が入っていたら危ないところだったよ!
 いやこの世界の文字で言えば関係ないんだろうけど、俺的には危ないところだった。
 とにかく、俺の新しい持ち主様はニニという少女だ。

 ひょろひょろおじさんから俺を買ったニニは、俺に跨って家に飛び帰っていった。
 家に着くと、すぐにお母さんに何やら興奮して話し始めた。
 泥棒を捕まえたことを話しているのだろうか?
 ただ、お母さんに話をしながら、何故か俺を指さしている。
 ただの木の棒…じゃなくてただの箒じゃないと気付いたのか?
 俺が魔力スキルを取った瞬間、ニニは驚いていた。
 魔力スキルによって、俺の魔力がニニに流れたのが分かったんだろう。

 ニニは家の中で俺に跨り飛ぼうとした。
 お母さんが驚いてニニを止めようとする。
 が、家の中でほんの少し浮くぐらいに飛んでいるニニを見て…お母さんは手を口に当てて、また驚いている。
 …え?飛べることがすごいのか?
 だってニニは泥棒を捕まえようとして、飛ぼうとしたじゃん。
 ニニ以外に飛んでいる人を見たことないけど、飛べるってもしかしてすごいことなのか?

 言葉が分からないので推測するしかない。
 ニニは飛べるかどうか分からないけど、一か八かで俺に跨って飛んで泥棒を追いかけようとした。
 もしかしたら飛べたことにも驚いていたのかもしれない。
 俺は魔力スキル無しで魔力を通された激痛で、ニニの表情なんて最初見れてなかったからな。
 そして俺が魔力スキルを取った瞬間…ニニからすればさらに驚くべき変化が箒から感じ取れたってわけか。
 それで思うところがあり、箒をひょろひょろおじさんから譲ってもらったと…コイン1枚で。
 おじさんに渡したコイン1枚がどれほどの価値なのか分からないが、たぶん金貨のような価値あるコインではないだろう。
 ラノベで言うところの銅貨…最も安いコインだと思う。

 …俺の価値は銅貨1枚なのか。


 さて、ニニの家にやってきた俺である。
 この世界の生活水準や技術レベルがどのようなものか…俺には分からない。
 分からないが…分かることもある。
 ニニの家は…たぶん貧乏だ。
 しかも、かなりの貧乏。

 家は一軒家ではあるが小さい。
 そして物がない。
 がらんとしている。
 物があっても新品ではない。
 どれもこれも使い込まれた物ばかりだ。

 そしてニニの服。
 黒いワンピースで可愛らしいと思っていたのだが…黒いワンピースから、まったく同じ黒いワンピースに着替えていた。
 ニニはこの服しか持っていないのだろうか。
 まぁ着替える時に…その…あの…清純なる白は見させてもらいました。

 ニニはスラリとしたスタイルで、残念ながらボインボインでは無い。
 本当に可愛らしい少女だ。
 これでお母さんがボインボインなら、将来に期待とも思えるのだが…服の上から見る限り、お母さんも同じようなものだ。
 いや、決してそれがいけないというわけじゃないからね!

 ニニのお母さんはお母さんで、質素な服ばかり。
 それに…ニニのお母さんはちょっと体調が悪いのか?
 時々ひどく咳込んでいる。
 その度にニニが心配そうにお母さんの背中をさすってあげている。
 お母さんは大丈夫よっと言わんばかりに、無理やり笑顔を作ってニニの頭を撫でてあげているけど…あきらかに病気だな。
 この世界で薬は高価な物なのか?
 かなりの貧乏と見えるニニ達にとって、薬を購入するのは難しいのだろう。

 その日の晩御飯もかなり質素な食卓だった。
 ご飯らしきものに、2種類のおかずがちょっとだけ。
 ニニはお母さんにたくさん食べるように言っているようだけど、お母さんは逆にニニにたくさん食べて欲しいように見える。
 素晴らしい親子愛だ。
 が、ここで疑問が。
 …お父さんはどこだ?

 晩御飯を食べ終えて、ニニは食器を片づけると何やら準備を始める。
 布袋に何かを詰める。
 そして…机の引き出しから…短剣?を取り…何か語りかけている。
 短剣を再び机の中にしまうと、玄関で待っていたお母さんと抱き合い、ニニは夜の街へと出かけていく。
 俺を持って。


 電気の無い異世界の夜は暗い…というのが俺のラノベ知識だ。
 だが、この世界は違うようだ。
 おそらく魔法だと思われるが…灯りは十分に確保されている。
 火属性魔法じゃないな…光属性魔法だと思われるそれは…電灯に負けないほどの光を放っている。
 魔道具と呼ばれそうなものだな。

 灯りが確保されているということは、夜の街で活動する人々も多いってことだ。
 俺に跨って空を飛びながら進むニニの眼下には、大勢の人達が活動している。
 時々、空を飛ぶニニを見上げている人もいるが…ニニはあまり気にした様子は無い。

 ニニが飛ぼうとすると、ニニから俺に魔力が流れてくる。
 魔力スキルを取った俺には、魔力の流れそのものが分かるのだ。
 そして、ニニから俺に魔力が流れた後は、俺の魔力が今度はニニに流れていく。
 俺にも魔力があるようだ。
 これも魔力スキルを取った時に自然と理解できた。

 ニニは俺から魔力が流れた瞬間…また俺を見つめてきた。
 俺から魔力が流れていることが分かるのだろう。
 ん?待てよ…俺から魔力がニニに流れるって…すごいことなんじゃないか?

 物から魔力が溢れてきて、それが自分に流れて力になってくれる。

 あれ?それって魔道具じゃね?
 魔力を貯めて、魔力補充みたいな機能を持った魔道具じゃね?

 も…もしかして…ニニは俺のことを魔道具だと思っているのか?!



ステータス
ちょっと魔力通な木の棒
状態:空飛ぶ少女のちょっと魔力通な木の棒
レベル:1
SP:0
スキル
魔力:レベル1
+注意+
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